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鴎外の漢字

「おくる」に三種類の漢字(遺・貽・送)を使っていますが、同字反復を避けた以外の意味はありますか。『北条霞亭』。 前に碧山は鯔と鹿角菜とを霞亭に遺つた。然るに鯔は至つて鹿角菜は至らなかつた。鯔は某氏半兵衛の的矢北条氏に貽つたもので、碧山は其一樽を江戸に送致した。霞亭はその鹹に過ぐるを嫌つて、再び送らざらしめむと欲してゐる。

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  • kine-ore
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回答No.2

漢籍の素養について識者は次のように述べています。 「高潮は、明治の漱石、鴎外、露伴、藤村、花袋、啄木に及んでおり、大正と昭和では、荷風、芥川龍之介に、顕著である」(吉川幸次郎「漢文の話」ちくま文庫) 今日、まともに漢字を学ぼうとするなら、上記の人達の作品に倚るにしくはないでしょう。 私などは有島武郎の学習院中等科時代(満14歳に成った直後)の文章の漢字にさえ手を焼いている次第です。といって有島26歳での米大学のM・A(修士)論文の英原文が読めるわけでもありませんが…。 「霞亭に遺つた」…おくってくれた碧山への敬意を交えた「遣(つか)わす」であり「お遣(や)りになった」の意。 「的矢北条氏に貽つた」…「饋(食べ物をおくる)」に由来し、「贈(増に通じ先方を富ませる/おくり与える)」の意。 「再び送らざらしめむ」…「送(物を届ける)」よう、再びの「送達(送り届け)」をお願いする。 参照: 「角川漢和中辞典」

zamazu
質問者

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くわしい解説ありがとうございます。 吉川幸次郎といえば、荷風の次の文章を引用して、 予今日に至り好んで論語孝経の如き書を読むと言はゞ、之を聞くもの必冷嘲して偏僻固陋も亦甚しきものとなすべし、四書五経今日に至りて尚用あるや否やは予の深く考へざる所、予は唯古文を愛す、古文の中其文章冣含蓄あり読むごとに清新の思をなさしむるもの、既に前賢の説けるが如く四書春秋にまさるもんはなし、其主旨教義の如何は措きて問はざるなり。 「達人の見解」だと、どこかで書いていたと思いますが、現代の作家と文章語の土台が違うんでしょうね。 それにしても、左伝ならともかく春秋なんて読めるもんなんでしょうかね?

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  • Ganymede
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回答No.1

「遺つた」……これは「おくった」ではなく「やった」です。「遣(や)る」には「送る」の意味があります(手紙を遣る、など)。 「貽つた」……これは「贈った」と同じ意味、同じ発音、同じ偏です。鴎外はこの作品で「贈つた」を多用していますが、画数が多いので面倒くさくなって、代わりに画数の少ない「貽」を数カ所で使っています。 「再び送らざらしめむと欲してゐる」……これは、その前文の「送致した」と対になっているため、漢字も「送」で揃えています。

zamazu
質問者

お礼

くわしい解説ありがとうございます。 >「遺つた」……これは「おくった」ではなく「やった」です。 手元の辞典を調べてみると「新選漢和辞典」「大漢語林」ともに 「遺」には「おくる」という読み方が記されています。 >その前文の「送致した」と対になっているため、漢字も「送」で揃えています。 なるほどいわれてみればそうですね。 ところで、抽斎や蘭軒はまだ読みどころはありますが、この霞亭の退屈さはどうでしょう(笑)

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