首都圏での「放射能汚染の胎児への悪影響度」について

質問

首都圏(特に東京都と神奈川県)に於ける放射能汚染の深刻度について「女性の妊娠で胎児への悪影響が心配される程である」と、或るマスコミ人から教えられました。本当なのですか。詳しく御存知の方、御教え下さい。

回答No.9

fisker

チェルノブイリではっきりと確認できた健康被害は急性放射線障害を除くと子供の甲状腺癌だけですが、それ以外にも健康被害があったとする報告があるのは事実です。ただし、累積で100mSvを下回る低線量放射線被曝による影響は世界中で多くの専門家が精力的に研究しているにも関わらず特定できておらず、影響は「ほとんどない」と考えるのがコンセンサスとなっています。（防護の基準は別です）

よく誤解されることですが、低線量被曝の影響が「分かっていない」というのは、影響が大きいか小さいか分からないということではなく、影響が小さすぎて（僅かながら）あるのか全く無いのか判別できないということです。これに異論を唱える人もいますが、科学的なコンセンサスとしてはそうなっています。

なお、甲状腺癌については放射性ヨウ素が甲状腺に蓄積して集中的に被曝するのが原因です。妊娠中の女性が放射性ヨウ素を取り込んだ場合胎児にも影響します。チェルノブイリでは食生活から元々ヨウ素が欠乏気味であったことに加え、乳製品の摂取制限なども行われなかったために大量のヨウ素被曝が発生しました。甲状腺癌の増加が明らかになった後に行われた追跡調査で、甲状腺等価線量で200mSvから10Sv（1万mSv）以上の被曝があったと推定されています。200mSv未満と推定されたグループでは甲状腺癌の増加は見られませんでした。また、胎内で被曝して後に生まれた子供にも甲状腺癌の増加は報告されていません。もっとも、妊娠中絶の動機となったのは晩発性の発癌リスクではなく、主に奇形などの障害への怖れだと思われます。

福島では、事故の際の避難行動の聞き取り調査などから推定される外部被曝量は多い人で20mSv程度、平均で数mSvと発表されています。一方内部被曝については流通している食品の検査等から1mSvに満たないと推定されていて、合計でも事故から最初の1年間で10mSvを超える被曝をする人はごく一握りに留まると思われます。

放射線防護で用いられる（つまりかなり過大評価の）LNT仮説では、1Svの被曝に対して「生涯の」発癌リスクが5%上乗せされるとされています。日本人はもともと約半数が癌になり、3人に1人が癌で亡くなりますが、10mSvの被曝はその割合を0.05%ほど押し上げることになります。なお、LNT仮説に従えば翌年以降も10mSvの被曝をすればその分発癌可能性も上乗せされますが、同じレベルの被曝が数年以上継続することは考えにくいでしょう。
福島では1年あたり1000人に1人の子供が癌になるなどというのは、科学的なコンセンサスからはかけ離れた推計です。1年あたりを生涯に置き換えるとやや近くなるでしょうか。それにしても、元々1000人のうち500人程度は癌になることを考慮する必要があります。

放射線被曝による確率的な影響を軽視してよいということではなく、健康診断などでしっかりとフォローすることが大切なのは言うまでもありません。
一方、ストレスによる健康被害や不必要な妊娠中絶によって失われる命はより即効性で確定的であることも忘れてはならないでしょう。

他の方も回答されている通り、心配ならまずは医師に相談するのがいいと思います。