• ベストアンサー

戦後の文学を勉強するには

戦後から1960年代の日本文学について 勉強したいと思っています。 文学史的な概論や時代状況を勉強するに、 適した参考書を教えてください。 それとはべつに個別で 幸田文の位置づけについて知りたいのですが、 なにか良い本はないでしょうか。 どのような作家に影響を受けたのか、 などを知りたいです。 よろしくお願いします。

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
  • hyoutou
  • ベストアンサー率57% (12/21)
回答No.6

#4です。 たしかに、個別の作家について調べていく事のなかでも、その作家を取り巻く文学史的状況を把握していくという事は幅広い知識を要求されるので、大変かと思いますが、それでも作家が定まっているのであれば、それら作家のの作家論をいくつか読んで、そこに出てくる用語、文献を足がかりに根気良く調べていくのがよいかと思います。一応わかる範囲でアドバイスさせていただきます。 幸田文については、#5の方が詳しく説明されている通り、文壇の大きな流れからは少し離れていると思います。 吉村昭と山本周五郎についてですが、これは、 >戦後から1960年代の日本文学 という括りで調べるのは大いに意義のあることかと思われます。 というのも「戦後から1960年代の日本文学」の歴史とは、一面で言えば、日本経済の発展に伴って出版コマーシャリズムが文学において勝利を収め、「純文学」のあり方が大きく変質した歴史であると言え、彼らはこの流れの中で文学的変遷を経ていっているからです。 戦後すぐの文学は、戦前からの流れを受け、総合雑誌(「文藝春秋」「世界」「改造」「中央公論」など)、新興出版社の文芸雑誌(「人間」「風雪」「群像」「個性」など)、戦前から続く文芸雑誌(「新潮」「文學界」「文藝」など)が純文学作品を掲載し、再び文藝復興の様相を呈していました。 一方で、探偵小説や、時代小説は、それぞれ探偵小説雑誌、講談雑誌などでまさに大衆文学として読者に受容されていました。戦前からこの時期までは大衆文学と純文学は棲み分けがなされていたと言えます。 しかし、1946年に創刊された「小説新潮」、および1947年に創刊された「日本小説」が、旧来の自然主義文学とはことなる、強いストーリー性を持った作品を多く掲載し、成功を収めます。これが、いわゆる「中間小説」です。当初「文藝春秋」の別冊として講談雑誌的性格をもって始められた「オール讀物」もこれに追随し中間小説誌となります。 この中間小説誌が、大衆文学作家を多く起用し、消費者に広く受け入れられ、朝鮮特需を背景に出版業界の消費拡大を牽引しました(1950年代初頭)。そうして、大衆文学が「売れる」文学となる一方で、純文学は徐々に「売れない」文学となります。(あるいは、「中間小説」という言葉に象徴されるように、大衆文学と純文学のボーダーレス化が指摘されるようになります。)これは、「週刊新潮」などの週刊誌の創刊によってさらに加速することとなりました。 一方、1956年に芥川賞を受賞した石原慎太郎の「太陽の季節」が一代ブームとなったのを受けて、純文学内部でさえ、「売れる」「売れない」という基準がはっきりとするようになっていきます。 このような中で、自然主義的・私小説的な「売れない」文学のシェアは制限され、「文学者」「文藝首都」あるいは「早稲田文学」「三田文学」といった非商業的文芸雑誌や同人誌が、純文学者の活動の場として機能するようになります。同人誌の隆盛(勿論非商業的な隆盛ですが)は1970年代前半まで続きますが、オイルショックによる紙不足の影響を受け、1970年代に大きな打撃をうけることとなるのです。 前置きが長くなってしまいましたが、吉村昭に関しては、1966年の「戦艦武蔵」が出世作と言われますが、それ以前には、上記「文学者」において長く同人活動(純文学活動)を続けています。「文学者」には奥さんの津村節子、瀬戸内晴美(寂聴)などがおり、この3人は、小田仁次郎の「Z」という同人誌にも参加しています。特に先日亡くなられたばかりですので、新しい文献で回顧録、追悼談のようなものが手に入るかと思います。(「文學界」の追悼特集が充実していたかと記憶しています。) また、山本周五郎は、戦前から活動していましたが、初期はやはり、講談雑誌を中心とする大衆文学雑誌での活動が長かったかと思います。その後、中間小説雑誌の隆盛に乗って人気作家となっていく意味では上記に挙げた流れの典型と言えます。こういった観点からは、十返肇の「「文壇」崩壊論」(参考URL)に具体的例として山本周五郎の名前があげられています。 蛇足かもしれませんが、これ以降(1970年代以降)の純文学の更なる変質については柄谷行人の言うような左翼の衰退による文学の役割の終わり(近代文学の終わり)ではなく、あくまでオイルショックから立ち直りバブル景気を迎える事によって出版コマーシャリズムがさらに加速したという流れが重要ではないかと私は考えます。

