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法人名義

前提 BはAに債権を持っています。 法人A'をAが海外で設立し、当該法人の代表です。 事実上、Aが所有するすべての財産が法人A'名義です。 設問 BはA'の所得財産をあらゆる適法な手段を用いて、回収することはできますか?

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回答No.1

 自然人Aと法人A’とは別人格ですから,(A’の財産にAに対する債権の担保物権が設定されていない限り,)Aに対する債権を理由としてA’の財産に強制執行することはできないのが原則です。  ここで,A’の財産に強制執行をかける上で,二つの問題点があると思います。  ひとつは,自然人への債権を理由として,その自然人と密接な関係のある法人名義の財産に強制執行をかけられないかという点,もうひとつは,仮に法人名義の財産を自然人の財産と同一視できても,海外財産にまで強制執行できるのかという点です。  前者については,先に述べた原則の例外として「法人格否認の論理」があります。  最高裁は,昭和44年2月27日判決で,「 社団法人において、法人格がまつたくの形骸にすぎない場合またはそれが法律の適用を回避するために濫用される場合には、その法人格を否認することができる。」とした上で,「株式会社の実質がまつたく個人企業と認められる場合には、これと取引をした相手方は、会社名義でされた取引についても、これを背後にある実体たる個人の行為と認めて、その責任を追求することができ、また、個人名義でされた取引についても、商法五〇四条によらないで、直ちにこれを会社の行為と認めることができる。」としました。要は,会社と個人とを同一人格とみたわけです。  さらに昭和48年10月26日判決で,次のように述べ,新会社による「旧会社と法人格を異にする」との実体法上および訴訟法上の主張が信義則に反し許されないとし,新旧会社は同一人格としました。 :「株式会社の代表取締役が、会社が賃借している居室の明渡し、延滞賃料等の債務を免れるために、会社の商号を変更したうえ、旧商号と同一の商号を称し、その代表取締役、監査役、本店所在地、営業所、什器備品、従業員が旧会社のそれと同一で、営業目的も旧会社のそれとほとんど同一である新会社を設立したにもかかわらず、右商号変更および新会社設立の事実を賃貸人に知らせなかつたため、賃貸人が、右事実を知らないで、旧会社の旧商号であり、かつ、新会社の商号である会社名を表示して、旧会社の債務の履行を求める訴訟を提起したところ、新旧両会社の代表取締役を兼ねる者が、これに応訴し、一年以上にわたる審理の期間中、商号変更、新会社設立の事実についてなんらの主張もせず、かつ、旧会社が居室を賃借したことを自白するなどの事情のもとにおいては、その後にいたつて同人が新会社の代表者として、新旧両会社が別異の法人格であるとの実体法上および訴訟法上の主張をすることは、信義則に反し許されない。」  上記の判例の基準からすれば,ご質問の事例でも,A’がもっぱらAの財産隠しのために設立されたものであるような場合には,A’独自の人格を否定してAと同一視し,A!名義の財産に強制執行をかけることが可能になるでしょう。(※実際に裁判で法人格否認を認めさせるのは,特に外国にある法人の場合にはなかなか大変かもしれないですが。)  しかし,次の問題ですが,日本の裁判所で法人格否認(AとA’とは同一人格であること)が認められたとしても,外国の統治下にあるA’の財産に日本の執行官が踏み込むことは,主権侵害そのものですから,実際にはできませんよね。  そこで,その国が,日本の執行官に代わってA’の財産に強制執行してくれないかが問題になります。日本の裁判で,「BはAに債権があること」「AとA’とは法的に同一人格であること」が認定されているので,それを前提に,A’のある国が,BのためにA’の財産に強制執行してくれないといけないわけです。  この点,日本の民事執行法24条は,外国裁判所の判決の執行判決について定めています。 民事執行法第24条(外国裁判所の判決の執行判決) 1 外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。 2 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。 3 第1項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法第118条各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。 4 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。  日本では,外国判決を前提に日本の執行官が強制執行するという判決をもらうことができるのです。  したがって,A’のある国にこのような法律の規定があれば,A’の法人格否認を前提としてA’の財産に強制執行することは不可能ではないでしょう。  

noname#147353
質問者

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