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権力とは?国家とは?

ghostbusterの回答

回答No.5

1.司牧権力について 以下の回答はフーコーが1981年におこなった講義「全体的なものと個的なもの――政治的理性批判に向けて」(『フーコー・コレクション6 生政治・統治』所収)をおもな典拠としています。 キリスト教では、特にプロテスタントで聖職者のことを「牧師」と呼びますよね。その「牧」がどこからきたか。英語では「牧師」は pastor 、すなわち「羊飼い」です。司牧権力というのは、羊飼いの権力、ということです。 ギリシア・ローマ時代にはなじみのない考え方だったのですが、神や国王・首長が「羊飼い」である、という考え方をヘブライ人は発展させていきます。 ヘブライ人にとって、神は羊飼いでした。そうして王国の創立者であるダヴィデは、神によって羊の群れを呼び集める役割を託されます。 フーコーはこの考え方が、キリスト教思想と諸制度のなかでどのような重要性を帯びていったかを考察していきます。 1.羊飼いは大地にではなく、羊の群に対して権力を行使する 2.羊飼いは群れを呼び集め、みちびき、引き連れていく 3.羊飼いは群れの安全を確保する。渇きや飢えに苦しまないように日常的に心を配る 4.羊飼いは群れに対して献身的である。羊の群れが眠っているとき、羊飼いは眠らずに見張っている。さらに、一頭一頭、個別的に配慮する。 フーコーは、莫大な数の人びとの群れを、ひとにぎりの「羊飼い」が支配する、という不思議な権力のテクノロジーの源泉を、ここに見て取ります。 この「羊飼いのテクノロジー」は、そののちのキリスト教の世界になると、このように変貌を遂げていった、と説明します。 1.キリスト教では羊飼いは、単に羊の群れ全体に責任を負うばかりではなく、「羊たちが行う可能性のあるすべての善と悪について、羊たちの身におこるすべてのことがらについても心を配らなければならな」(p.325)くなった。 2.キリスト教では羊飼いと羊の絆は(ギリシャ時代のように法や意思によるものではなく)、個別的な絆、個人的服従の絆であると考えられるようになった。 3.キリスト教では羊飼いは一頭一頭の羊の状態   a.物質的欲求を知り、それを満たす b.群れのなかで何が起こり、個々の羊たちが何をしているか知っておかなければない   c.個々の羊の魂のなかで起こっていることも知り、隠された罪をさぐりあて、神の道へ戻してやらなければならない と考えるようになった 4.さらに、良心の究明、告白、指導/従属というキリスト教の技術は、個々の羊に、現世における「抑制」に向けて導く、という目的を持つ。つまり、このことは現世と自己の放棄を強いるものとなる。 この初期のキリスト教の理念は、中世において生かされていたかというと、そうではない。というのも、中世の農村経済や文化水準そのものが低かったことから、理念としては残っていったけれども、「権力」として現れることはなかったのです。それがはっきりと現れるようになったのは、16世紀に入って近代国家が成立し始めてからです。 フーコーは近代国家の形成の理念となった書物を検討していきます。 そこに「ポリティーク」(国家政策)と「ポリツァイ」(国家行政管理)という原理を見いだします。 このポリティークが敵国や国内の敵と闘う原理であるのに対し、ポリツァイは国家の生命力を維持するものです。そうして、国家が国民のひとりひとりに世話をやく状況というのは、近代国家が新しい政治形態のなかに、古いキリスト教の権力テクノロジー、「羊飼いのテクノロジー」を導入したことを見てとるのです。 近代の国家権力は、羊飼いが羊の群れを把握するように、国家の人口を把握し、数量的に管理し、データを作成し、分析できるような「知」を発展させた。それが「司牧権力」と呼ばれるものです。 ここでの権力は、規律型の権力のように、身体を統制するだけにとどまりません。生かす権力、命をコントロールの対象とする権力です。 2.コレージュド・フランスでの講義に限定すると「治安・領土・人口」が重要です。 筑摩書房から出ている『ミシェル・フーコー思考集成VII 1978 知/身体』に所収されています。 なにをわかりやすいとするかは人によってちがいますが、わたしはどちらかというと、まとまったものの方が読みやすいように思います。『言葉と物』はある程度哲学史の知識(とくにカント)がないとつらいかな、と思いますが、『監獄の誕生』や『性の歴史―I知への意思』なんかは非常にクリアな論理の進め方で、もちろん書いてあることはむずかしいんですが、たとえばドゥルーズなんかにくらべると、よほど読みやすい印象を受けます。 とりあえず『監獄の誕生』を手に取られてはいかがでしょうか。 引用されているのは#4の方がご指摘の『監獄の誕生』だと思います。

4219hidepon
質問者

お礼

「とりあえず『監獄の誕生』を手に取られてはいかがでしょうか。 引用されているのは#4の方がご指摘の『監獄の誕生』だと思います。」 有難う御座います。早速、『監獄の誕生』を図書館で借り出そうと思っています。

4219hidepon
質問者

補足

ご説明大変感謝しております。ところで、 1、「すなわち、権力はイデオロギーによる働きかけ、あるいは抑圧や排除に甘んずるどころではない、もっと強力かつ積極的に規格化をおこなうのであって、現代社会におけるイデオロギー的抑圧は、実はこの規格化が本質になっている。」の「規格化」というのは、法的、社会的道義的、性的な善悪判断基準という意味なら日本人には判りやすい「規範」(詳細な規範を規定して個体の身体まで管理化する。条件反射的に「規範」に従うように作り上げられる)という言葉はどうでしょうか? 2、因み、フーコーの訳語で「戦略」という言葉も良く使われてますね。俺なんかには意味が良く判らず違和感を覚えるのですが、この意味は?なにか適当なフーコーの「知」と「権力」に関連する所での引用なんかであれば、それで説明いただけたら・・・なんて勝手に考えているのですが。

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