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オーステナイト系とフェライト系ステンレスの耐食性の違いの原因
- オーステナイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼では基本的にオーステナイト系のほうが耐食性が高いということですが、その理由はなんでしょうか?
- Fcc構造による充填率の高さなどが関係しているのでしょうか?
- ある条件下において、オーステナイト系のほうが安定度が高い、とずっと思い込んでいましたが、基本的にはフェライト系もオーステナイト系も耐食性は大体同じなんでしょうかね?
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回答(5)で専門家の方が投稿されていますが、質問の回答には、いまひとつ不十分と思い、投稿します。 まず成分が同じフェライトとオーステナイトの耐食性はほぼ同じです。耐食性を比較するなら、相ではなく成分を見て下さい。。なお「ほぼ」とした理由は、相によりCrの拡散速度が異なり、多少現象が異なるためです。 ステンレス鋼におけるCrの役割は既回答の通りです。一方、Niの役割については回答(1)(5)で少し述べられています。それらを明確にするために、文献(1)の図8,9,10を見て下さい。Crは酸化性腐食には極めて有効ですが、非酸化性腐食には弱い、あるいは逆効果です。一方Niは、両方の腐食に対して有効です。これはFe-Ni合金での現象ですから、回答(5)にある「Cr不働態被膜の強化」ではありません。つまり各種の腐食環境に対応するためには、CrとNiの両方を含有することが有利ということになります。 Crだけではマルテンサイト系あるいはフェライト系になります。そこにNiを入れていくと、少量の場合はフェライト+オーステナイトの二相になります。その場合、各相に対する溶解度の関係で、Crはフェライト相に、Niはオーステナイト相に富化します。すると成分の違いから(相の違いからではなく)、両相の耐食性に差が出てしまい、場合によっては選択腐食が起こり、実用上望ましくありません。そのためNiを入れるならば、全面オーステナイトになるように、例えば18%Crには8%Niを添加します。以前はCr系は13か18Cr、Ni系は最低でも18Cr-8Niですから、鋼種系としてはオーステナイト系の方が耐食性が優れていることになります。なおJISには25Cr-5Ni-2Mo系の2相系鋼種がありますが、両相の耐食性の差が小さくなるような成分バランスになっています。 最近ではフェライト系でも26Crや30Crの鋼種で出てきたため、腐食環境によっては18-8よりも耐食性が優れています。オーステナイト系は、耐食性以外に靱性や溶接性が高いという長所があって使いやすいため、腐食環境が不明確な場合は、まず18-8を使うことが多かったのです。
1. ステンレス鋼が腐食しにくいのは 一般に、ステンレス鋼は、鉄にJISでは、10.5%以上(文献によっては13%含有)のCrを含有した合金のことをいう。 SUS鋼の表面は不動態皮膜と呼ばれる目に見えない透明な厚み1~3nmの水和オキシ水酸化クロムの皮膜がSUS鋼表面上に形成される現象である。この皮膜のことは、俗に“クロームの錆び”とも言われている。 この皮膜は、正確には、非常に緻密で密着性の高い“酸化Cr”の層である。 この酸化Cr皮膜は釘などで引っかいて、部分的に除去しても酸素があれば、わずか90秒(210秒という文献もある)で、すぐに再生される。 つまりこの皮膜が腐食環境からSUS鋼を保護しているわけである。 2.不動態化現象をもう少し詳しく 不動態(passivity)とは,金属が電気化学列(emfseries)では卑(ひ)なるいちにあるにも関わらず、非常に遅い速度で腐食する状態をいう。 微弱なアノード電流によって、大きく分極する金属、すなわち卑なる金属または、そのような金属を含む合金は、電気化学的に貴(き)な金属の耐食挙動(腐食性)に近づく場合のことを不動態化という。 すなわちこの酸化皮膜が保護性を有するようになり耐食性が生ずるのである。中でもSUS鋼は特に極薄の不動態皮膜によって耐食性が安定に維持される。 SUS鋼の不導体化皮膜は、Ni、Mo、Nによりより強固にし、再不導体化を促進する働きがある。この作用がオーステナイト系がフェライト系に勝る理由となっていた。 3.オーステナイト系とフェライト系の防食性 一昔前には、オーステナイト系SUS鋼(高級SUS鋼)といえば、18、8ステンレス(じゅうはちステンレス)と言われたくらいである。この系の鋼種は、Niの添加により延性や靭性に富み、深絞り、曲げ加工などの冷間加工性が良く、溶接性も優れていることから、広く使われ、ステンレス鋼の代名詞となった鋼種である。更に耐食性も優れ、低温、高温における性質も優秀であり、非磁性体となれば用途も広がり、SUS鋼の代表となるにふさわしい鋼種となった。 但し、冷間での深絞り加工では、加工誘起マルテンサイト変態などにより磁性が出てくるとともに、時効割れなどの特有な不具合もある。 同じオーステナイト系でもSUS200番代のMn-Cr系は、SUS300番代のNi-Cr系と同じような成型性効果がでるため、某国の製品に使われ(許可なく)外観や非磁性であることから注文主も判別できないで市場に流通し大きな社会問題となったことは、記憶に新しい。