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森鴎外 ペン・ネームの由来

kine-oreの回答

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  • kine-ore
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回答No.8

#6です。 >鴎外が、春の嵐の様子を描いた杜甫の詩句から取られたものだというのは、初めて知りました。お弟子の斉藤勝寿氏と、どんなやり取りののちに、この詩句を採用したのか、興味の湧くところです。  : 明治23年「衛生新誌」紙上での漢詩文の内容は未詳ですが、ここに大正11年の「新小説臨時増刊」上での「文豪鴎外森林太郎」において、「私ごときの雅号が…」と鴎外追悼文中に認めていることを、斎藤茂吉は「童馬山房夜話. 第2」の「179 「鴎外」の雅号」において転載しています。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1141874/63 ちなみに、斎藤茂吉はこの後も「190 再び「鴎外」の號に就て ​」、さらに「192 鴎外の號に就て(三たび) ​」において、あらゆる角度から鴎外漁史の来歴研究を行っており、これを以て結論として捉えて構わないと思ってます。 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1141874/75 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1141874/80 これらを具に調査報告した茂吉の報告を集約してみると次のようになるでしょうか。 1.明治13年7月28日付「桂林一枝 第36号」に載った「泛品海」では、「佐藤應渠(元萇)曰。合作」との注が付記されていること。(少年一人のそれでなく、あくまでも義父の手が入っていること。) 2.「雁」の文中にて当時「桂林一枝」を「岡田」が読んでいた記載があること。 3.火災に遭ったせいもあり千住の父の医院に引越しした鴎外と、岩代から当時は千住に移住していた佐藤父子との交流も通り一遍のそれではなかったこと。 4.鴎外の人柄からして、佐藤父子の「鴎外漁史」の後追いの形で、密かに自身の雅号に用いていたとは信じ難いこと。 5.唐詩選中の杜甫の五言律詩が出所と思われること。 ちなみに中西梅花 (幹男) 「新体梅花詩集」博文館(明24.3)の「鴎外漁史」においては杜甫を踏まえたものか、次の文句があります。 「… 柳ねふりし空を高み、 空をたかみて鳴くと云ふ、 かまめの外に知るよしあらじ。」 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/876384/48 (蛇足ですが、万葉時代の鴎は「加万目」でした。) およそペンネームもその発端には怪しくも覚束ない草草・来歴があるもので、であればこそ正岡子規の100を超す雅号は例外としても幾十ものそれらの中から定着したただ一つという次第なのでしょう。 半村良のペンネームから一年後に、イーデス・ハンソン(良いです、半村)が活躍。両者は全くの偶然とのことです。 漱石が初めてその名前をペンネームとして記した際、サンズイに「欶(サク・ソク/すう)」なのに、その「束」の旁が「欠(あくび)」ではなく「攵(えだにょう)」の「敇(サク)」にしてしまい、慌てて訂正を入れて詫びた事。その際に「実名を曝すは恐レビデゲスと少しく通がりて当座の間に合わせに漱石となんしたり」などと言い訳しています。 とまれ、若き頃の鴎外といい漱石といい、当座間に合わせのペンネームがこうも重い歴史を持つに至るとは知らぬ仏だったのでしょう。 もはや小倉で森少将閣下となっていた時代のご本人にとっては、いまさら「鴎外漁史とは誰ぞ」なのでしょう。そのレトリック多用の文調からして真面目に裏打ちされており、まあむしろ可愛いもんなのですが…。

noname#202494
質問者

お礼

再びご回答いただきまして、ありがとうございます。 明治時代のペンネームについては、確か、”三四郎”で、友人のなにがし君が、雑誌に文章を投稿するときに、熟考することなく、そのときの気分で命名していました。それを、どうしたわけか三四郎君の投稿であると誤解されて、ひと悶着ありました。 当座の間に合わせ、というご意見にも、なるほど、と頷けるようです。 青空文庫で、森鴎外に”夏目漱石論”があるのを見つけて、嬉しくなって読み始めて、私はびっくりしました。鴎外は、これは、夏目漱石の小説を読んでいないでしょう。。。夏目漱石と言う人に興味もなかったように感じました。 鴎外のような当時一流の知識人の常識として、小説を書くのは、一段低い事柄であり、そんな後ろめたさから、”間に合わせのペンネームでもつけておけ”、というふうになってしまったと考えられましょうか。 斉藤茂吉の”童馬山房夜話”を添付していただき、嬉しく拝読しました。 その一では、斉藤勝寿氏との経緯、ご子息である森オットー氏の”かもめの渡し説”、柳田泉氏の”杜甫の詩賦よりの引用説”、小島政二郎氏の”お安くないもの説”を並べておいて、柳田泉氏の詩賦から引用を取っておられます。 その二では、斉藤勝寿氏の談話にもう一度スポットライトを当てて、明治後年の、ペン・ネーム・ラッシュの様子を考察して、その中で、力のある人たちだけの名が残り、他の自称作家たちは、万骨枯れた。 その三では、ご回答で、1~5にまとめてくださったような推理に結論付けられたようです。 柳につき物は、ツバメと思いましたが、それをカモメに変えた中西梅花の詩句でした。”かもめのほかに知る由もなし”とは、判じ物の答えのようですが。 そういえば小島政二郎の著書に”鴎外荷風万太郎”があり、彼の鴎外のペン・ネームの由来、”お安くない説”を思いますと、ゴシップ風かもしれませんが、興味を惹かれます。 思いもかけなかった斉藤茂吉の”童馬山房夜話”をご紹介くださり、あれこれと、楽しく、想いめぐらせるうことが出来ました。 回答のために、貴重なお時間をとっていただき、ありがとうございました。

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