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サンフランシスコ講和条約11条の解釈??

Ganymedeの回答

  • Ganymede
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回答No.2

初歩的な法学の知識だが(だいたい私は初歩しか知らないわけだが)、日本の法律用語として、「裁判」には「判決・決定・命令の総称」という意味がある。ご存知なかったら法律学小辞典のような本を引いてください(大辞典じゃなくても載っているはず)。 そもそも「判決」とは、口頭弁論などの周到な手続きを経て裁判所から下(くだ)されるものであり、もっと簡略な手続きで下されるものは、「決定」あるいは「命令」という。それらの総称が裁判である。法律用語の「裁判」は日常用語の「裁判」とは異なるわけだ。 まず、「極東国際軍事裁判所条例」の英文と訳をご覧ください。周知のように、極東国際軍事裁判とは東京裁判のことである。 ARTICLE 17. Judgment and Review. The Judgment will be announced in open court and will give the reasons on which it is based. The record of the trial will be transmitted directly to the Supreme Commander for the Allied Powers for his action. Sentence will be carried out in accordance with the Order of the Supreme Commander for the Allied Powers who may at any time reduce or otherwise alter the sentence, except to increase its severity. 第十七条 判定及ビ審査 判決ハ公開ノ法廷ニ於テ宣告セラルベク、且ツ之ニ判決理由ヲ附スベシ。裁判ノ記録ハ連合国最高司令官ノ処置ヲ仰グ為メ直ニ同司令官ニ送付セラルベシ。刑ハ連合国最高司令官ノ命令ニ従ヒ執行セラルベシ。連合国最高司令官ハ何時ニテモ刑ニ付之ヲ軽減シ又ハ其ノ他ノ変更ヲ加フルコトヲ得。但シ刑ヲ加重スルコトヲ得ズ。 (英文はhttp://droitcultures.revues.org/2183から引用した。フランスの代表的な人文・社会科学分野のオープンアクセスの電子図書館らしい。和訳は東大東洋文化研究所田中明彦研究室http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPUS/19460119.O1J.htmlから引用した) つまり、東京裁判の Judgment は「判決」である。次に、サンフランシスコ条約第11条の第一文の英文と訳をご覧ください。 Article 11 Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan.〔後略〕 第十一条 日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。〔後略〕 (田中明彦研究室http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T1E.html http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T1J.htmlから引用した) このように、第11条の judgments は、東京裁判の判決と、「日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷」(いわゆるBC級)の判決とを併せたものである。そして、BC級戦犯裁判は簡略な手続きで判決が下された場合もあったので、「決定」あるいは「命令」に相当し、それらの総称は「裁判」で表される。 ちなみに、刑事訴訟法の「第五章 裁判」でも、判決・決定・命令の総称として裁判という語を用いている。刑事訴訟法はいわゆる六法全書に必ず載っている。 次に、東京裁判の judgment の内容であるが、下記のように政府答弁が繰り返し明確に説明している。「単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さない」、「そのすべてが含まれているというふうに考えております」に注目されたい。 参院 総務委員会(1998年4月7日) http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/142/1030/14204071030007c.html [引用開始] 長嶺安政(外務省条約局法規課長) 御説明申し上げます。この極東国際軍事裁判に係る平和条約第十一条におきましては、英語正文でジャッジメントという言葉が当てられておりますが、このジャッジメントにつきましては、極東軍事裁判所の裁判を例にとりますと、この裁判の内容すなわちジャッジメントは三部から構成されております。 この中に裁判所の設立及び審理、法、侵略、太平洋戦争、起訴状の訴因についての認定、それから判定、これはバーディクトという言葉が当てられておりますが、及び刑の宣言、これはセンテンスという言葉が当てられておりますが、このすべてを包含しておりまして、平和条約第十一条の受諾が単に刑の宣言、センテンスだけであるとの主張は根拠を有さないものと解しております。 [引用終り] 参院 外交防衛委員会(2005年6月2日) http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/162/0059/16206020059013c.html [引用開始] 林景一(外務省国際法局長)  お答えいたします。先生も今御指摘のとおり、サンフランシスコ平和条約第十一条によりまして、我が国は極東国際軍事裁判所その他各国で行われました軍事裁判につきまして、そのジャッジメントを受諾しておるわけでございます。 このジャッジメントの訳語につきまして、裁判というのが適当ではないんではないかというような御指摘かとも思いますけれども、これは裁判という訳語が正文に準ずるものとして締約国の間で承認されておりますので、これはそういうものとして受け止めるしかないかと思います。 ただ、重要なことはそのジャッジメントというものの中身でございまして、これは実際、裁判の結論におきまして、ウェッブ裁判長の方からこのジャッジメントを読み上げる、このジャッジ、正にそのジャッジメントを受け入れたということでございますけれども、そのジャッジメントの内容となる文書、これは、従来から申し上げておりますとおり、裁判所の設立、あるいは審理、あるいはその根拠、管轄権の問題、あるいはその様々なこの訴因のもとになります事実認識、それから起訴状の訴因についての認定、それから判定、いわゆるバーディクトと英語で言いますけれども、あるいはその刑の宣告でありますセンテンス、そのすべてが含まれているというふうに考えております。 したがって、私どもといたしましては、我が国は、この受諾ということによりまして、その個々の事実認識等につきまして積極的にこれを肯定、あるいは積極的に評価するという立場に立つかどうかということは別にいたしまして、少なくともこの裁判について不法、不当なものとして異議を述べる立場にはないというのが従来から一貫して申し上げていることでございます。 [引用終り] 答弁からもうかがえるように、東京裁判の judgment は実に長い文書である(英文で1212ページ)。下記のURLで訳文を見ることができる。 極東国際軍事裁判所 判決(国立国会図書館 近代デジタルライブラリー) http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1276125 ご覧になると分かるように、判決は「A部 第二章 法」において、極東国際軍事裁判所条例の効力とそれに基く裁判所の管轄権とを決定している。また、そのように決定した理由を示すため、ニュルンベルク裁判判決からも引用している。 すなわち、「裁判所条例は、戦勝国の側で権力を恣意的に行使したものではなく、その制定の当時に存在していた国際法を表示したものである」。「侵略戦争は、ポツダム宣言の当時よりずっと前から、国際法上の犯罪であったのであって」、「本裁判所の管轄権を争うことは、まったく成立しない」。 そして、政府答弁の通り日本国はこれを受諾したのであるから、この裁判が国際法上適法であると認めたことになる。 要するに、「裁判」という語は「判決等」という意味であるが、東京裁判の判決はマトリョーシカ人形のようになっていて、判決の中に「本裁判所の設立」の根拠まで書き込んであった。判決を受諾すると、それらも受諾する。 連合国は頭が良かった。日本がコテンパンに負けたのも宜(うべ)なるかなである。 〔続く〕

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