- ベストアンサー
村上春樹『ノルウェイの森』の風景表現についての質問
- 外国人の日本語教師が村上春樹の『ノルウェイの森』の理解に迷っている箇所があります。
- 上記の文章の中で、「十月の風はすすきの穂をあちこちで揺らせ、細長い雲が凍りつくような青い天頂にぴったりとはりついていた」という表現に関して質問があります。
- また、「は」と「が」の違いについても教えていただきたいです。
- みんなの回答 (4)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
「補足コメント」を拝見いたしました。 むずかしくてよく分かりませんが、苦し紛れの推測混じりでお答えします。 >「空は高く、じっと見ていると目が痛くなるほどだった。風は草原をわたり、彼女の髪をかすかに揺らせて雑木林に抜けて行った。梢の葉がさらさらと音を立て、遠くの方で犬の鳴く声が聞こえた。」という部分にも「空」や「風」の後に「は」が使ってあるが、「梢の葉」となると、「が」が使われているのです。これはどうしてでしょうか。「は」と「が」の使い分けとして、いろいろありますが、そのどれにも当て嵌まらないような気がしますが。 ⇒私の個人的な推測ですが、「空は高く、じっと見ていると目が痛くなるほどだった。風は草原をわたり、彼女の髪をかすかに揺らせて雑木林に抜けて行った」の場合の「は」は、いわば「情景描写格」と言えるものかも知れない、と考えます。つまり、「空については○○で、風については□□であった」というように、情景もしくは背景の要素を順次「主題化」して、「類比的」に描写しているのではないでしょうか。 それまでは広角レンズによる大写しだった場面が、ここでズームアップして「梢の葉」を拡大して捉える。それが、「梢の葉がさらさらと音を立て、遠くの方で犬の鳴く声が聞こえた」と表現されたわけで、「梢の葉」に的が絞られた、ように感じられます。これを要するに、「が」には、いわば「焦点格」と言える側面があるのかも知れません。 以上から、「は」は、「主題格」・「類比的」・「情景描写的」であり、「が」は、「主語格」・「単発的」・「焦点的」である。すなわち、「は」と「が」には、このような「類似点と相違点の混合」があるような気がしてなりません。 なお、この「は」と「が」の問題は、古来議論の的で、昔大学を出て地方の旧制中学(今の高校)で国語を教えていた人が、生徒からこの種の質問を受けて答えられず、大学院に戻って研究して、国語学会の重鎮になった人がいたそうです。しかし、それでもまだ、この問題には学会が公的に認める定説はないようです。 相変わらず曖昧な説明ですみませんが、以上再伸まで。
その他の回答 (3)
質問1 「揺らせ」の後に句読点の読点がついていることに注意してください。 句読点の使い方が英文のカンマ(,)に比較して曖昧な使用がされますので注意して下さい。 文章としては一度ここで切れています。 二段に書き分ければ以下のようになります 十月の風はすすきの穂をあちこちで揺らせ、 細長い雲が凍りつくような青い天頂にぴったりとはりついていた つまり「十月の風」は後半の雲の描写とは無関係です。 従いまして、はりついているのは、雲ということになります。 質問2 細長い雲が凍りつくような青い天頂にぴったりとはりついていた 文中の「な」「に」「と」に注意して下さい。 修飾語を除けば「雲がはりついていた」という文章です。 「青い天頂」は空のことを表現しています。 単に「空」としなかったのは作家の好みに基づく表現です。 理屈を言えば、天頂は頭の上の空間の最上部ということになります。 空を科学技術的に空間とは見ずに、ドーム状のものと表現していることになります。 頭の上に広がるドーム状の青いもの、すなわち空だということになります。 逆に言いますと科学的な知見はいっさい排除した文学的な表現である、と言えます。 空を空間としては認識しないで、ドーム状のものと認識するのは万国共通の素朴な受け取り方かとおもいます。 ご指摘のように、空の状態の描写として「雲が凍りつくような」と読み取ることは可能です。 凍りつくような朝、凍りつくような夕暮れ、ななどという表現が多用されます。 単に寒い朝や寒い夕暮れ時のことですが、その場にいる人物の実感として身体が凍りつくような感覚におそわれるほど寒いということを表現しています。 作家は、空が冷涼である、ということを表現したくて、この多用される表現をそのまま流用したと思われます。 結果として作家の意図に応じた読み取りかたは 「凍りつくような青い天頂」という読み取りになります。 文学作品ですので、文法がどうのこうのという受け取り方をしますと混乱を増長するだけのことになりますので注意して下さい。 俳句、和歌あるいは詩をお読みになれておられるかと思います。 文学作品には、これ等の表現方法を多用する作家の作品が多いので注意をして下さい。 質問3 「は」「が」については文法論では決着がついていません。 文法という学問は欧米の文章に基づいて発達した学問です。 用語や分類方法も欧米に倣った用語や方法がとられていますが、言語体系の異なる日本語には時として無理が生じます。 日本語が他の言語と類似性を持たない特異な言語体系であることが原因かと思います。 直観的には日本文学では「が」は断定の印象が伴うことから余り好まれません。 対象や文意をあえて断定あるいは明確にしたいときに使われます。 そのような点から「は」は多用されますが、時として極めて曖昧な文章となることは否めません。 蛇足 日本語の教材としては文学的要素の強い文章を多用する村上春樹は不向きかと思います。 文法などに拘らずに文章を楽しめるの上級者向けかと思います。 中級クラスにはむしろエッセイ作家の作品のほうが理解し易いかと思います。
