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国連改革「拒否権を無くす」ことについて。

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  • juscogens
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回答No.9

拒否権について、様々な観点から批評することが可能ですが、 いかなる場合にせよ、拒否権そのものは国連憲章という条約、特定の法に基づいているものである以上、その出発点として、その法的な観点からの分析を行うことは重要だと思います。 この点、その憲章上の根拠に関して、 既に述べられていますが、それは27条3項の規定に求められます。 ただ、そこで「拒否権」(Veto)という文言が用いられているか否かは、 大した問題ではありません。それをどのように表現したとしても、実際には、周知のように常任理事国が反対すれば、安保理の決定は為されないということには変わりないのですから。 では、このような拒否権が設けられたのは何故か? 言い換えれば、拒否権制度の意義とは何ぞや?ということが問題になると思います。 純粋に、法的な観点からすれば、それは次のように説明されます。 すなわち、国連安保理は、連盟と比べて、実効性の観点から強大な権限を与えられているが、その権限を行使するに当たっては、より一層の慎重さが求められる。そこで、拒否権制度は、安保理の暴走を押さえる上での安全弁として働く、と。 しかしながら、政治的な観点から拒否権が設けられた趣旨を説明するならば、それはソ連を国連という枠組にはめ込むことにあったといえます。 仮に、このような拒否権制度が存在しなかったならば、第二次大戦後、主として西側諸国から成り立っていた国連、およびその制度のなかに、ソ連が参加することはなかったでしょう。 そのような趣旨を考えれば、冷戦期の安保理の機能麻痺というのは、別に想定外の事態ではなく、むしろ想定された事態であったといえます。 これは、通常、大国のエゴとして非難されるところですが、国際関係における秩序維持において、大国が重要な役割を果たしていることを考えれば、 むしろ大国を国連という制度の下に引きとどめる役割を果たしていた拒否権の機能は、評価されても良いといえます。 しかしながら、冷戦の終結によって、そのような意義は失われたといえます。 まず、法的な観点から、安全弁としての拒否権の意義というのは、もはや全く認められません。むしろ、今日的に問題となっているのは、安保理による活動の行き過ぎの議論です。むしろ、この点に関しては、国際司法裁判所もしくは総会による安保理のコントロール機能が注目されています。 また、政治的な観点からしても、ソ連の崩壊によって、上述の意義は失われました。そして、それ以上に、今日では拒否権というのは、安保理の活動にとって、弊害でしかないものになっています。 まず、冷戦後、安保理の活動が活発化していくに伴って、その活動が効果を発揮するためには、安保理自身の正当性が問題となってきました。 この点、安保理は国連加盟国のうち15カ国によって構成されていますが、 この枠組が規定されたのは多くの植民地が独立していなかった40年近く前であって、それ以降も、多くの国が独立してきました。 その結果、現在、国連の加盟国は191カ国に拡大し、安保理の構成そのものの民主性が疑われています。(「たった」15カ国の決定によって、自国の死活的な利益が損なわれうるのですから。) そのような状況において、拒否権制度が存在することは、当然、安保理の正当性に重大な疑問を投げかけることになります。それは、ひいては、安保理の効果的な活動を妨げる要因になります。 したがって、拒否権制度は、もはやその存在意義を失っている以上に、 その存在自体が弊害でしかないといえます。 もっとも、とくにアメリカなどに顕著ですが、常任理事国は既存の権益を失いたくないという観点から、拒否権廃止に反対することになります。 そこで、いかにして、拒否権制度を廃止していくか、ということが問題になります。 結論からすれば、一気に拒否権を廃止することは難しいと思います。 したがって、初めの段階としては、拒否権制度を使いにくくする、という状況を作ることが重要になります。 すなわち、安保理理事国の拡大です。現在、理事国は15カ国ですが、これが拡大されて、例えば30カ国になった時に、29カ国が賛成しているにもかかわらず、1常任理事国が拒否権によって、ある決定を妨げることは相当なプレッシャーになるでしょう。 拒否権制度の廃止、というのは、このような段階を経て可能になるものだと思われます。

jonjonyana
質問者

お礼

詳しい回答ありがとうございます。 感謝します。

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