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パテントトロールが損害賠償請求をしたときに関する質問です。

伊藤 寛之(@skiplaw)の回答

回答No.1

自己が実施をしていない場合の損害賠償請求としては、特許法102条3項に基づいて実施料相当額の損害賠償請求がなされます。実施料相当額は売上額の数%であり、金額としては大きくありません。このため、日本では、パテントトロールはあまり儲かりません。但し、日本では、差し止め請求の権利が強いので、多額の和解金が取れる可能性はあると思います。 パテントトロールは、通常、米国で行われます。米国ではディスカバリー制度といって、相手方が持っている証拠書類を全部提出させる制度があります。相手が大企業の場合、保有している文書の量が半端ではないので、ディスカバリーに高額の費用がかかります。一方、トロール側はほとんど文書を保有していないので、ディスカバリーにほとんど費用がかかりません。このような差があるので、パテントトロールは米国訴訟では強い立場にあります。 訴えられた側はディスカバリーに費用をかけるくらいなら、それよりも安い額で和解した方がましだということで、和解をします。パテントトロールは、この際の和解金を狙っています。和解金ですので、ディスカバリーにかかる費用よりも安い金額であって相手側が納得する額に落ち着くはずです。 パテントトロールが悪かどうかは議論が分かれるところだと思います。ベンチャー企業は、最初は数人で始めますが、斬新なアイデアを思いついて特許を取得したとします。その特許を具現化する資金がないので、その特許を別の企業にライセンスしたり、別の企業に譲渡したりすることがあります。パテントトロールを一律に「悪」であるとしてしまうと、このような研究開発型のベンチャー企業のビジネスモデルが崩れてしまうと思います。また、購入した特許の権利行使を一律に悪であるとすると、ベンチャー企業は特許を譲渡して資金を稼ぐことができなくなってしまいます。 製品開発を行っていない者が露骨に他社のビジネスを邪魔するような権利行使を行うのは、あまりいい感じはしませんが、特許法の枠内で権利行使を行うことは例外的に悪どい場合を除いては、問題なしとすべきではないかと思います。例外的な悪どい場合には、権利濫用の法理などで、権利行使が制限されます。 パテントトロール問題は、どちらかというと、強すぎる差止請求権、費用がかかりすぎるディスカバリなど、法制度や訴訟制度の問題であるように思えます。

nana35
質問者

お礼

早速の回答、ありがとうございます。 非常に分かりやすく納得のいく回答を頂きました。 特にパテントトロールを当てにしたベンチャー企業のビジネスモデルは、私自身これまで理解していなかったので、大変勉強になりました。色んな側面から考えなければいけないのですね。 またパテントトロールが損賠賠償請求狙いではなく和解金狙いということも、説明頂いた背景を踏まえれば、なるほどと思いました。 丁寧な説明、ありがとうございました。

伊藤 寛之(@skiplaw) プロフィール

SK特許業務法人 弁理士 伊藤 寛之 (いとう ひろゆき) 日本弁理士会 ■お問い合せ■ SK特許業務法人 【対応エリア】全国 【営業日】10:00~18:00 ■事務所について...

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