• ベストアンサー

個体の識別

ruehasの回答

  • ruehas
  • ベストアンサー率68% (816/1194)
回答No.4

こんにちは。 #3です。 当初、個体識別の能力に就いては「脳科学」の観点からご回答致しました。そして、それをどのようにして実現させているのかというのは「行動学」の範疇です。返信を拝見致しますと、私の行動学の知識は付け焼刃で、あまり分かりやすいものではなかったようです。申し訳ないことです。 では今回は、これまでの論議に「進化論」の解釈を宛がい、それを纏めることになります。だいぶ掘り下げましたよね。 内容が重複し、少々回りくどくなるかも知れませんが、順番に整理してみたいと思います。 >即ち、その種が発生した時代が壮絶な弱肉強食の生存競争の時代で、言い換えれば卵から生まれた瞬間から自力で防御しないと生き延びていけないほど、外敵が多く修羅場であったなら、信号刺激に対する反応は、後天的に習得したのでは間に合わず、従って全てプログラムされて生まれてきた。 そういうことですよね。 まず、「信号刺激に対する反応」といいますのは遺伝情報として先天的に獲得されているものです。そして、その遺伝子は生存競争などの環境に曝され、「自然選択の淘汰」によって生き残されたものですよね。 生後、後天的に習得されなければならないのは信号刺激に対する反応そのものではなく、「その反応をどのような状況で発生させたか」という結果です。ですから、インプリンティングといいますのは生まれて初めて接触する産みの親からの信号刺激に対し、「生得的に定められた反応を繰り返した結果が学習される」ということです。このため、その学習結果といいますのは「生得的な遺伝情報の戦略に則ったもの」として、その個体の生存に有利に働きます。 質問者さんがご指摘をなさいます通り、遺伝子だけでは生後環境に対してそれほど木目細かな適応はできなのではないかというのが動物の行動学者さんたちの一貫した主張であります。このため、生得的な反応を基にして行なわれる生後の「プログラム学習」という概念が広く適用されるようになりました。 >従って同種、親兄弟(?)、危険な動物は判断できた。人間が蛇を初めて見ても恐れるのは、人間の祖先がこの時代にプログラムされていたのでしょうか。 そういうことだと思います。 誰にも教えられなくとも危険と判定できるのは、これはヘビという信号刺激に対する反応が先天的に獲得されているからです。そして、危険に対する反応が獲得される経緯には生存競争などの「選択圧」が関わっていることは間違いありません。 ここで、自然選択説に基づく解釈を簡単に整理しておきますと、「ヘビを怖がるための遺伝子」といいますのは突然変異によって偶然に獲得されたものであり、特にヘビに襲われたからではありません。ですが、その偶然によって、たまたまヘビに襲われる危険が少なくなり、生き残った個体が子供を作って「ヘビを怖がるための遺伝子」を子孫に伝えました。 >その後、ある程度淘汰、棲み分けが進み、孵化後の安全が確保された時点で、どうもプログラムだけの情報では、大雑把で誤差が大きく間違いが発生しうる、たまに共食いもする、後天的に精度よく教育しないといけないということで、大脳皮質が発達しインプリンティングや、子育てが始まった。 前回の私の説明が悪かったのですが、インプリンティングは大脳皮質で行なわれるものではありませんので、大脳皮質の発達によってそれが可能になったという部分は排除して下さい。大脳皮質を発達させなかった爬虫類でもインプリンティングは行なわれます。 そして、インプリンティングに必要な「遺伝子のプログラム情報」、即ち「信号刺激に対する反応規準」といいますのは、突然変異によって偶然に獲得されたものです。ですから、環境が安全になったことがインプリンティング能力の発生・獲得の理由とすることはできません。インプリンティングといいますのは生得的な反応の組み合わされた本能行動ですから、その結果が種の存続に有利に働いたというのがその理由となります。 先に延べました通り、後天的により精度を高めなければならないといいますのは、これはインプリンティングの生物学的意義としてそのまま正解ですよね。 >逆に言えば、プログラムの比率が下がった分、ひな鳥の刷り込み現象が起こったりするのでしょうか。 ですから、ここで「プログラムの比率」といいますならば、それは信号刺激に対する反応を発生させるための「遺伝的なプログラム」のことですよね。「雛鳥の刷り込み」というプログラム学習といいますのは、この遺伝的なプログラムを使って行なわれるものです。プログラムの比率は別に下がっていません。遺伝的なプログラム通りに行なわれるのが「プログラム学習」です。そして、それは生後の行動の精度を高めるために役立っています。 >この段階で、コミュニケーション(声か怒声か、においかなどの)能力が備わってきたということでしょうか。 そうですね、 動物の「非言語コミュニケーション」には「鳴き声」「臭い」「フェロモン」「身体的特徴」「表情」「ジェスチャー」など様々なものが用いられます。 「インプリンティング」や「フェロモン伝達」といいますのは「本能行動を実現するための非言語コミュニケーション」でありますから、そのために用いられるのは遺伝的に獲得された信号刺激でなければなりません。このようなものは、既に存在するものが信号として選択されるか、あるいは新たに発現した機能がたまたま役に立つか、そこには様々な進化の歴史があると思います。 同じ鳥類のインプリンティングでも、「親鳥の嘴(視覚刺激)」である場合や「親鳥の鳴き声(聴覚刺激)」など、種類によっても様々です。カモメやペンギンは何万羽という群れの中で、鳴き声たけで自分の伴侶の居場所を尽き止めることができます。 詳しくは説明できませんが、生殖相手を誘うための「求愛ダンス」というのは「プログラム学習」なんだそうです。インプリンティングとは違い、こちらはその個体が生まれてから性的な成熟期に達するまで覚えるということはありません。つまり、生理的な目覚まし時計が掛かっているということですね。更に不思議なことに、これが複数の動作を組み合わせた複雑な行動であるにも拘らず、成長した個体はみなそれをマスターします。そして、これがメスにとっては信号刺激となり結婚が成立するわけですね。「プログラム学習」といいますのは、このような動物の複雑なコミュニケーションを解釈するためにはどうしても必要な概念です。 生物っていうのは本当に不思議ですよね。

