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1,4-ジ-t-ブチルベンゼンについて
対称性をもつ1,4-ジ-t-ブチルベンゼンのベンゼン環の4個のH原子が低温で磁気的に非等価となるのは何故でしょうか? 芳香環をもつものは3-bond以内のH原子との分裂を起こすからでしょうか?
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> 低温で磁気的に非等価となるのは何故でしょうか? 中心原子の炭素はsp3混成(四面体型)であって円柱形ではないので、 1-位に隣接する2-位の水素と6-位の水素とは、本来は等価になるとは 限りません。 (もちろん、位置によっては等価になる場合もありますが、そこから少し ずれると等価ではなくなりますよね、ということ) a)この場合は左右のHは等価; C | H―C―○―C―H ←ベンゼン環(○はt-ブチル基の中心炭素) / \ C C b)この場合は左右のHは非等価; C / H―CC=○―C―H \ C (「CC」はベンゼン環の炭素とt-ブチル基の炭素が重なって見えていると 思って下さい(汗)) にもかかわらず、実際のNMR測定で等価になるのは、t-ブチル基と フェニル基との間の結合が自由回転することによって、実質的に円柱と 同等とみなせる状態になっているからです。 一方、この自由回転は熱振動によっていますから、ある程度まで低温に すると、立体障害の大きいt-ブチル基のようなものでは、中心原子以外の 炭素、或いはそれと結合する水素が、ベンゼン環の平面と重なるような 位置になったところを越えるには、熱振動のエネルギーが足りなくなって しまうため、自由回転ができなくなります。 (風車の羽根の間につっかえ棒をしたように、往復するだけになる) このため、1-位については「a)」で示したような形、つまりベンゼン環の上側 には炭素が1つ、下側には炭素が2つ、という状態が固定されます。 ただ、この時点では、回転はできなくても往復は可能なので、左右のHは 平均すると等価になります。 しかし、ご質問の物質は1-位だけでなく4-位にもt-ブチル基が存在するので、 ベンゼン環に対して、 1)「上側に炭素が4つ/下側に炭素が2つ」の場合、 2)「上側・下側とも炭素が3つ」の場合 とがありえます。 この結果、NMRで見ると、常温下では等価だった4つのHは、低温下になると シグナルが分裂する、ということだと思います。 (このときのシグナルの分裂は、1分子内での磁気的環境によるものではなく、 上記「1)」状態の分子と「2)」状態の分子のシグナルが混ざることによる、と)