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『三四郎』についての本

ghostbusterの回答

回答No.1

ちょっとこれ、難問です。 漱石関連の文献って、実際ものすごくあるんです。 論文を書こうっていうのではなくて、理解を深めようというのだったら、おもしろい方がいい。 とりあえず、私が読んでおもしろいと思ったものをあげておきます。 ただ、あくまでも私の感覚なんで、質問者さんがおもしろくなかったら、辛抱しないで、どんどんやめてってください。解説本を十冊読むより、オリジナル十回読んだ方がはるかにいいのは、どんな本でも同じです。 まず、質問者さんの利用できる図書館にあるかどうか微妙なところなんですが、筑摩書房から出ている中村光夫全集第三巻を。 枕になりそうな厚さの本ですが、漱石論はその一部です。『三四郎』は単独で一章取ってあって、これはもともとが学生向けに編纂された全集もののあとがきに書かれた、独立したものなので、わかりやすく、読みやすいものです。 ほかにも作家論、作品論とあって、どれもおもしろいです。 漱石論といったら、この人は外せない。 江藤淳、という人は、漱石没後、漱石門下生筆頭とされた小宮豊隆(一般に『三四郎』のモデルはこの人とされています)が作った“漱石像”を批判し、漱石を明治という時代と関連づけて読み解いた人です。 江藤淳『漱石とその時代』(第一部~第五部)(新潮選書) 『三四郎』を扱ってあるのは、五分冊の第四部にあたります。いま見てみたら、10章の「猫の死」、11章「「白船」来航」が『三四郎』の時期に相当します。とりあえずそこを拾い読みするだけでも、けっこうおもしろいんだけど、ちょっと戻って、「二葉亭の挑戦」あたりから読むと、もっと当時の背景事情がつかめるかも(私は二葉亭四迷がものすごーく好きなので、ここらへん特におもしろかったです)。 新しい本だと吉本隆明『夏目漱石を読む』(筑摩書房) これは講演をもとにしたものだから、すごく読みやすいです。 『三四郎』は青春物語、というくくりで、二番目に上げられています。 ちょっと毛色が変わったところで。 『女々しい漱石、雄々しい鴎外』渡邊澄子(世界思想社) この「三四郎論」はジェンダー論から『三四郎』の美禰子に迫っています。 んー、この本ね、鴎外とか、さらには島尾敏雄の評論なんか、ちょっとどうかなーと思うんですが、漱石編は大丈夫(なんて、全部私の評価でしかありません、ごめんなさい)。 軽いけれど、意外におもしろかったのが『漱石のレシピ -『三四郎の駅弁』』(藤森清編著) サブタイトルどおり、「三四郎」編では、三四郎が食べた駅弁がどんなものだったか、それだけじゃなくて、当時の人たちがどんなもの食べてたか、よくわかる。 一冊まるまる読んでもすぐ読み終わります。 読んでるとおなかがすいてきます(笑)。 漱石論全般でおもしろかったのが小島信夫『漱石を読む』(福武書店)。 これはほとんど『三四郎』には触れていないし、二段組みで厚いし、単に私が小島信夫が好きだってだけかもしれません。 もうひとつ、激しく好みに偏っているものを。 内田百間(「けん」正しく変換していません。中は日ではなく月)『漱石先生雑記帳』(河出文庫) これ、私が高校のころに古本屋で見つけた本なんで果たして図書館でもあるかどうか、なんですが、なんともいえず好きなんです。 どこからどう切り取っても百間の作品なんですけどね、漱石の書き潰し原稿をもらってきたら、鼻毛が植えてあった、とか、形見分けでもらった背広をぼろぼろになるまで着た、とか、おもいっきり屈折した百間の、なんともいえない敬愛の情が胸を打ちます。 以上、こんなもんでお役に立つかどうかなんですが、どれかひとつでも参考になればうれしいです。

noname#9152
質問者

お礼

■ありがとうございます。■公私ともに忙しく、なかなか図書館へは行けない、本屋での長時間の立読みも出来ない状態です。■一番興味を魅かれたのは『中村光夫全集第三巻』。次が『女々しい漱石、雄々しい鴎外』で、高くても買ってしまおうかと思ったのですが、ネットで見たら絶版でした。入手のしやすさを考えると、吉本隆明『夏目漱石を読む』にしようかな。■『漱石とその時代』は時間のある時、本屋か図書館で拾い読みしたいと思います。■小島信夫『漱石を読む』は、もっと漱石作品を読んでから検討します。■『漱石のレシピ―『三四郎の駅弁』』。作品の本質と関係ない話も大歓迎です。ちなみにネット書店で『「三四郎」の東京学』という本を見つけました。これは読む予定ですが、回答者さんが既読で面白くなかったという場合は、御一報ください。■『漱石先生雑記帳』。ちくま文庫『内田百閒集成6』に「漱石遺毛」と「漱石先生臨終記」というのが収録されているようですが、これは別のものですか。「閒」はIMEだったら部首入力の「もんがまえ」から出るようです。余談ですが「山東京伝」が大好きです。■漱石研究No.2 特集『三四郎』(翰林書房)というのをネット書店で見つけたのですが、これについて知りませんか。■とりあえず、吉本隆明を読んでみます。■「解説本を十冊読むより、オリジナル十回読んだ方がはるかにいいのは、どんな本でも同じです。 」至言だと思います。やはり持つべきものは良き書評家ですね。本当にありがとうございました。

noname#9152
質問者

補足

お礼を投稿した後、近所の本屋で「漱石遺毛」を立読みしてきました。やはり鼻毛の話でした。すごく面白いのですが、回答者さんがこのような老人を目指しているのかと思うと複雑な心境になりました。 閒の字はパソコン環境によっては出ないのかもしれません。安易な指摘をしたことをお許しださい。

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