お礼
丁寧なご回答をありがとうございました。正直に言えば、読点のあるなしを全く意識していませんでした。それから、「凍りつく」という言葉の使い方についてのご説明もとても詳しく要領を得たもので、私の疑問を完全に解いてくださいました。文学の読み方についてのご注意はとてもありがたいものとして受け止めております。まことにありがとうございます。
- Nakay702
- ベストアンサー率79% (10007/12518)
以下のとおりお答えします。 >質問1.上の段落の中には「十月の風はすすきの穂をあちこちで揺らせ、細長い雲が凍りつくような青い天頂にぴったりとはりついていた」の一文があります が、「青い天頂にぴったり張り付いていた」のは何なのでしょうか。「十月の風」でしょうかか、それとも「細長い雲」でしょうか。 ⇒細長い雲が(凍りつくような青い)天頂にぴったりとはりついていた。」とカッコにくくってみれば分かるように、「ぴったりとはりついていた」ものは「細長い雲」です。 まあ、常識的に考えても、つまりよほど穿った見方でもしない限り、「風」の属性は動くことですから、「はりつく」ことはありませんよね。 >質問2.「凍りつくような」「青い天頂」なのでしょうか、それとも「長い雲が」「凍りつく」のでしょうか。文法的な関係を教えていただければ助かります。 ⇒「凍りつくような青い天頂」です。 なお、質問者様は一瞬、「細長い雲が凍りつくような青い」までを「天頂」にかかる修飾語かも知れない、と考えたかも知れませんが、確かに、この書き方は、(少なくとも構造上は)まぎらわしいですね。もしそういう解釈の余地がないような構文にしたければ、「細長い雲の凍りつくような」とする(「が」→「の」)方法があります。 >質問3.文章には、「は」になったり、「が」になったりなのですが、直感的にどう違うのか、教えてくださいませんか。 ⇒ごく大雑把に分ければ、「は」は、いわば「主題格」で、「が」は「主語格」です。 例:「象は鼻が長い」(有名な例です)=「象について言えば、鼻が長いです」。 「日本経済は、Aが強く、Bが弱い」=「日本経済について見れば、Aが強くて、Bが弱いです」。 なお、「は」が「主語格」として用いられることがありますが、多くの場合それは「類比的・類別的主語」を導きます。 例:「象は、鼻は長いが、脚は短い」。「日本経済は、Aは強いが、Bは弱い」。 「六月や七月の風と違って、十月の風はすすきの穂をあちこちで揺らせる」。 >とてもややこしい質問だと思いますが、ネイティブの方でないと理解が届かないところなので、是非お願いします。 ⇒間違いがあるかも知れませんが、以上ご回答まで。(それにしても、質問者様の日本語力に驚きました。私の外国語力を考えると恥ずかしいです!)
お礼
丁寧に回答してくださいまして、まことにありがとうございました。
補足
丁寧なご回答、ありがとうございました。 おっしゃった通り、常識的には、天頂に張り付くのは「細長い雲」以外考えられないとも思いましたが、どうしてもこの文の構造に引っかかってしまったのです。「山肌」にも「十月の風」にも「は」を使っているが、どうして「細長い雲」の後にだけ「が」を使っているのか、納得がいきませんでした。同じレベルの描写文なのにと思って、質問をしました。 そして、その後の「空は高く、じっと見ていると目が痛くなるほどだった。風は草原をわたり、彼女の髪をかすかに揺らせて雑木林に抜けて行った。梢の葉がさらさらと音を立て、遠くの方で犬の鳴く声が聞こえた。」という部分にも「空」や「風」の後に「は」が使ってあるが、「梢の葉」となると、「が」が使われているのです。これはどうしてでしょうか。「は」と「が」の使い分けとして、いろいろありますが、そのどれにも当て嵌まらないような気がしますが。
- SPS700
- ベストアンサー率46% (15297/33016)
1。「青い天頂にぴったり張り付いていた」のは何なのでしょうか。「十月の風」でしょうかか、それとも「細長い雲」でしょうか。 細長い雲です。 2。「凍りつくような」「青い天頂」なのでしょうか、それとも「長い雲が」「凍りつく」のでしょうか。文法的な関係を教えていただければ助かります。 ○が、△な☆に、凍りつく = ○(主語)+{△(修飾語)+☆(名詞)}に(副詞句)+凍りつく(動詞) 3。文章には、「は」になったり、「が」になったりなのですが、直感的にどう違うのか、教えてくださいませんか。 「は」は、ここでは全文の題目兼主語、「が」は従属文の主語です。
お礼
ありがとうございました。
お礼
とても丁寧で分かりやすいご説明で、これで納得がいきました。特に「は」は、「主題格」・「類比的」・「情景描写的」であり、「が」は、「主語格」・「単発的」・「焦点的」というのはとても要領を得た説明で、説得力があります。おかげでやっと疑問が解けました。本当にありがとうございました。それと同時に改めて日本語の難しさを痛感しました。