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数学の講師仲間である議論,分母0の反例

stomachmanの回答

  • stomachman
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回答No.52

 コメント欄をいくつか見ていて、少々説明が必要かなと思うので追記します。(とは言ってもstomachmanは専門家じゃないし、少なくともstomachmanの本体は「数ヲタ」にも該当しない、ということはお断りしておきますが。)  数学の大抵の概念は「定義」、すなわち「既にあるものに名前をつける」というやり方で導入されます。そして、様々な定義の基盤となる「既にあるもの」の世界をぎりぎりまで小さくまとめようとしたのがZF公理系でしょう。そこでは「既にあるもの」として集合だけを残した。ですが、「既にあるもの」自体は当然この手では導入できない。そこで集合は定義によってではなく、無定義用語とその用語に関する公理系、という方法で導入されます。  ANo.46 に > 集合論の = は、単なる合同関係ではなくて、二項関係どころか
集合すらまだ定義されない時点から、「対象」の異同として
与えられている、非常に胡散臭いが、無しではすまない何か。 とあります。こう言われてしまうひとつの理由は、数学の大抵の分野における多くの概念(用語)と違って、集合論の最も基礎的な概念( =と∈)は無定義用語であって、その意味は公理系によって定められているという点にあるでしょう。  「無定義用語とその用語に関する公理系」で概念を導入するのは、伝統的にはごく普通のやり方でした。証明に基づく数学(すなわち公理主義)の開祖であるユークリッドの「公準」がそもそもこれですよね。例えば自然数を(「既にあるものに名前をつける」のではなく)「無定義用語とその用語に関する公理系」(ペアノの公理系)として導入できますし、こっちの方が馴染みがあるとおっしゃる方も多いでしょう。  ところが、ZF公理系における自然数の概念では、話の順番がひっくり返っています。すなわち、まず、集合という概念が含意する命題の一つとして「無限集合が存在する」(無限公理)ということを宣言しておきます。そして、ペアノの公理系を満たす集合の集合Nの存在とその唯一性を証明して、これに「自然数」という名前を付けることで自然数を定義します。  つまり、様々な数学を構築する際に、伝統的なやり方に従って「無定義用語とその用語に関する公理系」から話を初めて構わないけれども、大抵の場合にはそうする代わりに近代風に「(目的に適う)特別な性質を持つ集合が存在することを証明し、それらに名前を付ける」というやり方で定義として導入することができます。この手を使うと「天下りで公理を宣言してるけど、ホントにそんな公理を満たすものが考えられるの?自己矛盾してない?」ということをいちいち心配しないでZF公理系に押っつけてしまえる。変な議論を抜きにして、さっさと本題に進める訳です。たとえば超準解析学(nonstandard analysis)では、無限大や無限小を含む拡張された実数の概念を定義によって導入しています。(その定義を理解するためには「超積」だの「ウルトラフィルタ」だのと呼ばれる難しい概念を勉強しなくてはならないけれど、ひとたび定義できてしまうと、これらの概念には以後さっぱりお目にかからない。)  しかし何でもこの手で行けるわけじゃなく、「あらゆる集合の全体」や「超限順序数の全体」のように、集合にならず、従って「ある種の集合に名前を付けたもの」として定義できない概念もあります。  さて、”=”は、「一階述語論理」を拡張した「等号を含む一階述語論理」(つまり数学の体系を作る以前の段階における、論理の体系)の一部です。なので、まず一階述語論理の話からしなくちゃね。一階述語論理で扱う述語A(x)に入っているxを「対象」と呼びますが、それは未定義のままです。"∀"や"∃"も「全ての」だの「存在する」だのという意味は厳密に言えば「解釈」に過ぎなくて、ただそれらの記号を含む命題の操作方法(推論規則)を宣言することによって導入されるに過ぎません。そして"="もまた、未定義用語のまま、ともかく対象同士の関係であって   「x=yとは、yを含まないどんな述語A(x)(ただしyを含まない)についてもA(x)とA(y)が同値であること」 つまり   「x=y ⇒ (A(x)⇔A(y))」 という公理、あるいは   「x=yからA(x)⇔A(y)を推論してよろしい」 という推論規則として導入されます。