>飛べる事も何かの役に立っている
前述の通り、現生種のゴキブリの多くはその飛翔能力を完全に無くす方向への進化の発展途上中にあると言えます。彼らのライフスタイルから鑑みると、飛行能力自体がオーバースペックで、それを維持する膨大なコストに見合うだけのメリットを享受できてない状態なのだと思います。事実、もう既に幾つかのゴキブリ種は完全に羽根が無くなっており。国内種でもチャバネゴキブリは完全に飛翔能力が喪失していて、羽根はただ生えているだけの飾り状態になっています。
ゴキブリは世界で約4600種もいるとされていますが、その中で飛行能力を持つ種類の数は正確には判明してはいませんが、欧米などの海外の報告等からも数は多くなく、少なくともゴキブリ界では「飛ぶ」ことは多数派では無い事が分かります(英語やスペイン語などで検索すると「ゴキブリは飛べるのですか?」みたいなweb記事が散見されるので)。仮に質問者が想起する通りに、飛べる事がゴキブリの役に立っているのであれば、少なからず進化の過程での選択圧を受ける事になりますので、現生種でのコギブリの間でも「飛行派」が多数派となっているはずです。
しかしながら現実はそうなってはおらず、日本でも確実に飛行能力を有する事が確認されているのは「クロゴキブリ(外来種)」と「ワモンゴキブリ(外来種)」と「ヤマトゴキブリ」の3種類のみで、日本国内に生息する全69種のゴキブリの中では圧倒的に少数派です。またゴキブリ外来種のほぼ全てが、海を渡って飛来したのでは無く、船便などの荷物に紛れ込んで人為的に持ち込まれた事が分かっています(ネズミやナメクジと同じパターン)。なのでゴキブリにとってすれば、もはや生息域を拡大するためにも飛行能力は必要無いのです。
そもそも野生下の自然界ではゴキブリは森林性の昆虫で、生活圏は地面に積もった落ち葉の中であり、飛ぶための羽根は全く役に立ってないので、あと数万年もしたら全てのゴキブリ種は飛ぶための羽根を無くす方向に進化して行く事でしょう。またオオゴキブリを始めとして、飛行能力を失っているゴキブリで羽根を持っている種の多くは、集団生活している中で互いの羽根を齧って食べてしまう習性がある事が知られています。何故、そんな事をするのかはよく分かっていませんが…少なくとも彼らにとっては飛行能力を失う事よりも優先している事がある証拠の1つでしょう。
飛行能力を失う事により、羽根をはばたかせるための筋肉をその代わりにより素早く走る事が出来る脚の筋力へ割り振る事が出来る様になるため、クロゴキブリなんかは他の昆虫には無い爆速の走破力を手に入れています。これに対抗出来ている昆虫はいません。唯一、昆虫では無いクモ類のアシダガグモと多足類のゲジゲジだけがゴキブリの速度に追い付く事が可能です。彼らの追いつ追われつの進化レースは継続中ですので、やがて日本国内のゴキブリ種は完全に飛ぶ事を止めてさらなる走破力の獲得へ進化して行く事でしょう。
或いはスピードレースから降りて、海外でのゴキブリが多くそうしている様に、森の中へ帰って行きより深く落ち葉の中へ潜る様な方向へ進化して行くのかもしれません。障害物が多い土の中では、ゲジやアシダガグモの走力を活かす事が出来なくなるため、触覚等の感覚器が発達して嗅覚に優れるゴキブリの方が優位に立てる可能性が高まるので。現在の雑食性から完全な植物食性へシフトして、ダンゴムシと似た様なライフスタイルに変化して行くのかもしれません。まあ土中にもそれなりに恐ろしい捕食者は潜んでいますので、そうなったらそうなったでまた何か新たな「武器」を獲得するための進化圧が掛かると思いますが…それはまた別の話ですね。
それとも現生種で世界的に侵略的外来種として大成功している『クロゴキブリ (Periplaneta fuliginosa)』と『ワモンゴキブリ (Periplaneta americana)』だけは、逆に人間と共進化?して行く方向性で再び飛行能力を獲得して、より素早く巧妙に人間の駆除から逃げ切る様に進化するかもしれませんね…(笑)!
お礼
鳥などで飛ばないものがいますね。飛ばない鳥の遺伝子のレベルでの研究などもあるのかなと思いました。ゴキブリでも飛ばない種の遺伝子は飛ぶ種類のものと違うはずですね。