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源氏物語の翻訳について
- 源氏物語の翻訳について質問があります。A.Waleyの『TALE OF GENJI』からわからない箇所と訳の間違いを教えてください。
- 質問1では、詩歌がたどたどしいことを表す「halting」と、「oneが長い間彼女の演奏を切望している」という表現について疑問があります。
- 質問2では、「私が歌を持っていれば、横笛を引き止めることができるだろう」という表現について解釈が難しいです。また、時制の混ざった文の構造についても質問があります。
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今晩は。金曜日は「風薫る」気持ちの良い日でした。 いつも大変丁寧なお礼をありがとうございます。完璧が身に付いてきましたね。 1)『 and then, beseeching her pardon for his halting verses, he begged her to play again while one was still near who longed so passionately to hear her. When he had paid her many other compliments, the lady answered in an affected voice with the verse: 』 >それから、彼は彼のたどたどしい詩歌に対して彼女の許しを懇願して、彼女(の演奏)を聞くことをとても情熱的に切望した人がまだ近くにいる間ずっと、彼女に再び演奏してくださいと頼みました。彼がたくさんの他の賛辞を彼女に与えたとき、その女性は詩歌で気取った声で答えました。・・・・・? ●完璧です。 >halting verses・・・・「halting」は「たどたどしい」? ●その通りです。 >【while】 one was still near who longed so passionately to hear her・・・・「while」は「~の間ずっと」ですか? ●前に 前置詞のduring の2つの意味をご説明したことがありますが、while はその接続詞版で、1)~の間ずっと、2)~の期間のある時に、の2つの用法があります。ここは、2)ですね。 >ここの「one」は彼のことですか?ここで「he」を使うとくどいのでわざわざ「one」に置き換えているのでしょうか? ●お訳しになっている通り、one (…) who~とwho~が掛かっています。無論、自分のことです。日本語でも自分を3人称で表現することはよくありますね。「こうやってあなたのことを毎日世話してくれる人間がいなくなったら、あなたどうなると思ってるのよ」では、「こうやってあなたのことを毎日世話してくれる人間」=「私」ですね。 2) 『 Would that I had some song that might detain The flute that blends its note With the low rustling if the autumn leaves. 』 >たとえ秋が去っても、その音色を低くかさかさいう音と調和する横笛を、引き止めるであろう何かの歌を、私が持っていればよいのですが・・・? ●完璧です。上級の難度ですが、すごいですね。 >【Would that 】I had some song that might detain~・・・・・「~であったらなあ」という文語調の形でしょうか? ●その通りです。正答率3%の壁を破りましたね。 >some song that 【might】 detain~・・・・「might」は可能性・推量の「・・・だろう」「・・・かもしれない」ですか?(mayよりも確率の低い可能性を表す) ●中辞典では出てないかもしれませんが、希望を表す動詞のあとの that節の中で使われます。「かもしれない」と訳しません。I hope that S may ~で、hope … may とセットで考えればいいと思います。古風な英語です。ここは would that があるので、仮定法の might の形で使われています。 >【if 】 the autumn leaves・・・「if」は譲歩ですか? ● そう思います。「秋が去ると落葉もなくなり、あなたが去っていく落ち葉のカサカサした音がしなくなりますが、秋が去り冬が来ても、あなたの笛をとどめておくだけの魅力のある歌があればいいのですが」という意味かと思います。 原文は「木枯に 吹きあはすめる 笛の音を ひきとどむべき 言の葉ぞなき」で、「木枯らしの音に打ち混じるような(あなたの吹く)笛の音を、ひきとどめておけるような言葉もございません」で、言の葉に、琴と落葉(木枯の縁語)が掛けられている技巧的な歌になっています。 Waleyのほうも負けじと、the low rustling if the autumn leavesに、「あなたが私に飽きて去っていく時たてるであろう、落葉のカサカサとした音」という隠喩を籠めていると思います。また leaves には落葉がかけられていると思います。英詩ではやらない技法ですが、凝りましたね。 >過去と現在の時制が混ざっていて文の構造をどう理解したらいいのかわかりませんでした。 I 【had】 some song、The flute that 【blends】 its note、the autumn 【leaves】など ●仮定法過去は、【現在】の夢想ですので、夢想でない部分は、現在形がなじみます。if the autumn leavesは未来のことですが、副詞節ですので、現在形にしなければなりません。 >私はあなた(男)を引き止めませんよ、という気持ちがこめられた歌ですか? ●私にあなたを引き止められるような魅力がないのが残念です、という意味だと思います。 >馬頭の恋敵のように思われるこの男性と、この女性は結局いい関係なのかそうではないのか、和歌のやりとりからは微妙な感じがします。 ●いい仲の男女の喃々語(?)ではないでしょうか。ごちそうさまでした、と言いたくなりますね。 ********************* 《余談》Keats の “Ode to a Nightingale” を読まれたとか。イギリスロマン派の頂点をなす詩の1つで、読者を酔わせますね。 ***************** ウルフが『源氏物語』の「語り」について、Waley から直接、日本語では地の文に誰かの言葉がそのまま紛れ込んできて渾然とするという説明を聞いていたとしたら、多分興味を引かれただろうと推測します。それが彼女の「意識の流れ」の手法に影響していたとしたら...現代の革命が古典によって引き起こされたもう一つの例証になるでしょうね。地球の反対側の革新的小説家を引きつける魅力を持った『源氏物語』は、本当に偉大な文学だと言えると思います。 でも影響関係に確証はなく、あくまで憶測の域を出ませんが、ちょっと想像してみたくなる仮説ではあります。(つづく)
お礼
今晩は。爽やかな日でしたね。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 相変わらず考え込んで訳しています。 「halting」の訳はよくわかりませんでした。 前回のこの男性の和歌がたどたどしかったかどうか・・・ 結局少しへりくだり気味に表現しているのかなと思いました。 「while」は「~の期間のある時に」で、「~情熱的に切望した人が近くにいる(期間の)ある時に」ということですね。 「during」は「It was during the Godless Month、」のところで教えていただきました。 ここは【(特定の期間)の間のある時】というのが比較的わかりやすかったのですが(その後に「on beautiful moonlight night」という句が続いていたので)、今回は判断が難しかったです。 「one」のところは確かに日本語でも言いますね。 2)は時制のところがわからなくて全体的にどう言葉をまとめたらいいかわからなかったのですが、最初に「たとえ秋が去っても」と訳したのでそれに合わせた時制で訳してしまいました。 「Would that」のところは文法書に「Would that~」の例文がたまたま載っていたので、もしかしたらこれなのかなと思いました。前回は出だしが「It is」の省略だったので何か省略されているかとも考えたり・・・ 「might」は「引きとめるかもしれない」と訳していたのですが、日本語の文としてしっくりこなかったので、「だろう」(であろう)の言葉に置き換えました。(「かもしれない」とは訳さないのですね) 私の辞書だと《願望・希望などを表す動詞に続く名詞節》:We heartily hoped he might succeed.(彼が成功するように心から願った)と説明がありました。(ここではthatが省略されているようですね) 「hope・・・may」とセットですね。 ここは仮定法の「Would that」があるので仮定法の「might」になっているのですね。 意味としては「秋が去って落ち葉のカサカサした音がなくなりますが、あなたの笛をとどめておくだけの魅力のある歌があればいいのですが」ということなのですね。(説明していただいてよくわかりました。確かに冬になると落ち葉がなくなってしまいますね) 原文の紹介と和歌の説明ありがとうございます。 「言の葉」と「琴と落葉」(木枯の縁語)の掛け言葉の技巧には感動しました。 (すごいですね) Waleyもすごいですね。紫式部の技巧を見抜いてのことでしょうね。 「autumn 」(秋)=飽き、「leaves 」(去る)=葉、「落葉のカサカサとした音」=「去って行くときにたてる音」ですね。本当に凝っていますね。 時制がわからなくてどういう意図でこの英文を作ったのかと思ったのですが わかりやすい説明をありがとうございます。 「夢想でない部分は、現在形がなじむ」「未来のことは、副詞節だと、現在形にしなければならない」ということですね。 この和歌は前回の男性の和歌に対して言い返し気味に返したのかな、と思ったのですが自分に魅力がなくて残念です、という気持ちなのですね。 「喃々語」というのはインターネットで調べてみました。 気心が知れた仲の男女にとってはこういうやりとりが楽しいということでしょうか。 (馬頭はあてられてしまいましたね) ************************ “Ode to a Nightingale”はロマンチックで情熱的ですね。 (「tender is the night」もありました) この詩のタイトル(メイン)に「Nightingale」をもってきたところが才能なんだなと思いました。 ************************ ウルフと『源氏物語』とWaley についてのつながりはいろいろ憶測ができますね。 前回紹介してくださったウルフの『源氏物語』と「紫式部」の洞察はとてもすぐれていると思うので、創作上何かしらの影響があったのではないかと感じます。 そしてWaleyが『源氏物語』を英訳しなかったらウルフはそれを読む機会がなかったことを思うと、Waleyの果たした功績も大きいですね。 『ユリシーズ』も『オデュッセイア』というギリシア古典から着想していることを思うと、すぐれた古典というのは何世紀にも渡ってエネルギーを与え続けることができるということですね。 偉大な文学を読むにはそれなりに大変さもあって、『源氏物語』も最初から最後まで読み通すというのは根気がいりますね。 でも『源氏物語』を通してウルフのことやその影響力などを推測することは魅力的な考察のように思います。 (火曜日にまた投稿します)