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※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:小説における外的時間と内的時間)

小説における外的時間と内的時間

ghostbusterの回答

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回答No.4

すいません。なかなか時間が取れなくて、えらく回答が遅くなってしまいました。 まず、押さえておきたいのは、 > どのような理由からだと考えられるでしょうか。 という問いに、「文学的な流れ」であるとか「必然的」と答えることは、歴史を連続的・必然的なものであるとする見方にほかならないのではないか、ということです。 もちろんロマン主義にしても自然主義にしても、あるいはモダニズム、ポストモダニズムにしても、歴史的に見れば、一定の順序をもって出現してきたことはいうまでもありません。けれども、それを歴史年表のように位置づけてしまうと、ある重要な問いが欠落することになる。 ほんとうにそれが必然的だったのか、という問いです。 そんなものは嘘です。 たまたま西洋の歴史においてそれが見られた、というだけの話です。 漱石は、彼の初期の文学論である「創作家の態度」のなかでこのようなことを言っています。 「西洋の絵画史が今日の有様になっているのは、まことに危うい、綱渡りと同じような芸当をして来た結果と云わなければならないのでしょう。少しでも金合(かねあい)が狂えばすぐほかの歴史になってしまう。議論としてはまだ不充分かも知れませんが実際的には、前に云ったような意味から帰納して絵画の歴史は無数無限にある、西洋の絵画史はその一筋である、日本の風俗画の歴史も単にその一筋に過ぎないという事が云われるように思います。これは単に絵画だけを例に引いて御話をしたのでありますが、必ずしも絵画には限りますまい。文学でも同じ事でありましょう。同じ事であるとすると、与えられた西洋の文学史を唯一の真と認めて、万事これに訴えて決しようとするのは少し狭くなり過ぎるかも知れません。歴史だから事実には相違ない。しかし与えられない歴史はいく通りも頭の中で組み立てる事ができて、条件さえ具足すれば、いつでもこれを実現する事は可能だとまで主張しても差支ないくらいだと私は信じております。」 (「創作家の態度」http://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/1102_14956.html) 重要なのは「与えられない歴史」がいくらでも可能であったにもかかわらず、たまたまそうなったことを「必然的」と見ることには何の根拠もない、ということです。 だとしたら、個々の作品を文学史の流れのなかに置かずに、どうやって比較・検討したらいいのか。漱石はこのように言います。 「すなわち作物を区別するのに、ある時代の、ある個人の特性を本(もと)として成り立った某々主義をもってする代りに、古今東西に渉(わた)ってあてはまるように、作家も時代も離れて、作物の上にのみあらわれた特性をもってする事であります。すでに時代を離れ、作家を離れ、作物の上にのみあらわれた特性をもってすると云う以上は、作物の形式と題目とに因(よ)って分つよりほかに致し方がありません。」 この「作物の上にのみあらわれた特性」「作物の形式と題目」としての「時間」と「空間」に焦点を絞る。 >どちらかに分類する ということではありません。 どちらかが新しく、どちらかが古い、などという分類は、そもそも当てはまりませんし(たとえばジョイスは『ユリシーズ』を「性格小説」に分類しています)、「時間的小説」が「空間的小説」に比べて「深い」という見方は、「深さ」という規準がいったいどこから生まれてきたかを考慮に入れていません。 遠近法は画面に奥行きを描きだす表現方法ですが、それはそう見えるように配置されているだけで、奥に見えるものが奥にあるわけではありません。ちょうどそれと同じように、わたしたちが感じる文学のなかの「深さ」も、遠近法的に配置されているに過ぎない。 なぜ『坊っちゃん』と『こころ』のあいだに「流れ」を感じるのでしょう? そう感じるのは、ふたつの作品を、ひとつの「大きな物語」、歴史の発展という物語の脈絡においているからではありませんか? わたしたちは、自分が「近代」のなかにおり、「近代という物語」に立って見ているかに自覚的になる必要があるのではないでしょうか。 わたし自身もミュアの「空間」と「時間」という分類が、万能のものとは思っていません。ただ、「劇的小説においては時間は内面的で、作中人物の動きが時間そのものの動きをなします。変化、運命、性格そのすべてが一つの動きに凝縮されます。そして、動きが解決に至ると休止状態が生じ、時間は停止してしまうように感ぜられます」(p.94)という指摘は、たとえばカフカを読むときに非常な助けになると思うのです。 個人的には「空間」と「時間」ばかりでなく、ほかにもいくつかの「形式と題目」が使えないか、あれこれ考えています。もうひとつ、やはりミュアは詩人ですから、ミュアが言うより、もうちょっと正確に「空間」と「時間」も扱えないかとも考えています。 それとは別に、文学というのは、哲学や社会学とちがって、文学作品を相手にするものです。たとえばドストエフスキーの、あるいはカフカの、あるいは漱石の作品は、どれだけ体系的な分類をしようとしても、かならずそこからずれて、漏れ出すものがでてくる。むしろ、そのずれによって、作品が独立した生を生きているといってもいい。 その意味で、学者が作り上げようとする精緻な文学論にはない魅力が、実作者でもあるフォスターやミュアの分析にはあるように思います。 回答としては#1の内容を出るものではありませんでしたが、いくつかの点でわたしとは考え方がちがうかなあ、と思った点がありましたので。 もちろん、さまざまな考え方があるとは思うのですが、部分的にでも参考になる箇所がありましたら、願ってもない喜びです。

noname#107922
質問者

お礼

再々度回答ありがとうございました。 体調を崩してこちらに来れず、お礼がおそくなりまして、 申し訳ありません。 漱石関連でもうすこし反撃(笑)したいのですが、時期が逸したようですし このまま締め切りますね。 ひとつの文学理論でもって小説を読んでいくことは確かに魅力ある行為だと 思います。ただその本の社会的背景とか作者の思いなどをこぼしてしていく ようにも思います。 ご紹介いただいた書籍、なかなか手に入らないのですが、たまたま目についたのが ジョナサン・カラーの『文学理論』でした。入門書といわれていますが非常に参考に なりました。

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