キリスト教を例にとっておられるので、そこに焦点を絞って回答を試みたいと思います。
>何故オナニーは禁じられたのでしょうか。
これは宗教由来というのは、議論の別れるところで時代時代によって温度差があるようです。
「生殖以外の性交は罪」という点ではなく、「(無用な)快楽」そのものが「罪」とされる時代もありました。
有名なものに「七つの罪源」というものがありますが、これは聖書そのもにには言及されていません。
六世紀後半のグレゴリウス1世が定めたというのが定説で、罪の重い順から
「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」
です。
この「七つの罪源」は、時代や場所、文化などによってはかの「モーセの十戒」よりも重要視されます。
重要なのは、キリスト教の「聖典」には一言も言及されていない(修道士が言及することはありましたが)という点ですね。
つまり、宗教が先にあるのではなくて社会・文化が先にあってそれに影響されて宗教に反映されたとも考えられるわけです。(理由は以下に触れます。)
中世の詩聖「ダンテ・アリギエーリ」の著書『神曲』の地獄編でも地獄の「第二圏」に置かれています。(地獄の門>周辺地>アケローン川>第一圏~第九圏まであって深くなるにつれ罪が重く、最下層にはサタンがいます)
さて、社会・文化が先にあってという理由ですが、中世ではキリスト者の世俗化が進み、それに対する反発から中世宗教改革(有名なプロテスタンティズム運動とは別)が起こりました。
その時に活躍したのが世界最古の修道会と言われるベネディクト修道会でした。
彼らのモットーというか戒律は、「清貧」「従順」「貞潔」「定住」というものです。
これらも、いわゆる人間の「欲望」を節制しろって考えですね。
つまり、世俗化して欲に溺れていく宗教者や信者を目の当たりにした真面目な修道士が、自らを戒めると共に社会にもそれを求めたといえます。
その後も、時代によって強弱があるものの「過度な欲望」が道徳的にタブー視されていたようです。
で、「オナニー」という行為そのものに反対を唱えられたのは、結構新しく一六世紀頃からだという説があります。
そして、一九世紀に向かって最高潮を迎えることになります。
ただ、理由は宗教的というよりはもっと複雑な要因が絡んでるようです。
例えば、プロテスタンティズムによる宗教改革とそれによる宗教戦争の頻発や国民国家創設などを背景にしたナショナリズムによるプロパガンダの産物とする意見、医学的見地から人体に有害だとする意見などが提出されています。
>また、この事を深く知るためにはどんな本を読めばいいですか?
以下は参考文献です。
『自慰―抑圧と恐怖の精神史』 (原書房 )
ジャン スタンジェ (著), アンヌ ファン・ネック (著), 稲松 三千野 (翻訳)
『マスタベーションの歴史』 (作品社 )
石川 弘義 (著)
『オナニズムの歴史』 (文庫クセジュ)
ディディエ・ジャック デュシェ (著), Didier‐Jacques Duch´e (原著), 金塚 貞文 (翻訳)
『ヴァギナ 女性器の文化史 』(河出文庫)
キャサリン・ブラックリッジ (著), 藤田 真利子 (翻訳)
『ペニスの文化史』 (作品社 )
マルク ボナール (著), ミシェル シューマン (著), Marc Bonnard (原著), Michel Schouman (原著), 藤田 真利子 (翻訳)
と、こんなところかと思います。
仏教その他の宗教については門外漢なのでご容赦ください。
お礼
ベストアンサー、遅くなって申し訳ありませんでした。 沢山の参考文献、また詳しい説明など本当に助かりました。 何冊か書籍を購入しまして、現在読み進めています。 また何かあれば質問させていただきます。 皆様、ご丁寧な回答くださり本当にありがとうございました!!