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A級戦犯は何の罪を犯したのですか?

Ganymedeの回答

  • Ganymede
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回答No.3

論理的に考えること以前に、その分野に関する知識を仕入れておかなければなりません。仕入れを怠ると、いくら包丁をふるっても食事を供することはできないでしょう。 例えば、「コモン・ロー上の犯罪」というのをご存知でしょうか? ご質問者は、大陸法の考え方しかご存知ないのではありませんか? 「コモン・ロー」は英米法の基本的な概念だが、多義的な言葉でもあるので、ちょっと詳しく見よう。と、偉そうに言ってる私は素人で、日本の法律もろくに知らない。ましてや英米法の知識などない。 それでも俄か知識を並べると、「英米法」に対して「大陸法」というものがあり、日本の法律は大陸法の系統である。これは成文法中心主義である。ご質問文を拝見したところ、成文法しか考慮していらっしゃらないように見受けられる。 しかし、英米法は判例法中心主義であり、その「判例法」を指してコモン・ローということがある。英米法の国々では、法律の条文で犯罪と規定されていなくても、社会の認識で罪と見なされる事柄で、かつ、有罪判決が積み重なっていれば、それは法的な犯罪となるのだ。何せ、イギリスには日本のようなひとまとまりの「刑法」がないそうだ。各種類の犯罪をそれぞれ規定した個別の法律は順次作られてもいるけれど。 さらに、コモン・ローは「判例法」より広い概念であり、必ずしも判例が積み重なっていることを要しない。例えば「自殺」である。キリスト教社会では、自殺は罪と考えられてきた。しかし、実際に有罪判決に処せられることはまれだった(第一、被疑者は既に死んでいるわけだ)。すなわち、有罪判決は積み重なっていなかったが、それでも自殺はコモン・ロー上の犯罪とされてきた。 さて、英米法にせよ大陸法にせよ、国内法であるが、ご質問は国際法に関する事柄である。しかし、国際法というのは英米法や大陸法の考え方が混じり合って形作られた。もし、「日本は大陸法系統だから、英米法の考え方など受け入れない」とか、「イスラム諸国はイスラム法以外の考え方を認めない」なんて言ってたら、国際法はさっぱり成立しないだろう。 また、罪刑法定主義の考え方は英米法にもある。というか、罪刑法定主義が最初に現れたのはマグナカルタ(1215年)だそうだ。ご存知のように、イングランドのものである。もちろん、かの国において、法というのは成文法だけでなくコモン・ローも含む。いや、コモン・ローこそ第一義的な法であって、それを再定義したり修正したりするのが、成文法の役割だそうだ。 前出の自殺について述べると、イギリスでは1961年に自殺法というのが制定されて、自殺が犯罪ではなくなった。逆に言うと、それ以前の同国では、コモン・ローを根拠に自殺が裁判で裁かれ有罪を宣せられることがあり得たわけだ。 ここで、「明文の法律に拠らずに、不文法に基いて有罪を宣告するとは、何と恣意的な」と思う人がいるとすれば、大陸法の考え方に凝り固まった偏見ではないだろうか。むしろ、成文法中心主義こそ恣意的かも知れない。ときの権力(議会で多数を握った勢力)が条文をいじれば、裁判はその条文に基いて行われるから、「良識に照らして有罪の事柄」も無罪になってしまい、「良識に照らして無罪の事柄」も有罪になってしまうではないか。このように、英米法と大陸法には一長一短があるのだ。 さて、国際法ではコモン・ローという言い方はしないかもしれないが、「法の一般原則」という概念が認められている。ここで、国際法の存在形態を挙げていこう。まず、条約がある。これは成文法に相当する。次に国際慣習法がある。これの成立根拠としては、「法的確信」と「諸国の慣行」の両方が必要と考えるのが普通である。 しかし、この「条約」と「国際慣習法」の二つだけに国際法を限ると、国際裁判が不能に陥る場合がある。そこで、「法の一般原則」なども国際法の存在形態として挙げる考え方がある。これは、文明国の国内法で共通に認められている法原則のことである。 まあ、早い話が、条約や憲章の明文の規定で定まってなくても、「国際慣習」や「主要諸国の国内法の原理原則」をも国際法に仕立て上げちゃうことが可能なのだ。 したがって、ご質問文の(5)、(6)は論理的に穴がある。当時、憲章(成文法)として存在しなくても、同趣旨の不文法が存在していたとすれば、それに反する行為は違法である。同趣旨の不文法とは、「侵略戦争は国際法上の犯罪」、「それは指導者個々人の罪として処罰されるべき」という法原則の確信のようなものである。これらは「ニュルンベルク諸原則」としてニュルンベルク裁判で採用され、東京裁判の原理ともなり、国連決議(1946年)で確認された。日本人の多くは、東京裁判を否定したがるあまり、これを等閑視しているが、ニュルンベルク諸原則は国連の基本原則の一部にもなっている。 それでは私は、当時不文法が存在していたと言いたいのか。否、言いたくない。要するに、東京裁判は正しいと証明することもできないし、誤りと証明することもできないというのが結論である。 さらに詳しくは、下記質問の拙答などをご覧ください。「だらだら長くて読んでられねーよ」という場合は、下記の引用部分だけでもお読みいただけると幸いです。 なお、「侵略戦争」を定義しようという国際的な努力は、長い歳月を要しました。戦間期(第一次大戦と第二次大戦の間)からすでに侵略戦争は「不戦条約」で違法化されていますが、侵略戦争の定義が明確ではなかったので、「侵略戦争は国際法上の犯罪」も成文法として明確ではありませんでした。それでも、不文法としては根強いものでした。 近年ようやく、成文法として定義がまとまりましたが、まだ発効していないので、本決まりまでもう少しというところのようです。 戦犯はもういないのか? http://okwave.jp/qa/q8406316.html 軍国主義 http://okwave.jp/qa/q8420563.html 〔引用開始〕 東京裁判はニュルンベルク裁判の二番煎じだった。両裁判に瑕疵(かし)があったことは事実だが、だからといって「裁判でも何でもない」などと全否定する者は基礎知識が欠けているだろう。 正式名称を見れば分かる通り、これは軍事裁判であり、講和前に行われた。戦争行為の一環として行われたのだ。中立国が戦争行為に加わるわけもなく、判事は連合国出身者だった。 そもそも「軍法会議」では、被告の上官(法律の専門家ではない)などが判事を務めることも多い。弁護人が付かないことも多い。それに比べれば、東京裁判はまだましな方である。アメリカ人(カニンガムなど)・日本人(清瀬)らが弁護人を務め、彼らはこの裁判を痛烈に批判した。 また、占領地の軍人・民間人など(つまり外国人)を裁く「軍律法廷」では、事後法で裁くこともあった。他ならぬ日本軍も、米軍のドーリットル隊を「空襲軍律」という事後法で死刑に処した。 〔引用終り〕

ideaism
質問者

補足

「お手柔らかに」と申しましたのに、凄い分量! それだけ、丁寧にお答えくださって嬉しいですけどね。 後日、時間があるときにじっくり拝見して、お礼しますね。

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