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力学初学者のための応力についての疑問
h191224の回答
力学の世界の「力」は、電気の世界の「電流」や、熱の世界の「熱量」と同じような性質があります。 電流の流れや熱量の移動があっても、ある点でのそれらの出入りを合計すると0となります。キルヒホッフの法則です。 逆に見ると、ある点での合計が0になるからといって、電流の流れや熱量の移動がないという結論にはなりません。 力学の世界でも、同様に、ある点での力の出入りを合計すると0となります。 しかし、0になるからといって、力が作用していないという結論にはなりません。 「ある点に作用している、ある方向の力」の値は、基本的には、その点で移動しないように固定してみれば、そこでの反力として測定できます。 作用している力がわかっている場合には、実際に固定する必要はなく、力の作用点を越えるごとに、作用点の力の値を、ベクトル演算で加算していけば、計算できます。 ただし、電流や熱量はスカラー量ですが、力はベクトル量ですので、常に「点を通過する切断面」というものを意識していないと、後々混乱を招きます。 さて、具体的に計算していきましょう。 今の場合、作用している力は次のとおりです。 点Aでの力PA =-1100N、 点Bでの力PB = 600N、 点Cでの力PC = -400N、 点Dでの力PD = 900N、 棒には両端がなく、点Aの左側、点Dの右側にも続いているとしましょう。 この場合の端点は、誰が見ても、点Aと点Dですから、これらのどちらかを基準として、計算を開始します。 今は点Aを基準として、左から順に計算して行ってみましょう。すると次のような結果となります。 ・点Aよりも左の力は、作用領域外なのでそこでの力 FA左 は、FA左 = 0N ・点Aを越えて点Bまでの力 FAB は、 点Aを越えたので、FA左にPAを加算して、FAB = FA左 + PA = 0N - 110N = -1100N 点AB間に作用している力は、1100Nの引張力。 ・点Bを越えて点Cまでの力 FBC は、 点Bを越えたので、FAB左にPBを加算して、FBC = FAB + PB = -1100N + 600 = -500N 点BC間に作用している力は、500Nの引張力。 ・点Cを越えて点Dまでの力 FCD は、 点Cを越えたので、FBC左にPCを加算して、FCD = FBC + PC = -500N - 400 = -900N 点CD間に作用している力は、900Nの引張力。 ・点Dを越えて、さらに右側の力 FD右 は、 点Dを越えたので、FCD左にPDを加算して、FD右 = FCD + PD = -900N + 900 = 0N 以上の計算は、点Dを基準として右側から計算していくこともできます。その場合には、符号が反転しますが、絶対値は同じ値が得られます。 符号の解釈については前に書きましたが、その区間の両端の力が、外向きか内向きか、という点が重要です。 要するに、上記のFABなどの符号だけからでは、何も言えません。 > そうすると、B-C間では0(ゼロ)Nと言えるのでしょうか? ↑ 力の釣り合いという意味ではゼロですが、力は存在し得ます。 > 「作用点を越えるごとに加算」とあるので、A-B間・C-D間を個別に考えると-1100N・+900Nとなるのでしょうか? ↑ AB間が-1100Nなら、CD間は-900Nです。加算していく基準を変えてしまうと、符号が変わるので、混乱を招きます。しかし、その符号は重要ではありません。 「個別に考えると」という表現は、あなたの解釈の仕方を推測すると、NGです。 正しくは、「連続体とみなせる領域において、端から順に加算して行くことを考える」です。 途中の区間だけ個別に考えるのは、引用されたテキストにも、直接的な表現ではありませんが「いけないこと」と書いてあるではありませんか? 領域の端とは、力の作用点を通過する平面で切断した場合、ほかの力の作用点がその平面の片側にしかない、という点です。 (すべての切断平面は、平行でなければなりません。) 力の作用点を通過する平面の向きは、自分で決めることができますが、普通は座標軸あるいは代表的な部材の方向に対して垂直な面を選びます。 面が1つ決まると、これと独立な方向の面が2種類あるので、それらの方向の面に対しても検討する必要があります。 ここでのまっすぐな棒のようなものでは、切断面の向きは、誰がどう見ても、長手方向に垂直な面を選ぶことになって混乱する心配はありませんが、2次元問題、3次元問題になると、要注意です。 なお、領域の端の点についてですが、平面での切断方向によって、最初の切断面では端だったA点が、別の切断面では端にはならない、という状態が生じ得ます。 また、点A~Dが、領域のどちら側に所属するか、などという議論は、数学的には価値があるかも知れませんが、材料力学としては無意味です。これを議論するためには、たとえば、点Bにおける力の作用の仕方まで具体的にわからないとできないからです。そんなことはあまり重要ではありません。
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