• ベストアンサー

戦後の文学を勉強するには

ghostbusterの回答

回答No.5

お礼欄にありました個別の作家について回答します。 あげていらっしゃる三人の作家の方は、いずれも「文学史」の文脈で扱うのはむずかしい作家である、といわざるをえません。 ですから、調べるとしたら、個々の作家研究という形になると思います。 まず、この三人のなかで「大衆文学」の作家という分類にあてはまるのは、山本周五郎だけでしょう。わたしはこの方面に関する包括的な研究書については知識がありません。 山本周五郎に関しては、とくに個人史という側面から木村久邇典がまとまったものを数多く(『山本周五郎 横浜時代』『人間 山本周五郎』など。内容は未見のため不明です)出していたように思います。奥野健男にも『山本周五郎』という評論があります。 加えて、昨今の読書感想文のような「あとがき」とはちがって、新潮文庫版の山本周五郎の個々の作品の巻末解説は、木村久邇典始め、『青べか物語』では平野謙、『虚空遍歴』では奥野健男など、かなり充実した内容になっています。それを丹念に集めていくだけでも、ある程度の知識は得られることと思います。 つぎ、幸田文ですが、この人は、作家を志して文学者の道を歩んでいった人ではなく、晩年の露伴に寄り添い、父・露伴の身辺や言行を記すことから書き手となっていった人です。したがって、文学史的に「だれの影響を受けた」「何の系列に属する」という評価がしにくい人である(影響を受けたというと、露伴、ということになるのでしょうが、露伴自身がまた文学史的に位置づけにくい人でもあります)。ほとんどの文学史のなかでもふれられていないと思います。 関連書というと『幸田文の世界』(金井景子・小林裕子・佐藤健一・藤本寿彦編 翰林書房)ぐらいしか知りませんが、これはエッセイあり、批評・論文あり、といった性格のもので、まとまった論考ではありません。 ただ、近年、幸田文はその文章・文体について注目されているのではないか、という印象を受けます。 おそらくその嚆矢となったのは、ドメニコ・ラガナの『日本語とわたし』(文藝春秋社)ではないかと思うのですが(これは私見)、この本の中で、イタリア系アルゼンチン人であるラガナが日本語で幸田文の『流れる』を読もうとする。ところが「このうちに相違ないが、どこからはいっていいか、勝手口がなかった」という文章が理解できなくて、悪戦苦闘するさまを描いた部分があるのです。 わたしは日本語・日本語論のなかで、『日本語とわたし』のこの部分がさまざまな本の中で引用されているのを、軽く十回は目にしました。そのくらい、主語を持たない日本語の特殊性を端的に示す文章と言える。 ほかにも擬態語の使い方、描写を含め、この方面からのアプローチは多いのではないかと思います。 吉村昭に関してはまとまったものを読んでいるわけではないので不明です。 以上、参考まで。

straysheep0722
質問者

お礼

丁寧な回答ありがとうございます。 図書館にアクセスしにくい状況にあるので だいたいの事情を知りたかったのですが、 おおまかに分かりました。 ドメニコ・ラガナの話はたいへん面白く読みました。 どうもありがとうございます。

関連するQ&A

  • 戦後の文学について

    皆さん、こんにちは。 日本文学についての問題に出会って、上手に答えられません、どうか助けてくれませんか。 戦後の文学流派がすなわち「戦後派」と言えますか。 戦後の有名な作家や作品が日本人(の生活、思想)にどんな影響をもたらしたのでしょうか。例をあげてくれたら助かります~~~

  • SF文学史について

    最近SFに興味がわいて読み始めました。興味のある作家なども出てきましたが いまいちSFの歴史上の各作家の位置みたいなのがよくわからなくて困っています ネットでそういったSF文学史をまとめたサイトか、なかったら参考書のようなものを紹介してくれると嬉しいです

  • 面白い純文学

    こんばんは。 質問の定義があいまいなのですが、私が不案内なためです。お許しください。 最近趣味で書いている小説が、行き詰っています。 何か面白い本を読んで、モチベーションを上げていきたいので、 このような質問をしてみました。 好きな作家は吉行淳之介、サリンジャーです。 児童文学や詩も時々読みます。 ライトノベルや大衆文学は読まないので、それ以外の文学でお願いします。 お手を煩わせてしまいますが、 その小説のどういう所が面白かったのかを書いてくださると参考になります。 よろしくお願いします。

  • 日本の有名な文学の雑誌

    日本語を勉強中の中国人です。日本の有名な文学の雑誌(「文学誌」と言うでしょうか)はどんなものがあるでしょうか。いろいろな作家の文章が集まっているような内容のものです。 また、質問文に不自然な表現がありましたら、それも教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

  • ルビのふってある文学史の本はあるか?!

