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上代特殊仮名遣い
asterの回答
- aster
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すでに先の方の回答で、的確な説明になっていますが、補足的に記します。 「上代特殊仮名遣い」というのは、明治時代以降にできた概念です。それ以前は、江戸時代にも、室町、鎌倉時代にも、忘れられていて、意識されていなかったのです。 岩波文庫には、「万葉集」の本がありますが、いまはどうか知りませんが、二種類の本があります。一方は、「万葉仮名」という、漢字ばかり使って書かれたテキストが載っている本で、もう一方は、漢字+ひらがなの、現代見る形の普通の文章です。 しかし、「万葉集」は、元々、この漢字ばかりで書かれた「万葉仮名」のテキスト本が、本来であって、漢字+ひらがなの本は、平安時代頃にひらがなが確立して後、漢字をひらがなに直して、漢字交じりのひらがな文章として、書きなおしたものです。 平安時代辺りに、この書きなおしが行われたとき、ひらがなは、すでに現代と同じ数になっていて、例えば、「いろは歌」などのように、四十七文字という風になっています。 しかし、明治時代に、「万葉集」に使われた万葉仮名の研究をしてみると、あるひらがなの場合、万葉仮名は、一つではなく、複数のものが使われていたのですが、特定の単語で見ると、例えば、先の方の例のように、場合によって、使われる万葉仮名の漢字が違っていても、ある単語の、例えば「み」と、別の単語の「み」では、使われる万葉仮名の種類に重複がなく、万葉仮名が綺麗に二つのグループに分かれることが判明したのです。 「万葉集」全体について、こういう使用仮名の区別を調べ、また奈良時代の万葉仮名で書かれていた文書について、同じように分析すると、特定のかなの文字については、それに使う万葉仮名が、二つのグループに分かれていて、混用されることはないということが分かりました。 ここから出てくるのは、「み(甲)」と「み(乙)」では、奈良時代には、違う音として、はっきりと区別されていたという可能性です。音が違っていたとしないと、どうして、こういう整然とした区別をしたのか、また区別が可能だったのか、分からないからです。 万葉仮名が、現代では一つになっている或る特定のひらがな音について、二つのグループに分かれているとき、こういう区別を付けて使われた「万葉仮名」の「仮名遣い」を、奈良時代の特殊な仮名遣いという意味で、「上代特殊仮名遣い」と呼ぶのです。 母音が違っていたのであろうという判断になっていますが、すると、奈良時代には、「い」や「え」や「お」の母音が、違う音で二種類あったことになります。 これは、奇妙なことのようですが、現代の英語の母音の発音を考えると、「e(エ)」なら、「狭いエ」と「広いエ」という二種類の「エ」があります。「狭いエ」は「イ」に近く、「広いエ」は「ア」に近づきます。現代の英語では「o(オ)」も二種類はある訳で、奈良時代に、「い」や「え」や「お」が二種類発音があっても、それほど不思議なことではないのです。 奈良時代以前だと、子音も、現代の音とは違っていたとも言われていて、「はは」は昔は「ふぁふぁ」のような音だったという説もあります。
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お礼
研究史のほうまで触れていただいて、ありがとうございます。参考になりました。