dreamer121
質問者

お礼

恐れ入ります。丁寧な回答をいただきまして。おかげさまで、長年の疑問が氷解した気分です。 そうしますと、誤解を恐れずにもの凄く単純化して言いますと、 生物には、まず起動用のROMがあり、下等生物の場合は、基本的な入出力(信号刺激に対する)はこのROMのみで対応している。しかし、このROMはよくbitエラーを起こし(突然変異)プログラムの内容が書き換わるが、環境にマッチしたエラーが起きた場合、幸運にもそのROMは生き延びていく。 少し高等になりますと、さらにフラッシュメモリーを積んでおり、生後ある部分タイマー化された書き込み可能或いは実行可能な時期があり、インプリンティングや求愛ダンスなどを行うことができる。 さらに高等な生物になると、そのレベルに従い、DRAMを積んでおり、演算即ち計算、推論、判断、感情等を持つ或いは行うことができるということでしょうか。 単純化しすぎかもしれませんが。

関連するQ&A

  • 世界で一番個体数が多い哺乳類は何?

    私が中学生の頃(15年くらい前)『世界の人口は約40億人』と学んだ記憶があります。 現在はもっと増えているのでしょうね。 昨日息子(5歳)と話しをしていたら『世界で一番いっぱいいる動物って何?』と質問されました。 たぶん微生物や昆虫の何かだと思うのですが、息子の言う『動物』とは『哺乳類』のことだったので 『たぶん人間じゃないかな~?』と答えました。 世界で一番個体数の多い哺乳類は何でしょうか? 宜しくお願いします。

