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志賀直哉、あるいは、天衣無縫の美

noname#194996の回答

noname#194996
noname#194996
回答No.2

NO・1 です。内容の少ない回答に倍する豊かなお礼を頂き、恥じ入っております。志賀文学への熱い思いが強く感じられる文章でした。 天衣無縫の件、こちらこそ失礼いたしました。手前の思いが皮相的すぎました。まことにそのとおりと思いながら様々学ばせていただきました。ありがとうございました。 他言語が自在ならそれらとすり合わせて自国の文章を本質から考えることでより緻密な分析ができるのですね。羨ましいことです。私などは勝手な自己流の印象批評しかできません。いつかiacta様の本格的な志賀直哉論を読ませていただきたく。 iacta様には及ばないものの、志賀文学は私も一時は結構入り込んだことがあり、文章的にはさほど目立った技巧があるわけでもないのに、とてもマネできそうもない味わいがあることを薄々感じておりました。真似すると言えばむしろ谷崎やら三島由紀夫などのほうが出来そうだと思ったこともあります(おっしゃる縫いあとが見えるということでしょうか)。これもiacta様の分析のとおり、モー津アルト的とも言える氏の作法、文体によるものなのでしょう。 それにしてもなぜ彼のような男まえで背が高く、運動能力も抜群で人柄的にも魅力いっぱい、友人も多い人間が文学などをやりだしたのか?と疑問というより人生の不平等というか不条理を思ったこともありましたね(嗤)。 また馬脚を現しそうですのでこのへんで。

noname#145704
質問者

お礼

どうもありがとうございます。私如きに敬意を払っていただき、恐縮しております。 三島由紀夫などは、まねしようと思えば出来るかもしれないというご意見、そうだなと思いました。努力を積んでいけば、行きつけるかもしれません。構築物としては三島や谷崎は、実に見事ではあります。しかし構築されているということがわかってしまうということが、果たして良いのか?という問題もあるわけです。 しかし縫い目に関する考え方は他にもあって、丸谷才一などは、わざと縫い目を見せてしまいます。いわゆる自作自演をわざわざ読者の目の前に晒してくる仕掛けになっています。二十世紀の文学には、そういうものが多いかもしれません。語り手が作家になるまでを描いた『失われた時を求めて』など。 村上春樹の場合は、ときどき、志賀に似たところがあるように思います。回想が多いのですし、また、一人称をとります。しかしフィクションを混ぜ込んでしまうことで、リアリティとか、人間の核心に迫ろうとする動きを自ら妨げてしまいます。私にとってはうまみを自分で放棄してしまったかに見え、惜しいと思います。しかし、こうした軽さを、楽と言って好む風潮があるな、とは思うのです。人間の核心に切り込んでいくというのなら、初期の村上龍の方かもしれません。もっとも、彼は小説家をやめて、別のことをしていますし、私は『限りなく透明に近いブルー』などは、住む世界が違いすぎて、よくわからなかったのですが、友達が感動していたところを見れば、本当にそれに似た世界があり、主人公らに似た人がいるということなのかもしれません。 さてご回答に戻りますが、志賀の場合、大変恵まれていますね。鉄道をもつ富豪の家に生まれ、書かないでも暮らしていけました。芥川が書けなくなって志賀にアドヴァイスを求めたら、「書けないのなら、書かなければよい」と突っ放した返事を貰い、非常に衝撃だったようです。志賀はそのことをあとあと悔いていましたが、要するに、この人は殿様なのです。殿様が我儘いい放題であるが、ときどき、「あ、私が悪かった」と思いやりがあるというところなのでしょう。「小僧の神様」がテーマとするのは、利権をせしめている代議士の罪悪感です。この代議士の立場は、志賀に重なるのではないか。そう思うと、正直、興ざめしてしまいますね。 清貧で天衣無縫という意味だと、中勘助が、私は好きな作家です。『銀の匙』など、私が言っている天衣無縫の好例かもしれません。少年時代の回想であり、その主人公の人生がよく伝わってきます。「あれほどの彫琢を施して嫌味にならないとは」と漱石が驚嘆したように、私は技巧においては、中勘助の方が漱石より上手いと思ったりする箇所があるです。しかし、中勘助は、テーマの広がりが文明開化を背負った漱石ほどではなかったので、小作家というべきではあるのですが。 やや脱線気味ですね。このように私も到らない者ですから、馬脚とおっしゃらず、どうぞ気楽にお立ち寄りください。

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