因数分解の解き方は、幾つかの基本的なアプローチがあります。式をよく見て、どのアプローチがよいだろうか、と考えて、アプローチで試してみて、うまく解ければOKで、うまく解けない場合は、次に考えられるアプローチを使います。
アプローチとして、別に重要度順ではありませんが、次のような方法があります。
1)基本的な公式を覚えていて、これが使えるかどうか。基本的な公式とは、例えば、(a+b)^2=z^2+2ab+b^2 とか、(a+b)(a-b)=a^2-b^2 と行ったようなごく基本的な公式です。
2)特定の変数、例えばxで、次数順に並べてみて、整理し、それで何か、見通しが立つかどうか。
3)式をよくみて、或る変数と或る変数では、入れ替えて、同じ結果になるかどうか。つまり、入れ替え可能性を考えてみる。
4)特定の変数、例えばxに、1とか-1、2,-2など、それらしいと思った数を入れて、式を整理して見る。
5)簡単な変数で置き換えても問題ない複雑な変数は、置き換えを行う。例えば、x^2=X など。
大体、この五つぐらいがアプローチです。それぞれ、応用の仕方があり、それは、因数分解しなければならない式をよく眺めて、特徴を捉えて、どのアプローチが行けそうかを判断して見ることです。どうしても、思いつかない場合は、2)の特定の変数の次数順に並べてみて、考えるという方法を採ります。
とまれ具体的に、上のアプローチでどう応用できるのかの話をします。
問題1)abc-ab-bc-ca+a+b+c-1
これは、よく式を見てください。a,b,cの三つの変数で、「入れ替え可能」になっていませんか? どの変数を他の変数と入れ替えても、同じ結果になります。これは、上の3)のアプローチです。
入れ替え可能な式を、「対称式」と言います。これは種類が決まっています。例えば、二変数だと、(a+b), ab, (a^2+b^2), (a+x)(b+x) などです。三変数になると、(a+b+c), (ab+bc+ca), (a^2+b^2+c^2), abc, (a+x)(b+x)(c+x) という風に決まったものしかありません。これも一種の公式で、「対称式」の式のパターンです。因数分解する式が、変数について対象になっている場合、必ず、これらの「対称式」が因数として出てきます。そこで、対称式を因数として計算して出し、残りの式の因数分解を考えればよいということになります。
そこで、abc という項が最初に出ていますから、これは三次の式です。三次の対称式は、abc, (a+x)(b+x)(c+x), (a^3+b^3+c^3) の三つしかありません。最後のものでないのは明らかです。最初の abc だとまだ他の項がありますから足りません。すると、(a+x)(b+x)(c+x) の形しかありません。この式は、x^3 が出てきて、これはa,b,cに関係のない数字の項で、これが-1になります。こういうxは、x=-1しかありません。だから、(a-1)(b-1)(c-1) が答えになるのです。確認のためには、この式を展開して、元の式に戻るかどうかを調べればよいでしょう。
また、「対称式」だと気づいた時点で、アプローチの4)の1とか-1とかを代入して見るという方法を使っても構いません。
a=1を代入すると、abc-ab-bc-ca+a+b+c-1=bc-b-bc-c+1+b+c-1=0 になります。これはどういうことかというと、(a-1) という因数が含まれるということなのです。a=-1を代入して、もしゼロになるなら、(a+1)という因数が含まれることになります。
あと、b=1,c=1も代入してみるとゼロになることが分かります。これは、a,b,cで入れ替え可能だったのですから、実は当然の結果なのです。すると、(a-1), (b-1), (c-1) の因数があるということになり、三次の式ですから、これらを掛け合わせた、(a-1)(b-1)(c-1) が因数分解だということになります。
問題2)a^2b+2a-2b+bc-ca-ab^2
これも、「入れ替え」ができないかと考えてみます。aとbで入れ替えができそうな感じがしますが、入れ替えると、「-」になります。この入れ替えると全体が「-」になるというのも重要な特徴なのです。これは、(a-b) または (b-a) が因数として含まれるということなのです。aとbを入れ替えて、「-」が出てくるのは、この式しかないからです。
だから、(a-b) で式を整理することができるのだということが分かります。整理すると、
(a^2)*b+2a-2b+bc-ca-a*(b^2)
=[ab(a-b)+ab^2]+2a-2b+bc-ca-ab^2
ここで、[ab(a-b)+a*b^2] は、最初の (a^2)*b を (a-b) を使って造ってみたのです。すると、余分の a*(b^2) が、後の方の -a*(b^2) と一致して互いに消しあいゼロになることが分かります。つまり式は、
=[ab(a-b)]+2a-2b+bc-ca
この [ ] の後ろのまだ整理していない部分を (a-b) で整理すると
=[ab(a-b)]+[2(a-b)]+[c(b-a)]
=[ab(a-b)]+[2(a-b)]-[c(a-b)]
ここまで計算すると、(a-b) が共通因子だということが、目に見えて確認できます。そこでこの因子でまとめると:
=(a-b){ab+2-c}=(a-b)(ab-c+2)
これが答えです。
問題3)(4x^2-y^2-z^2)^2-4y^2z^2
これは、本当に難しそうです。しかし、いきなり、展開する前に、よく式を見ます。「対称」になっている変数はないかどうかです。すると、yとzが置き換えることができることが分かります。そのことは、確かです。しかし、式が非常に複雑です。そこで、5)の置き換えができるものは単純なものに置き換えるというのを使うと、よく見ると、x^2, y^2, z^2 と、こういう式しかありません。x, y, xy などはないのです。だから、x^2=X, y^2=Y, z^2=Z と思い切って置き換えてしまいます。整理できたら後で、元に戻せばよいのです。こうすると:
=(4x^2-y^2-z^2)^2-4y^2z^2=(4X-Y-Z)^2-4YZ になります。
YとZで対称だということが非常にはっきり分かります。
そこで、式を
=[4X-(Y+Z)]^2 - 4YZ と表現します。
Y, Z の対称性に着目するとこうなります。
ここで、-4YZ という余計な項が出てきます。これをどうやって、因数分解のなかに入れるかです。ここで、X, Y, Z は、本来、x^2, y^2, z^2 だったことを思い起こします。すると、式は:
=[4X-(Y+Z)]^2 - 4(yz)^2
ここで、公式の a^2-b^2=(a+b)(a-b) を使います。すると
=[4X-(Y+Z)+2yz][4X-(Y+Z)-2yz)]
=[4x^2-y^2-z^2+2yz][4x^2-y^2-z^2-2yz]
=[4x^2-(y-z)^2][4x^2-(y+z)^2]
=[{2x+(y-z)}{2x-(y-z)}][{2x+(y+z)}{2x-(y+z)}]
=(2x+y-z)(2x-y+z)(2x+y+z)(2x-y-z)
これで、解けたことになります。
なお、「対称式」というようなものを覚える必要はありません。よく因数分解する式を眺めると、入れ替えができるか、つまり対称かどうか分かるので、どういう風に因数分解を進めるかの手がかりになるのです。
お礼
この場をお借りして、みなさんにお礼申し上げます。 みなさんの、回答を参考にしながら、無事に解く事が出来ました。 ありがとうございまいした。 すべての人にポイントを差し上げたいのですが、申し訳ありません。 気持ちだけ、みなさんに、20ポイント差し上げます。