    今、近代文学史の勉強をしているのですが、 作家や作品の漢字が難しくて読めません。 覚えるのに、やっぱりルビはあった方が印象にのこりますし、 けれどほとんどの本がルビがふっていません。 時々振っているくらいで… ルビが多く振っている文学史の本はあるでしょうか? 近代の本が希望です。 ご存知の方、宜しくお願いします。

  • 国文学の卒論

    文学部国文科です。 卒論で何を書けばいいか悩んでいます。 本は大好きだし文章を書くのも好きです。 でも好きな作家、作品について論文を書けと言われると 何を書いていいのかわかりません。 文学評論も沢山読みましたがあまりピンときません。 だから何?っと思ってしまうのです。 こういう流れで影響を受けこのような思いで書いた。 と聞かされても関心が湧かないのです。 感想や類推しかでて来ないのです。 要するに文学に対して稚拙な頭でしょうか、、 とにかく何かを書かなければいけないので アドバイス下さい。

  • 文学史事始

    文学史事始 中学高校で文学史の授業を受けました。この文学史の授業はいつごろから始まり、作家はどんな基準で選ばれているのでしょうか? 漢詩は江戸時代は俳句よりも高尚なものとされていたはずですが資料に載っている漢詩は懐風藻のみ。江戸時代まで他にも詩集はあるはずですが取り上げられていません。 短歌俳句は正岡子規、斉藤茂吉、高浜虚子などかなり取り上げられているのに比べ、詩は室生犀星、萩原朔太郎、北原白秋、佐藤春夫ぐらい。西條八十は出てきませんでした。 吉行エイスケのダダイストなんて出てきません。 うろおぼえですが、川端康成あたりまでは新思潮派などと分類されていたようです。でも戦後デビューの作家は少なくとも授業では○○派、○○主義なる分類はありませんでした。この手の分類は廃れたのでしょうか?

  • 文学?表象学?(学部専攻)

    閲覧ありがとうございます。 (度々の質問申し訳ありません…) そろそろ進路を決定しないといけない時期なのですが、自分の勉強したい内容が文学であっているのか悩んでおります。 煮詰めてはみたものの以前頼りないので、お知恵を頂きたくこちらで質問させて戴きました。 抽象的で、はっきりと説明出来ないのですが… ・ものや出来事がどういう風に表現されているか、どう思われているのか (例えば「花」や「教師」や「近親相姦」はどういう考え方をされていて、文学の中でどういう意味を持つのか、) ・その逆で、ある感情や現象を表す為に、どういうパターンやものが使われているか (例えば「はかない」や「青春」や「やるせない」を表す為にどんなものをどう書いているか?) ということを調べたり、最終的には書物全般を使って人間の概念や思想(のようなもの)(「はかない」とはどういう感情なのか?や「日本にとってのフランスのイメージは?」等々)を学ぶようなことがしたいです。 本が好きだったこともあり、書物全般なら教授して貰えるかな、と日本文学を希望したのですが、 「表象学」「美学」という学問があることを知り、そちらの方が近いのかな?と悩んでいます。 大学の学部内の授業ですと、「表象学」や「美学」方面の学部は美術や映画等のアート方面を研究している人が多いという印象を受けます。 一方文学専攻の学部は、一人の作家や時代で区切ってその作家や時代について深く研究している人が多い印象があります。 上であげたようなことって、学問として成り立ちますか? また、日本文学専攻で、上のようなことを勉強していくことは可能でしょうか? 曖昧な質問で、大変申し訳ありません。「文学研究」とはずれているような気がしていて… 私が勉強したいことが何分野に位置するのか、またこのような希望は文学部にふさわしいものであるかどうかをお聞きしたいです。 お時間のある方、何卒よろしくお願い致します。

  • 日本文学、日本語学の勉強方法

    大学の文学部文学科の総合型選抜を受けるのですが、出願時に1枚レポート、試験当日に1枚小論文を書かされ、その後、出願時に提出したレポートに関する口頭試問があるようです。 試験要項には「レポート」「日本文学または日本語学に関する小論文」とあるだけで、過去問も非公開で、どのような勉強をしたらいいのかわかりません。 レポートや小論文の基本的な形といいますか書き方は理解しているのですが、日本文学や日本語学の勉強をしておかないと、特に小論文は試験当日にいきなり出題されるので、最悪何も書けないなんてことになりかねませんよね。 日本文学や日本語学というのは、どのような勉強をしたらいいのですか?おすすめの本などありましたらそちらも教えて頂きたいです。

  • 日本文学や日本語学の勉強法

    大学の文学部文学科の総合型選抜を受けるのですが、出願時に1枚レポート、試験当日に1枚小論文を書かされ、その後、出願時に提出したレポートに関する口頭試問があるようです。 試験要項には「レポート」「日本文学または日本語学に関する小論文」とあるだけで、過去問も非公開で、どのような勉強をしたらいいのかわかりません。 レポートや小論文の基本的な形といいますか書き方は理解しているのですが、日本文学や日本語学の勉強をしておかないと、特に小論文は試験当日にいきなり出題されるので、最悪何も書けないなんてことになりかねませんよね。 日本文学や日本語学というのは、どのような勉強をしたらいいのですか?おすすめの本などありましたらぜひそちらも教えて頂きたいです。