>今度、小さい株式会社を設立するにあたり質問事項があります。
会社法では機関設計がある程度自由になり、あらゆるパターンを説明するときりがないので、発行する株式の全てについて譲渡制限がありかつ、取締役会を設置しない会社の場合で説明します。
>この場合、株主総会を行った場合、筆頭株主の独断(単独)で株主総会を開き、取締役の解任や選任を行うことはできるのでしょうか?
取締役の過半数の決定に基づいて、株主総会を招集すべき取締役が株主総会を招集します。したがって、一株主が勝手に株主総会を開くことはできません。しかし、議決権の90パーセントもあれば、株主総会の招集請求権をすることができますし(会社がこれに応じない場合は、裁判所の許可を得て自ら招集をすることができます。)、そもそも定時株主総会は毎年開かなければならないのですから、その場で役員の選任、解任について提案をして容易に可決することができます。
>また、株主の全人数の過半数に達しない場合の議決は無効にできる方法字はありますでしょうか?
取締役の選任、解任は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合にすることが可能。)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(例えば、4分の3等、加重することも可能。)により行われます。株主の数を議決権の要件にすることはできません。議決権(原則として、議決権は1株につき1個です。)ベースで要件を加重することはできます。
決議要件を加重する方法でも良いですが、種類株式を発行するという方法もあります。例えば、A種類株式は、A種類株主総会で取締役を1名、B種類株式は、B種類株主総会で取締役を3名選任することができるという内容にして、筆頭株主がA種類株式、その他の株主がB種類株式を保有すれば、その他の株主は、筆頭株主の関与なくB種類株主総会で取締役3名の選任及び解任ができます。
問題は、筆頭株主がこれに納得するかどうかです。これでは何らメリットがありませんから、例えば、A種類株式は、取締役を1名選任できるほか、B種類に優先して配当を受けられる等の内容にして合意を得られやすくする工夫が必要でしょう。
いずれにせよ、会社法の知識が要求されますので、司法書士に相談されることをお勧めします。
会社法
(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。
2 株主総会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
(株主による招集の請求)
第二百九十七条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合
(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
省略
(業務の執行)
第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
3 前項の場合には、取締役は、次に掲げる事項についての決定を各取締役に委任することができない。
省略
三 第二百九十八条第一項各号(第三百二十五条において準用する場合を含む。)に掲げる事項
省略
(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第三百四十一条 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。
(種類株主総会の権限)
第三百二十一条 種類株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
(異なる種類の株式)
第百八条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。ただし、委員会設置会社及び公開会社は、第九号に掲げる事項についての定めがある種類の株式を発行することができない。
一 剰余金の配当
省略
九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。
省略