参考URL:
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/study/togaerihajime.html
straysheep0722
質問者

お礼

返答ありがとうございました。 簡便な流れがつかめて 調査の出発点として 参考になりました。

その他の回答 (6)

  • hyoutou
  • ベストアンサー率57% (12/21)
回答No.7

#4です。連続で申し訳ありませんが、訂正です。 >こういった観点からは、十返肇の「「文壇」崩壊論」(参考URL)に具体的例として山本周五郎の名前があげられています。 確認したら、“山本周五郎”の名が出てくるのは「批評家の空転」の方でした(参考URL同じ)。失礼しました。

参考URL:
http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/study/togaerihajime.html
回答No.5

お礼欄にありました個別の作家について回答します。 あげていらっしゃる三人の作家の方は、いずれも「文学史」の文脈で扱うのはむずかしい作家である、といわざるをえません。 ですから、調べるとしたら、個々の作家研究という形になると思います。 まず、この三人のなかで「大衆文学」の作家という分類にあてはまるのは、山本周五郎だけでしょう。わたしはこの方面に関する包括的な研究書については知識がありません。 山本周五郎に関しては、とくに個人史という側面から木村久邇典がまとまったものを数多く(『山本周五郎 横浜時代』『人間 山本周五郎』など。内容は未見のため不明です)出していたように思います。奥野健男にも『山本周五郎』という評論があります。 加えて、昨今の読書感想文のような「あとがき」とはちがって、新潮文庫版の山本周五郎の個々の作品の巻末解説は、木村久邇典始め、『青べか物語』では平野謙、『虚空遍歴』では奥野健男など、かなり充実した内容になっています。それを丹念に集めていくだけでも、ある程度の知識は得られることと思います。 つぎ、幸田文ですが、この人は、作家を志して文学者の道を歩んでいった人ではなく、晩年の露伴に寄り添い、父・露伴の身辺や言行を記すことから書き手となっていった人です。したがって、文学史的に「だれの影響を受けた」「何の系列に属する」という評価がしにくい人である(影響を受けたというと、露伴、ということになるのでしょうが、露伴自身がまた文学史的に位置づけにくい人でもあります)。ほとんどの文学史のなかでもふれられていないと思います。 関連書というと『幸田文の世界』(金井景子・小林裕子・佐藤健一・藤本寿彦編 翰林書房)ぐらいしか知りませんが、これはエッセイあり、批評・論文あり、といった性格のもので、まとまった論考ではありません。 ただ、近年、幸田文はその文章・文体について注目されているのではないか、という印象を受けます。 おそらくその嚆矢となったのは、ドメニコ・ラガナの『日本語とわたし』(文藝春秋社)ではないかと思うのですが(これは私見)、この本の中で、イタリア系アルゼンチン人であるラガナが日本語で幸田文の『流れる』を読もうとする。ところが「このうちに相違ないが、どこからはいっていいか、勝手口がなかった」という文章が理解できなくて、悪戦苦闘するさまを描いた部分があるのです。 わたしは日本語・日本語論のなかで、『日本語とわたし』のこの部分がさまざまな本の中で引用されているのを、軽く十回は目にしました。そのくらい、主語を持たない日本語の特殊性を端的に示す文章と言える。 ほかにも擬態語の使い方、描写を含め、この方面からのアプローチは多いのではないかと思います。 吉村昭に関してはまとまったものを読んでいるわけではないので不明です。 以上、参考まで。

straysheep0722
質問者

お礼

丁寧な回答ありがとうございます。 図書館にアクセスしにくい状況にあるので だいたいの事情を知りたかったのですが、 おおまかに分かりました。 ドメニコ・ラガナの話はたいへん面白く読みました。 どうもありがとうございます。

  • hyoutou
  • ベストアンサー率57% (12/21)
回答No.4

平野謙には『昭和文学史』(1963 筑摩書房)、『わが戦後文学史』(1972 講談社)がありますね。 基本的には、「近代文学」と「新日本文学」という二つの雑誌に拠った人々がいて、アプレゲール、戦後派(第二次)、第三の新人と呼ばれた人々がいて、短かったけど無頼派とか新戯作派とかよばれた人々がいて、鎌倉文士を中心とする古参の人々がいて、そうして大衆文学の隆盛があるみたいな事が“主流”の戦後文学史で、そのへんは、実は『日本近代文学大事典』(1977 講談社)を使って、個別に調べていったり、「戦後文学」の項目を引いたり、4巻(新聞・雑誌編)の戦後文学に関わるものを眺めていったりしたほうが、1冊の「文学史」を読むよりも、実は勉強になるのかなぁと思います。 その上で、#1や#3の方が挙げられている近代文学派の人や、あるいは吉田精一や中村光夫などの書いた「文学史」を読んでみたりすれば“主流”は押さえられるかと思います。 でも、もしそういう“主流”の歴史を一通り勉強されたら、以下のような本も読んでみてください。 野口冨士男『感触的昭和文壇史』(1986 文藝春秋) 高見順『昭和文学盛衰史』(1958 文藝春秋) 和田芳恵『ひとつの文壇史』(1967 新潮社) 巌谷大四『瓦板戦後文壇史』(1980 時事通信社) 作家や、評論家だけではなく、編集者や、同人誌の人々が支えていたのが戦後文学であるというのも、知っておくべきかな、と思います。特に上二つは必読かと。

