まず今回の大統領選挙は接戦でした。獲得した選挙人の数でこそ民主党の現職オバマ大統領が332人、共和党のロムニー候補が226人と大きな差が付きましたが、これはほとんどの州で1票でも多く獲得した候補がその州に割り当てられた選挙人すべてを取る選挙制度になっているためです。
両候補の全米の得票率ではオバマ氏が51%、ロムニー氏が48%、得票数の差は300万票あまりの小差でした。もちろんこれがそのまま民主党と共和党の支持率というわけではありませんが、民主党の支持が共和党を大きく上回っているのではないことがわかります。
また、今回の議会選挙では、上院も下院も共和党は議席を減らし、民主党が議席を増やしています。それでも下院では共和党の議席数が民主党を上回っていますが、差は縮まりました。
アメリカ議会の下院の選挙結果は、必ずしもその地域の大統領・上院の選挙結果と傾向が一致しません。例えば大接戦で結果判明が全米で最後となったフロリダ州の場合、大統領選挙はわずかの差でオバマ大統領が勝ち、上院議員選挙は得票率で10ポイント以上の差をつけて民主党が勝ちましたが、27議席ある下院では逆に現在判明している26議席中17議席を共和党が獲得しています。
なぜこのようなことになるのかといえば、まず第一にアメリカの有権者は大統領・上院議員・下院議員それぞれ異なる基準で選択していて、民主(共和)党支持者だからといって、必ずしも大統領・上院・下院のすべてで民主(共和)党の候補者に投票するとは限らないからです。例えばフロリダ州のアルファベット順トップのAlacha郡の場合、大統領選挙ではオバマ57%、ロムニー40%、上院選挙では民主党候補63%、共和党候補35%の得票率でいずれもかなりの差で民主>共和ですが、下院選挙では逆に共和党候補49%、民主党候補47%の得票率で小差ながら共和>民主となっています。(このAlacha郡を含む下院の選挙区では共和党候補が勝っています)
さらに複雑なのは、こうしたクロス投票がなく、上院・下院の選挙で有権者全員が同じ政党の候補に投票したと仮定しても、逆転現象が起こりうる場合があるということです。わかりやすい単純化したモデルで説明します。下院が10選挙区の州で得票の総数は各選挙区すべて20万票ずつとします。A党はこのうち田舎の8選挙区でそれぞれ11万票ずつを獲得し、9万票ずつだったB党を破って8議席を獲得しました。B党は都会の2選挙区で支持者が多く、15万票ずつを獲得して、5万票ずつだったA党を破って2議席を獲得しました。この州の下院の議席はA党8議席対B党2議席で、A党の圧勝です。
ところが10選挙区の得票総数では、A党は11万×8+5万×2=98万票 B党は9万×8+15万×2=102万票で B党の方が多くなっています。下院選でA党B党に投票した人が、全員上院選でも同じ党に投票したとすると、上院選ではB党候補が当選することになります。
お礼
詳しい説明を有り難うございました。