どうして急に豚インフルエンザなのですか？

質問

２チャンネルの”豚インフルエンザで人類終焉のお知らせ”を読んでいました。ここのほうが、もしかして専門家の方がじっくり答えてくれそうな予感です。最近まで鳥インフルエンザの話ばかりでしたがどうして急に豚インフルエンザなのですか？

回答No.5

noname#160718 · ベストアンサー

獣医師です。ウイルスに専門知識を有しています。

　順を追って話しますと、そもそもインフルエンザウイルスというものは、カモなどの水禽類が自然宿主です。Ａ型インフルエンザウイルスはＨＡとＮＡという２つの蛋白質の形状によってＨ１～１６、Ｎ１～９の亜型に分類されますが、16×9で144亜型のウイルスが存在するわけです(現時点では)。
　カモからはこの144亜型全てが見つかっています(H16亜型は最近見つかったものなので、Nについてはまだ全部見つかっていなかったかも)。

　これら鳥類に感染するＡ型インフルエンザを"鳥インフルエンザ"と呼びます。
　このカモ類を自然宿主とするウイルスが鶏に感染すると、鶏はこのウイルスに対して非常に強い感受性を持つのと、鶏が"家畜"であり非常に密集した状態で飼養されていることが要因となって、稀に感染した鶏を100%殺してしまうような激烈な病原性を持ったウイルスに変異してしまいます。これが「高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)」です。
　アジアで蔓延したり近年日本でも発生しているのはこのHPAIなのですが、世間一般ではこのHPAIを"鳥インフルエンザ"と呼んでいます。

　余談になりますが、H1～16あるHA亜型のうち、HPAIに変異するものはH5亜型とH7亜型に限られています。そのため、日本ではこの２つの亜型に関しては"低病原性"であっても"高病原鳥インフルエンザ"と定義して防疫対応をしています。今年の春に愛知県で発生したのはこのタイプです。ちなみに国際的にはH5あるいはH7であっても低病原性のものはHPAIとして対応しない法体制の国が多く、放置した後に高病原変異した時には広範囲に蔓延して手が付けられなくなってしまった、という事例がいくつもあります。

　さて、この鳥インフルエンザは本来鳥類、それも水禽類に限って感染するウイルスなのですが、何らかの過程を経て他の動物に感染し、その動物種の間で定着してしまったものがあります。
　その動物はこれまでに知られているのはヒト、豚及び馬です。馬インフルも最近国内で流行して問題になりました。

　これらの動物のインフルエンザは互いに感染し合うわけではなく、定着した動物種の間でのみ流行するのが普通です。すなわちヒトのインフルエンザは鳥には感染しませんし、豚のインフルエンザはヒトや鳥には感染しないのが普通です。

　ですが稀に、鳥のウイルスが馬型に変異してしまったりして、鳥から感染したウイルスがその動物種の間で定着してしまう、といったことが起きます。それらがヒトや豚、馬のインフルエンザになるわけです。

　人類は過去、数十年おきに新しいインフルエンザの侵入を受けてきました。確定している最も古い事例はスペイン風邪ですが、血清学的な遡り調査ではそれ以前にも何度も"新型インフルエンザ"が発生しているようです。

　ヒトの場合は少し特殊で、鳥からヒトには直接感染しない、と従来は言われていました。これはウイルスが細胞に感染する際の細胞側の受容体(レセプター)に関係します。
　豚はヒト型と鳥型の両方のレセプターを持つので、鳥インフルエンザにもヒトインフルエンザにも比較的感染しやすい特徴を持っています。
　つまり、豚に鳥インフルエンザが感染し、豚の体内で豚インフルエンザと鳥インフルエンザ、あるいはさらにヒトインフルエンザの遺伝子が組み換えられ(インフルエンザウイルスは生体内で容易に遺伝子組み換えが起きる特性を持っています)、まったく新しいウイルスが出現する可能性があるわけです。
　この鳥→豚→ヒトという感染経路が、これまで考えられていた「新型インフルエンザ発生→パンデミック」のシナリオです。

　ところが最近の事情が少々異なっていたのは、アジアで鶏の間で蔓延していたHPAIが、鶏→ヒト感染を頻繁に起こしている、ということです。
　そうなると、ヒトの体内で遺伝子組み換えが起きて「新型インフルエンザウイルス」が誕生するリスクが非常に大きくなるので、ここ数年の新型インフルエンザの発生に備えた対応策などは、この「アジアでの鶏→ヒト」を想定して行っていたわけです。

　ですが、そもそも新型インフルエンザ発生のシナリオとしては、「豚→ヒト」の経路の方がベーシックというわけです。その豚の前に「鶏→豚」という経路があるであろうことが前提ですが。