  • 他の親に子供を育てさせる鳥・魚などを教えてください

    鳥や魚には、他の種や同種でも他の個体に自分の子供を育てさせる生物がいるのではないかと思います。鳥や魚、場合によっては他の生物でも結構ですが、そういった性質を有する生物を紹介してください。

  • 犬はどのように犬を識別しているか、について、詳しく書かれた本かサイトを

    犬はどのように犬を識別しているか、について、詳しく書かれた本かサイトをご存知の方、ご教示下さい。 犬の散歩をしていると、犬は人と犬とその他の動物(猫や鳥など)を明らかに識別しています。 一口に犬と言っても、大小さまざまですが、小型犬と大型犬との間でも、やはり犬同士で同類と認識しているようです。また、幼児であっても人と認識しているようです。 ロープで繋がれている姿で識別しているのかと思って、部屋の中で他の動物を見せたり、知人に猫をロープで繋いで貰って散歩中に鉢合わせして貰ったり、いくつかの実験をしましたが、やはり犬同士で同類と認識できるようです。すごく不思議だと思いませんか。 イヌ科?に共通のニオイなどでもあるのでしょうか。オオカミやキツネを見せたらどう反応するか、できることなら試してみたいものです。

  • 人間に模様がないのはなぜ?

    魚やヘビや鳥や昆虫など、多くの動物には模様がありますが、人間に模様がないのはどうしてですか?

  • 驚きの生物が見たいです。

    こんなの世の中にいるのって思う生物が見てみたいです。植物、昆虫、魚などなんでもかまいません。びっくりするような動物がみれるサイトがあれば教えて下さい。お願いします。

  • 世界で生物はぜんぶで何匹いますか?

    去年、世界人口が70億人を越えましたが、 世界で生物はぜんぶで何匹いるんでしょうか? 概算で良いので、全生物の個体数を教えてください。 種数ではなく、個体数です。 また、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、無脊椎動物など 各分類の頭数がわかりましたら教えてください。

  • ES細胞からの分化誘導成果の現状と完全個体への作成可能性

    ES細胞は万能細胞とも言われ、どんな細胞、組織にも分化できる能力を有していると聞いておりますが、動物実験ではどの段階まで進んでいるのでしょうか。 また、ES細胞から各種細胞への分化誘導は出来るものの、1つの完全な個体を作成することは出来ないとも聞きましたが、それはどんな理由からなのでしょうか。分子生物学的な知見からも教えて頂けますでしょうか。

  • 世界中の動物・生物が載っているサイト

    こんにちは。 世界中のあらゆる動物(できれば鳥、昆虫、その他の生物も含むもの)の写真、もしくは名前の一覧などが 紹介されているサイトを探しています。 もしそういったサイトをご存知の方がいましたら、是非教えて頂きたいです。 どうぞ宜しくお願いいたします。

  • 生物の“痛み”について教えて下さい。

    例えば針で体を刺したとします。 生物、動物のどこまでが人間と同じ“痛み”を感じるのでしょうか? 猿、犬、猫、牛、豚、鳥、魚、虫 etc...。 いったいどの生物が痛みを感じるのか? 生物学とかに詳しい方、返答してくれたら有り難いです。 どんな理由があれ“痛み”を感じる生物を殺したくありません。 曖昧ではないちゃんとした返答をお待ちしております。

  • アメーバに知性や感情はあるのか

    例によりまして、素朴な質問をいたします。 アメーバやゾウリムシなどの単細胞生物に、  1 知性(とおぼしきもの)はあるか?  2 感情(とおぼしきもの)はあるか?  3 心(とおぼしきもの)や魂・霊魂はあるか? です。 アメーバやゾウリムシには知性や感情と呼べる代物はないけれど、 粘菌にはあるのか? http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/034/resarch_11.html 粘菌にはないけれど、アリなどの昆虫ならば・・・。 サカナならば・・・。 もう少し高等になり、 鳥やイヌ・ネコなどの哺乳動物くらいからだろう・・・。 皆さんのお考えを教えてください。