SUS200系鋼種は耐食性は大幅に劣るため同じオーステナイト系でも用心しなければならない。 フェライト系SUS鋼の代表はSUS 430の18クロム系であろう。この系の鋼種は熱処理で硬化せず、焼なまし(軟質)状態で使用する。 絞り加工には向かないものの張り出し加工性が良いため浅い絞り成形加工などにも使われる。耐食性や溶接性も比較的良好であり、オーステナイト系に比べ安価であるので、一般耐食環境用として広く用いられるよになってきた。 製鋼技術の進歩により、極低炭素にすることができるようになったため、耐食性、成形加工性のより優れた鋼種が豊富になり、さらに、極低炭素・窒素とした高純度フェライト系は、耐食性が一段と優れており、また応力腐食割れを起こしにくく、オーステナイト系に遜色ない耐食性があり温水機器や化学プラントなどにも用途が広がっている。 従って、現状では用途によりオーステナイト系とフェライト系を選ぶというのが賢い選択となる。
SUSの耐食性は不動態皮膜の安定性によると理解しています。不動態皮膜は 添加元素の電位の影響を受けるのと考えられます。以下参照ください。 http://www.susjis.info/etc/fudoutai.html http://www.corrosion-center.jp/pdf/K004.pdf
オーステナイトそのものは耐食性に直接関係しないと思います。 耐食性を発揮するメカニズムは不動態皮膜。その元素は実質的に Cr だけ。 その膜の強弱については他の合金元素が支える。 東北大・金・研 ステンレスの基礎 http://www.kansaicenter.imr.tohoku.ac.jp/_userdata/kinzoku_s_2.pdf P.15 不動態を安定化させる元素 P.16、17 オーステナイト組織のMn鋼の耐食性は低い(非磁性、機械的性質改善の為添加) 私は?Fcc構造?と聞かれると反応しにくいが、物理系の方とお見受けします。(他例?鉛の柔らかさと電子軌道について?こう質問されても?・・・) 実務上で基礎用語からスタートすると、ステンレス鋼/耐食性に限定されない事項が混ざり、それを選分けて結論に達するのは容易でないと思います。 オーステナイト系ステンレス鋼なら SUS304 、フェライト系なら SUS304 とか具体品名に絞り、要求する耐食性の中味と照合するほうが工学的ではないでしょうか。。 → フェライト系なら SUS430 >どの条件下でも基本的にオーステナイト系のほうが耐食性が高いと思っていました。 どの条件下でも、といえるかどうか、、、 基本的にはそうであっても、要求する耐食性の中味と照合しないことには結論に達しません。両者それぞれで多品種あり一括にできない。 それにコスト。 オーステナイト系に必要な Ni は貴金属の端くれで価格高騰時は耐食性を我慢してファライト系を採用したり、SUS304 代替フェライト系ステンレス鋼JFE443CT?のような改良品種も出てきました。
オーステナイトという組織は、熱処理は鋼の焼き入れのように変態点以上から 急冷しなければ常温で存在できないマルテンサイト組織と製法は余り変わらない つまり、非常に不安定でより安定的な組織に変化し易いから加工誘起変態などの 変態をし易いのです。反面フェライトという組織はゆっくり冷却するとこうなる ものだった筈ですから安定的な組織といえますが、如何せん錆びやすい性質です では何で?っと言われると考えたことも無かった。現実にそうだからとしか 言いようが無いけれども・・・炭素量も腐食には関係することから炭素が組織に 錆びにくい形で溶け込みNIを加えることで不働態皮膜であるCr酸化物が安定的に なるんじゃないかな・・・専門家でもないので、ここの欄の文は推測に過ぎない 改めて、自分の知識は浅い知識だったような気もするし、何とも恥ずかしいです Moをほんの僅か加えただけでもSUS304→SUS316のように劇的に高温耐蝕性が増す などがみられるのが合金の世界であろうと思います。まぁ調味料みたいなものか 専門家でもないのにダラダラと長文になって、かつ、回答でもなくて申し訳ない 回答(6)流石に専門家です「黒猫」さん、回答も明快でとても分かり易い。★5 ありがとうございました。。。(質問者ではないが)大変、勉強になりました。
Wikipediaに書いてあることですから、ご質問者さんもご覧になっている 可能性が高いと思いますが、取りいそぎ回答します。 以下Wikipediaから引用 >クロムが作る不動態皮膜は硝酸のような酸化性の酸に対しては大きな耐蝕性 >を示すが、硫酸や塩酸のような非酸化性の酸に対しては耐蝕性が劣る。この >ため、ニッケルを8%以上加えて非酸化性の酸にも耐蝕性を高めている[1]。 要するに、 ある条件下では、オーステナイト系ステンレス鋼とフェライト系ステンレス鋼 の耐食性の差は殆どないが、オーステナイト系ステンレスの方が、広い条件下 で耐食性を有するということでしょう。 お問い合わせの主旨は、 なぜ、オーステナイト系ステンレスの方が広い条件下で耐食性を有するか 説明して欲しいということですね。見当違いであれば、是非ご指摘下さる ようにお願いします。 その上で、専門家の回答を待ちたいと思います。