　というわけで、蚊やハチや犬、猫から新型インフルエンザが出てくるわけではありません。最近懸念されていた鶏が特殊パターンで、ベーシックパターンは豚から、というわけです。

　なお、毒性についてはアジアで蔓延しているウイルスが強毒性のものであるため、強毒性ウイルスが怖いような印象を受けていると思いますが、この強毒性はあくまで鶏に対する強毒性であり、ヒトに対してどうかはまた別の話です。
　スペイン風邪を始めとして過去のインフルエンザパンデミックは、全て「弱毒性」のウイルスによって起きています。弱毒性であっても人間側に免疫がない場合は、それなりの病原性を持つ、ということです。

　今回の事例では、本来豚の間で感染し、ヒトには稀に感染してもヒト→ヒト感染は起こさないはずのウイルスが、現在はヒト→ヒト感染で蔓延しているとしか考えられない状況なわけです。
　これは既に豚由来のウイルスが「ヒト型」に変異していることを意味すると考えられ、その意味では既に「新型インフルエンザが発生した」と言っても良いような状況です。

　ただ、このウイルスの亜型がH1N1なんですよね。
　この亜型はいわゆる「ソ連型」と呼ばれている、現在人類社会で普通に流行しているウイルスと同じ亜型です。
　そのため、現在メキシコで流行しているインフルエンザが世界的な大流行(つまりパンデミック)にまで繋がるかどうかはまだよく判らない状況です。H1N1に対してなら世界の多くの人が免疫を持っているはずですから。
　同じH1であっても抗原性は異なるので、季節性H1に対して免疫を持っていても今回の豚H1に対して感染防御ができるかどうかは判りませんが(おそらくできないのでしょう)、感染しても発病率や致死率は大きく低下するはず、と考えるのが普通でしょう。
　なので今回のメキシコでは、他のウイルスや細菌との混合感染によってここまで酷い状況になっている可能性もありますし、もしかしたらワクチン接種率や近年の季節性インフルエンザの流行状況によって、メキシコの人々のH1抗体保有率が低い状況だったのかもしれません。

　そんなこんなで、このメキシコでの流行が直ちに新型インフルエンザのパンデミックに繋がるかどうか判らない状況なので、WHOもパンデミックフェーズを３から４に上げることは今回見送った、ということなのでしょう。

　ちなみに余談ですが、鳥→ヒトのパンデミックが懸念されている状況でも、季節性のインフルエンザによってH1N1に対する免疫を保有していれば、H5N1の感染を受けても致死率が半分に減じる、という話があります。これはN1抗体の保有が致死率を下げる、という話なのですが、そんなことを考えるとますます今回の豚H1N1によって致死率が７％にも達しているのがよく判らなくなります。NA蛋白はあまり変異しないですから。

　そのあたりは今後の情報待ちといったところでしょうか。

お礼

回答ありがとうございました。Wikipediaと比較して３回繰り返して読ませていただきました。本当の意味で専門家の方がwikiより圧倒的に詳しくタイムリーにかつ丁寧に書いていただいたことに感謝しています。OKWaveの存在意義を一気に向上させた１文だったと思います、質問者として感謝しています。最近OKWaveもくだらないなと思い始めていたものですがまだまだこういう人がいるのだとちょっと思いとどまった気分です。

回答No.10

myeyesonly

こんにちは。
すでに専門の方から詳細な説明が出ていますので、「豚」という名前についてだけ一言。

何か新しいと思われる病気が発生した、なおかつ流行の兆しがある、というような場合、世界中の保健機関やＷＨＯなどに連絡して対応をする必要が出てきます。
今回のＷＨＯのレベル認定もそのひとつですし、エジプトなどは「国内の豚の全処分」とか言い出してますね。
そこまで必要かどうかは別問題ですが、こういう新しい病気が発生して、世界中で何らかの対策が必要になる場合、とにかく呼び名を決めなければとても困ります。
今回はとりあえず、「豚」が何かしら関係していそうだと早くから考えられたので、「とりあえず」つけられた名前が「豚インフルエンザ」です。
おいおい、その仕組みや流行経路がはっきりするに従って違う名称がつくでしょう。
今までのは、「とりあえず対策をとるための仮称」であると思っていただいてかまわないかと思います。