straysheep0722
質問者

お礼

回答ありがとうございます。 戦後文学のなかでも、とりわけ以下の3人について 調べる必要があります。 幸田文、吉村昭、山田周五郎。 いただいた回答の中では大衆文学の範疇に入る のか(勘ですけれど)、と思います。 大衆文学に絞ったような参考書をご存知でしたら 教えてください。

  • luune21
  • ベストアンサー率45% (747/1633)
回答No.3

戦後文学というと、やっぱり、雑誌『近代文学』の人たちのものが一番でしょうね。 『近代文学』といえば平野謙、本多秋五、埴谷雄高、荒正人、佐々木基一、小田切秀雄・山室静ですが、そのうちの平野、本多、荒、佐々木のものが著作も多く内容も濃いようです。 本多秋五のは(『物語戦後文学史』は私も名著だと思っています)すでに出ていますので、私からは平野謙を。 平野謙全集第十巻『文藝時評I』新潮社 これは、昭和21年から昭和36年までの文芸時評のすべてをまとめたもので、時評なのでナマナマしいのですが、逆に戦後文学を時系列的に眺めやすくなるものと思います。

straysheep0722
質問者

お礼

回答ありがとうございます。 平野謙が時評のなかで幸田文に ついて触れているかどうか、 もしご存知でしたら教えてください。

回答No.2

No.1ですが、著者の名前の表記を間違えました。「本多秋五」が正しいです。

回答No.1

戦後文学については下記の本が名著の誉れ高く、これをお読みになるのがよいと思うのですが、残念ながら版元品切れになっています。図書館で探すか、書店の棚、古本屋で探すしかないようですね。 本田秋五著「物語戦後文学史」全3冊(岩波現代文庫) http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/26/4/260106+.html

straysheep0722
質問者

お礼

回答ありがとうございます。 参考になりました。

関連するQ&A

  • 戦後の文学について

    皆さん、こんにちは。 日本文学についての問題に出会って、上手に答えられません、どうか助けてくれませんか。 戦後の文学流派がすなわち「戦後派」と言えますか。 戦後の有名な作家や作品が日本人(の生活、思想)にどんな影響をもたらしたのでしょうか。例をあげてくれたら助かります~~~

  • SF文学史について

    最近SFに興味がわいて読み始めました。興味のある作家なども出てきましたが いまいちSFの歴史上の各作家の位置みたいなのがよくわからなくて困っています ネットでそういったSF文学史をまとめたサイトか、なかったら参考書のようなものを紹介してくれると嬉しいです

  • 面白い純文学

    こんばんは。 質問の定義があいまいなのですが、私が不案内なためです。お許しください。 最近趣味で書いている小説が、行き詰っています。 何か面白い本を読んで、モチベーションを上げていきたいので、 このような質問をしてみました。 好きな作家は吉行淳之介、サリンジャーです。 児童文学や詩も時々読みます。 ライトノベルや大衆文学は読まないので、それ以外の文学でお願いします。 お手を煩わせてしまいますが、 その小説のどういう所が面白かったのかを書いてくださると参考になります。 よろしくお願いします。

  • 日本の有名な文学の雑誌

    日本語を勉強中の中国人です。日本の有名な文学の雑誌(「文学誌」と言うでしょうか)はどんなものがあるでしょうか。いろいろな作家の文章が集まっているような内容のものです。 また、質問文に不自然な表現がありましたら、それも教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

  • ルビのふってある文学史の本はあるか?!