これは「スキーム」(具体的に述語Aを与える度にAに関する公理(あるいは推論規則)を生成するテンプレート)と捉えます。つまり「無定義用語とその用語に関する公理系」としてすら、今ひとつキチンと書ききれていないわけですが、実際に”=”を使う場合「x=yである。だからP(x)⇔P(y)である」と推論を行う際に、具体的な述語Pが決まっている限りはトラブルが生じない。そして「任意の述語Pについて…」という言明は一階述語論理における命題にならないから、述語Pはいつも具体的である。そういう仕掛けになってる訳です。  これが『「非常に胡散臭い」ものとしての"="』と言われてしまうもう一つの理由でしょう。  なお、なぜ「あらゆる述語について、A(x)⇔A(y)」と言わないのか、というと、述語や命題はそもそも「等号を含む一階述語論理」の対象ではないからです。  「等号を含む一階述語論理」の対象は何も集合でなくたって、「等号を含む一階述語論理」の体系は(記号列の操作体系として、一切の意味論抜きで)それ自身で完結できます。さて、この体系が決まった後、さらに集合に関する公理(つまり対象同士の関係"∈"(これ自体、やはり未定義用語)に関するいくつかの公理)が追加されます。こうして「対象」が従う公理を与えることによって、対象が集合に限定され、かくて、これらの公理系全体が定めるものが(ZF公理系で言う)数学の体系という訳です。    一方、大抵の二項関係は、ある集合X上で定義されます。すなわち、Xの要素の対から成る集合X×X = {<x,y>|x∈X∧y∈Y}について、X×Xの部分集合R⊂X×Xを二項関係と呼び、aRbとは<a,b>∈Rのことである。  ですから、"="(および、その否定である"≠")は大抵の関係(固定された集合R⊂X×Xとして定義される関係R)とは別格であり、公理(実はスキーム)によって意味が定まる未定義用語である。数学以前の段階から導入されており、「等号を含む一階述語論理」の対象になるもの全て、その論理で書ける述語全てに通用する。以上のような事情を、このご質問では「ワイルドカード」と呼んでみたわけです。 (なお、"="の他にもR⊂X×Xとしては定義されない(つまり「大抵の関係」ではない)関係Rがあります。たとえば、"∈"、"∉"、"⊂"、"⊄"、また、超限順序数同士の大小関係。)    大抵の分野で扱う対象はある集合Xに属する集合だけに限定されています。(例えば、自然数だけの話なら、対象は自然数の集合Nに属する集合(0=∅, 1={0}, 2={0,1}など)に限定される。)だから、関係もX上の関係に限定して(R⊂X×Xとして)定義できます。しかしその際にも「ワイルドカード」"="を("≠"も「"="の否定」として)そのまま使い続けるのが普通であろうと思います。  「いーや、"="をX上の関係(例えば具体的な順序関係)と全く同格に扱いたい」というので、"="と"≠"をX上に限定した関係(=', ≠')を定義するなら、それぞれは集合   =' ={<a, b> | a∈X ∧ b∈X ∧ a=b}   ≠' ={<a, b> | a∈X ∧ b∈X ∧ a≠b} で定義されることになるでしょう。すると、   ≠' = (X×X)\=' なので   (a∈X ∧ b∈X) ⇒ (a =' b ⇔ a=b)   (a∈X ∧ b∈X) ⇒ (a ≠' b ⇔ a≠b)   (a∈X ∧ b∈X) ⇒ (¬(a =' b) ⇔ a≠' b) だから、「X上の話だ」という断り(a∈X ∧ b∈X)を入れれば≠' は=' の否定である。しかし、   a=' b ⇔ (a∈X ∧ b∈X ∧ a=b)   ¬(a ≠' b) ⇔ (a∉X ∨ b∉X ∨ a=b)   a≠' b ⇔ (a∈X ∧ b∈X ∧ a≠b)   ¬(a =' b) ⇔ (a∉X ∨ b∉X ∨ a≠b) なので、「X上の話だ」という断りがないと≠' は=' の否定ではない。  このあたりで混乱しないためには、≠' や=' はいつも「X上の話だ」という断りを付けて使うことになります。が、いつもそんな断りを付けるんだったら、='や≠'をX上でわざわざ定義したところで、=および≠と何の違いも出て来ません。  これが、「ワイルドカード」"="と"≠"をそのまま使い続けるのが普通である理由だろうと思います。

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