お礼

回答ありがとうございます。豚や鳥なら全処分ができますが人はできませんから対処法の難しさがだいぶ違いますね。名前もそのうちちゃんとしたものに変わるわけですね。

回答No.9

noname#160718

Jagar39です。

　フェーズ４が宣言されたと思ったらあっという間にフェーズ５になり、日本でも感染疑い者が摘発されるなど、事態が目まぐるしく動いています。
　テレビでニュースを見ていたら、両脇に検疫官が付き添い、顔を隠してまるで"犯罪者"のような出で立ちで飛行機から降りてきてました。気の毒でしたが、過ぎてしまえば笑い話にもなるでしょう・・・

　ところで、誤解されがちなのですが、由来が鳥だろうと豚だろうと、「新型インフルエンザ」になってしまえば、それは「ヒトの感染症」です。
　ウイルスがヒト型になり、ヒト→ヒトで感染を繰り返すようになることが「新型」となる最低限の定義ですから、その時点ではこのウイルスはもはや由来動物(この場合は豚)には容易に感染しない型になっています。
　ま、豚の場合は元々ヒトのインフルエンザに比較的容易に感染する特徴があるので、今回の"メキシコ風邪"のウイルスも豚には再感染するでしょうが、鳥インフルエンザの場合は「新型」に変異したウイルスはもはや鳥には感染しません。由来動物が何であれ、「新型インフルエンザ」になった以上は、ウイルスを持ち運ぶのはあくまで人間です。

　そういった意味でも、この"メキシコ風邪"を豚インフルエンザと呼ぶのはそろそろやめて欲しいところです。今はもう豚は関係ないわけですから。

　ですから、由来が鳥だろうが豚だろうが、新型が発生した時の防疫対応に根本的な差はありません。
　渡り鳥を警戒するのは、あくまで「鳥インフルエンザの防疫」のためです。鶏にウイルスが侵入することを警戒しているわけです。

お礼

回答ありがとうございました。毎回丁寧に説明していただきまして今回の事件に対しては安心して見ていられます。今朝のABCだったですか、もう豚という言葉を入れた表現自体が不適切だと解説していましたですね。

回答No.8

noname#86721

鳥インフルエンザは渡り鳥が国境を越えてウィルスを運ぶので、豚インフルエンザのような水際作戦(空港と港の検疫、輸入豚全頭検査)だけでは拡大を防げないため、蔓延しやすい鳥インフルエンザを想定して各国政府が準備してきたというのもあります。
豚は泳いで海を渡りませんから、あまり警戒していませんでした。
豚は鳥よりヒトに近い種だから、本来は豚のほうがヒトに感染しやすいというのは、他の方も既に説明されている通りです。

お礼

回答ありがとうございました。日本でも感染を疑うような事例が出たようですね。

回答No.7

noname#160718

Jagar39です。全開の回答を書いた後にフェーズ４と新型インフルエンザの発生が宣言されました。

　"メキシコ風邪"のウイルスがH1N1であるということがいろいろな判断を難しくしていることは前回答にも書きましたが、「ソ連型と同じだから日本では大丈夫」というほど単純な事態ではありません。

　豚のH1N1とヒトのH1N1(ソ連型)は、亜型の分類は同じでも抗原性はかなり異なります。そのため、季節性インフルエンザのワクチンは、メキシコ風邪には「効かない」というのが公式見解になっています。(まったく効かないということもないだろう・・・とは個人的に強く思うのですが)

　メキシコでもう150人を超える死者が出ているのに対し、メキシコ以外の国では未だにゼロ、というのも訳が判らないところです。ま、分母(すなわち"感染者数")の数字が大きく違うので、150対ゼロが有意な差なのかはまだ判りませんが。(これから諸外国で５～６名も死者が出れば、致死率は同等になってしまう)

　この差が「メキシコの衛生状態の悪さ」や「医療レベルの低さ」によるものと考えるのは、もはや無理な気がします。
　なぜなら、ソ連型(H1N1)の季節性インフルエンザは世界中で流行している亜型なので、メキシコではこれまでも季節性のインフルエンザやその他の感染症で毎年多大な死者を出していたはず、ということになります。

　まあ、メキシコでは近年のインフルエンザの流行状況が特殊だったため、H1N1に対する免疫を持たない層が存在したため人的被害が大きくなっている、という可能性も未だにあるとは思いますが・・・
　それとメキシコではインフルエンザ以外にも感染症の流行が起きていて、複合感染を起こしているという可能性も消えたわけではありません。
　そういう、「メキシコ特有の事情」によってメキシコでの致死率が高くなっているのであれば、パンデミックには結局至らないでしょうけど。