    今、近代文学史の勉強をしているのですが、 作家や作品の漢字が難しくて読めません。 覚えるのに、やっぱりルビはあった方が印象にのこりますし、 けれどほとんどの本がルビがふっていません。 時々振っているくらいで… ルビが多く振っている文学史の本はあるでしょうか? 近代の本が希望です。 ご存知の方、宜しくお願いします。

  • 国文学の卒論

    文学部国文科です。 卒論で何を書けばいいか悩んでいます。 本は大好きだし文章を書くのも好きです。 でも好きな作家、作品について論文を書けと言われると 何を書いていいのかわかりません。 文学評論も沢山読みましたがあまりピンときません。 だから何?っと思ってしまうのです。 こういう流れで影響を受けこのような思いで書いた。 と聞かされても関心が湧かないのです。 感想や類推しかでて来ないのです。 要するに文学に対して稚拙な頭でしょうか、、 とにかく何かを書かなければいけないので アドバイス下さい。

  • 文学史事始

    文学史事始 中学高校で文学史の授業を受けました。この文学史の授業はいつごろから始まり、作家はどんな基準で選ばれているのでしょうか? 漢詩は江戸時代は俳句よりも高尚なものとされていたはずですが資料に載っている漢詩は懐風藻のみ。江戸時代まで他にも詩集はあるはずですが取り上げられていません。 短歌俳句は正岡子規、斉藤茂吉、高浜虚子などかなり取り上げられているのに比べ、詩は室生犀星、萩原朔太郎、北原白秋、佐藤春夫ぐらい。西條八十は出てきませんでした。 吉行エイスケのダダイストなんて出てきません。 うろおぼえですが、川端康成あたりまでは新思潮派などと分類されていたようです。でも戦後デビューの作家は少なくとも授業では○○派、○○主義なる分類はありませんでした。この手の分類は廃れたのでしょうか?

  • 文学?表象学?(学部専攻)

    閲覧ありがとうございます。 (度々の質問申し訳ありません…) そろそろ進路を決定しないといけない時期なのですが、自分の勉強したい内容が文学であっているのか悩んでおります。 煮詰めてはみたものの以前頼りないので、お知恵を頂きたくこちらで質問させて戴きました。 抽象的で、はっきりと説明出来ないのですが… ・ものや出来事がどういう風に表現されているか、どう思われているのか (例えば「花」や「教師」や「近親相姦」はどういう考え方をされていて、文学の中でどういう意味を持つのか、) ・その逆で、ある感情や現象を表す為に、どういうパターンやものが使われているか (例えば「はかない」や「青春」や「やるせない」を表す為にどんなものをどう書いているか?) ということを調べたり、最終的には書物全般を使って人間の概念や思想(のようなもの)(「はかない」とはどういう感情なのか?や「日本にとってのフランスのイメージは?」等々)を学ぶようなことがしたいです。 本が好きだったこともあり、書物全般なら教授して貰えるかな、と日本文学を希望したのですが、 「表象学」「美学」という学問があることを知り、そちらの方が近いのかな?と悩んでいます。 大学の学部内の授業ですと、「表象学」や「美学」方面の学部は美術や映画等のアート方面を研究している人が多いという印象を受けます。 一方文学専攻の学部は、一人の作家や時代で区切ってその作家や時代について深く研究している人が多い印象があります。 上であげたようなことって、学問として成り立ちますか? また、日本文学専攻で、上のようなことを勉強していくことは可能でしょうか? 曖昧な質問で、大変申し訳ありません。「文学研究」とはずれているような気がしていて… 私が勉強したいことが何分野に位置するのか、またこのような希望は文学部にふさわしいものであるかどうかをお聞きしたいです。 お時間のある方、何卒よろしくお願い致します。

  • 日本文学、日本語学の勉強方法

    大学の文学部文学科の総合型選抜を受けるのですが、出願時に1枚レポート、試験当日に1枚小論文を書かされ、その後、出願時に提出したレポートに関する口頭試問があるようです。 試験要項には「レポート」「日本文学または日本語学に関する小論文」とあるだけで、過去問も非公開で、どのような勉強をしたらいいのかわかりません。 レポートや小論文の基本的な形といいますか書き方は理解しているのですが、日本文学や日本語学の勉強をしておかないと、特に小論文は試験当日にいきなり出題されるので、最悪何も書けないなんてことになりかねませんよね。 日本文学や日本語学というのは、どのような勉強をしたらいいのですか?おすすめの本などありましたらそちらも教えて頂きたいです。

  • 日本文学や日本語学の勉強法

    大学の文学部文学科の総合型選抜を受けるのですが、出願時に1枚レポート、試験当日に1枚小論文を書かされ、その後、出願時に提出したレポートに関する口頭試問があるようです。 試験要項には「レポート」「日本文学または日本語学に関する小論文」とあるだけで、過去問も非公開で、どのような勉強をしたらいいのかわかりません。 レポートや小論文の基本的な形といいますか書き方は理解しているのですが、日本文学や日本語学の勉強をしておかないと、特に小論文は試験当日にいきなり出題されるので、最悪何も書けないなんてことになりかねませんよね。 日本文学や日本語学というのは、どのような勉強をしたらいいのですか?おすすめの本などありましたらぜひそちらも教えて頂きたいです。