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イオン化にかかる時間

101325の回答

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回答No.2

軌道緩和という“現象”が、実際のイオン化過程で起こる訳ではないです。軌道緩和とは、「中性分子の分子軌道を使って計算したイオン化状態の全エネルギーは、電子状態を最適化したイオン化状態の全エネルギーとは違いますよ」ということを、少し気取って言っているだけですので、「軌道緩和にかかる時間」を考えても意味が無いです。あえて答えるなら、どんな時でも一瞬で起こる、つまり、「イオン化しながら電子再配置もする」という答えになります。 凍結軌道近似に基づくクープマンズの定理から求めたイオン化エネルギーが、近似の荒さのわりに実験値に近い値になるのは、ハートリーフォック近似(平均場近似)では電子相関(電子が互いに避け合って分子中を動いていること)を無視しているためです。ふつうは凍結軌道近似による誤差と平均場近似による誤差が互いに相殺する方向に働くので、凍結軌道近似を使うのもあながち悪くない、ということになります。 基底状態の全エネルギーと、電子状態を最適化したイオン化状態の全エネルギーのエネルギー差から計算する方法(ΔSCF法)では、凍結軌道近似による誤差はなくなりますけど、平均場近似による誤差(電子相関を無視したことによる誤差)が残ります。そのため、ΔSCF法で求めたイオン化エネルギーの値は、クープマンズの定理から求めた値と比べて、あまり改善されません。むしろ悪くなることもあります。 ΔSCF法の値があまりよくないのは、上述の通り、電子状態の最適化よりもイオン化の方が圧倒的に速いからではなく、クープマンズの定理で起こっていた、「誤差の相殺」がなくなるためです。じっさい、クープマンズの定理で電子親和力を求めると、凍結軌道近似による誤差と平均場近似による誤差が同じ方向に働くので、全く役に立たない値が得られます。また、軌道緩和と電子相関の両方の効果を計算に含めれば、クープマンズの定理から求めたイオン化エネルギーよりも実験値に近い値が得られることが知られています。 なお、いずれの場合でも、あくまで近似的にしかイオン化エネルギーを求められない、という点は変わらないです。

gedo-syosa
質問者

お礼

回答ありがとうございます。つまり、 ・イオン化には時間というものはなく、瞬間的に起こる。 ・イオン化した瞬間にはすでに電子状態は最適化された状態にある。 ということでいいのでしょうか? とすると、電子相関を含めた手法(MP2やDFT)で基底状態とイオン化状態の全エネルギー差を求めるのが最も信頼できる方法、ということでいいですか? (ちなみに実際に僕が使っているのは、DFTの遷移状態法を用いて、イオン化対象の軌道の占有数を0.5個にした時の軌道エネルギーからイオン化エネルギーを求める方法と、もしくは上記のようにDFTの全エネルギー差から求める方法であり、今の僕の解釈では後者の求め方を信頼しています。) そして、我がままで申し訳ないのですが、もしよろしければこの疑問の発端となった光電子分光の解釈に関する質問(http://oshiete1.goo.ne.jp/qa4673216.html)にもお答え願えると嬉しいです。物理の方の掲示板で質問いたしました。101325様なら答えがわかるかも、と思いまして。。そちらでは基底状態での電子状態とイオン化状態の安定性というものにどういった関係があるのか疑問があり、この質問と関連するものです。

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