　いずれにしろフェーズ４が宣言されましたが、現在はもしこれがH1N1でなかったらフェーズ５が宣言されていてもおかしくない状況です。

　日本でもメキシコ風邪のワクチンを最優先で製造するということになりましたが、これはすなわち季節性インフルエンザのワクチン製造を犠牲にするということなので、パンデミックが起きず空振りに終わった場合は、季節性インフルエンザワクチンの供給不足によってかなりの人的被害が出ることは覚悟しなければならないでしょう。
　日本は１日早く決断しましたが、ＷＨＯがフェーズ４を宣言したことによって諸外国もワクチン製造の優先順位をメキシコ風邪にシフトするでしょう。
　なので、結局パンデミックが起きなかった場合は、世界各地で季節性インフルエンザが猛威を奮って、例年より相当死者が増える、ということになるリスクがあります。
　どちらにしても難しい判断なのですが・・・

　ちなみにこれは既に「ヒトの間で感染するヒトの病気」になってしまっているので、日本の豚でH1N1が出たらどうだとか豚肉を食べるとどうだという話ではなくなっています。

お礼

回答ありがとうございます。同様の趣旨で素人目で前の人に回答を書きましたら瞬時に専門家の方が書いてくれたので助かりました！ネットというのはすごいですね（笑）

回答No.6

inawashiro

そもそも、豚インフルエンザが人間に感染し、死者が出たからでしょう。
日本では特に心配は要りません。
なぜなら、豚インフルはH1N1型ウィルス、毎年流行するインフル、Ａソ連型ですが、H1N1型ウィルスなのです。おそらく、アメリカで死者が出ないのは、衛生状態がいいからだとおもいます。
メキシコの衛生状態は余り良いとはいえません。
仮に、日本で豚からH1N1型ウィルスが出ても大丈夫です。
あなたは、豚を生で食べますか？ちゃんと、中まで火を通せば安心して食べることができますよ。
変な誤解はしないほうがいいですよ。
ちなみに、僕はパンデミック？は起こらないと思いますよ

お礼

回答ありがとうございます。現在進行形でニュース等で話題になっていますからおっしゃるような話は昨日あたりには流れていましたが、なぜメキシコだけにというところが謎の１つだったですね。でも面白いのは豚肉は売れないようですね、ちなみに私は昨日豚肉を食べましたが今のところ異常ありません。

回答No.4

toshipee

インフルエンザは何年周期かで大きく変貌(進化)を遂げるそうです。そろそろその周期であるとにここ５年前あたりから言われていて、いつスペイン風邪のような大量死する流行が来るか危惧されているとのこと。その一番の可能性が、まず鳥であったと言うことです。それは、渡りをするので、驚異的にしかも速いペースで蔓延するだろうから一番恐れられた。
　でも豚であろうが、鳥であろうが、伝染手段である生き物の種類はいっぱいあるでしょうから、どこから来ても不思議ではないと言うことだと思います。素人考えですが、蚊からかもしれませんし、ミツバチからかもしれません。蝶→野菜からかもしれません。猫や犬からかもしれません。ただ、豚ならまだ肉や個体の移動調査はしやすいでしょうね。時すでに遅しで我々の口に入っているかもしれませんが。
　そういえばニューヨークでも騒ぎは広まっているようですが、妻は、このところアメリカ産の豚肉が異常に安かったと言っておりました。皆さんの地域ではどうですか？ここまで来ると、騒ぎの前に売りさばいたのではと疑いたくなりますな。

回答No.3

植松 一三（@jf2kgu）

鳥インフルエンザも豚インフルエンザも同じです
ただ問題は、免疫を人間が持っているか持っていないかの差です
持っていればさほど問題にならないのですが、今回の豚インフルエンザの場合には無いようです
専門的に分けると、色々種類が有りますが、強毒性で免疫が無いのが怖いのです、政府はタミフルがいっぱいあると言っていますが、日本国民全員に摂取するだけのタミフルは、世界中集めても有りません
ですので今後の情報に注意して下さい
鳥は騒がれていて注意していましたが豚はマークしていませんでした
でも人類終焉は有りませんので安心して下さい、中世時代のヨーロッパなどで猛威をふるった、コレラペスト赤痢などでも人類は終焉しませんでしたので気を付けなければなりませんが、現代ではそろそろワクチンの製造に入っていると思います、ただそのワクチンですが作るのに今のやり方ですと６ヶ月位かかるので注意していてください

回答No.2

noname#96023

鳥インフルエンザ
毒性が高いが、鳥→人は感染。人→人は感染しない。

豚インフルエンザ
鳥インフルエンザが豚の体内で変異したもの。
豚→人は感染、人→人も感染

つまり、毒性の高いインフルエンザが人類で蔓延する可能性が高くなったって事。

回答No.1

ozunu

豚インフルエンザの方で流行しそうな（且つ、もしかしたら毒性が強いかもしれない）株が出てきたみたいだってだけでしょ？