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ヴェルレーヌ(上田敏訳)の「落ち葉」について
有名なヴェルレーヌの詩の、最後の2行、「とび散らう 落ち葉かな」 ですが、音にすると、旧仮名遣いの読みで「とびちろう 落ち葉かな 」だと 思っていました。 ところが、ある人が、文字の通りに 「とびちらう 落ち葉かな」と朗読されるのを聞きました。 どちらが正しいのでしょう。 詳しい方、教えて下さい。
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手元の辞書を片手に私なりに考えてみました。 詩の言葉は一文字もおろそかにできない。この場合もそうで、そのためにまず問題の訳詩の第三連をここに書き出してみます。 げにわれは うらぶれて こゝかしこ さだめなく とび散らふ 落葉かな。 表記が「散らう」なら「チロウ」もしくは「チロー」と発音するところでしょうが、ご覧の通り「散らふ」なので、「チラウ」もしくは「チロウ」と発音することになるでしょう。 「チロウ」で共通だからどちらでも同じではないかといわれそうだし、事実耳で聞く限りではほとんど区別がつかない。そこで「散らふ」であることを強調するために、その朗読者はことさら「チラウ」と読まれたのでしょう。 というのは、『歴史的かなづかひ』では「散らう」と「散らふ」は意味が異なるからです。 「とび散らう」であった場合の、この「う」は助動詞「む」の変化したもので、私なりに噛み砕くと、「とびちろう(話し手の意志、決意を表わす)」、「とびちるだろう(話し手の推量)」、「とびちれ(勧誘、命令)」、「とびちるはずだ(当然、適当)」、「とびちることになるだろう(未来の仮説に対する婉曲表現)」などのいずれかの意味を含むことになります。 さて、表記してある「とび散らふ」のほうの、この「ふ」は反復、継続の助動詞。したがって「しきりにとび散る」「散りつづける」ということになります。 この用法の他の例としては「嘆かふ」「呼ばふ」「語らふ」などあり、また動詞の語尾がオ列音に変わってしまった例、「移ろふ」「つづしろふ」などもあるようです。 「とび散らう」と比較するに、「とび散らふ」が表わす落ち葉の散りしきる情景は、「うらぶれて」「さだめな」い作者の情感と密接に結びつき、この詩全体に流れる落魄の心がいっそう的確に伝わってくるように思います。つまり「とび散らふ」でなければならない。 朗読にはそんな気持ちも込められていたのかもしれません。
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- TANUHACHI
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上田敏の『海潮音』に収められているヴェルレーヌの「落葉」の訳詩の一節です。 旧仮名遣い(定家仮名遣い)では「とび散らふ 落ち葉かな」となります。文字で表記するならばこの様になりますが、発音するときには「とび散ろう 落ち葉かな」となります。
お礼
ご回答を有難うございます。 自分では、ずっと「とびちろう落葉かな」と思っていたので、 「とびちらう・・・」を耳にした時、違和感を覚えました。
- kine-ore
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この上田敏「海潮音」の題名は「落ち葉」ではなく「落葉(らくえふ)」です。 そして、引用の当該箇所は「とび散らふ/落葉かな。」です。 そこでの「とび散らふ」は、「トビチラウ」と読み、そして「トビチロー」と読むも可です。 「ちらふ【散るふ】チラウ/チロウ(連語)《「散る」の未然形+反復・継続の助動詞「ふ」》散り続ける。しきりと散る。」(「古語例解辞典」小学館)
お礼
ご回答ありがとうございます。 「ふ」が、反復・継続の助動詞であること、まで解説していただき、 よくわかりました。
お礼
詳しく、説明していただきよくわかりました。 「とびちろう」と発音すると、別の意味にもなるのですね。 反復、継続の意味を伝えるためには 「とびちらう」と発音する方が良いということでしょうか。 有難うございました。