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アポリネールとシュールレアリズムについて

当時の時代背景などと一緒に教えてください。 彼の経歴など含めて、作品の制作秘話など、知っている方教えて下さい。

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  • neil_2112
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回答No.1

アポリネールについては詳しくありませんので投稿を控えていたのですが、回答が出てこないようですので、シュルレアリスムの方を中心に回答させて頂きます。 ご承知と思いますが、シュルレアリスムという言葉はアポリネールの作とされていますが、その実態はアンドレ・ブルトンに始まります。1924年に「シュルレアリスム宣言・溶ける魚」(岩波文庫にあります)が書かれたことが実質的なスタートになりました。 彼は自動記述で知られています。 自動記述というのは、書く内容を何も準備せずに紙に向かい、まさに考えるよりも先にペンに任せてどんどんと書いていくというものです。もう書けないというスピードまで早めていく、という行為を何度もやっているうちに、ブルトンは精神的な危険を迎えるようになり、狂気に近い体験をします。 一方で書かれた内容の方はというと、主語があって過去形で、といった普通の文法からだんだん離れていき、まず主語が消え、「私」という場の管理者が消えていきます。そして現在形でただ脈絡なく物事が突発的に起こる、という内容になっていったのです。 自動記述という書き方で彼が感じたことは、私が過去を整理し考えて書く、という普通の書き方でなく、自分でない誰かによって書かれるように表される現実があるということです。彼は、「現実」の新しい表現のし方がそこにあるのではないか、と考えるようになりました。 私たちは、既存の価値観や言葉の構造、社会の秩序のなかにたって世界の意味を理解しています。そういう意味で、私たちは目の前の「現実」を「現実」と思いこまされている、とも言えます。いわば、既にできあがったものの見方だけを受け入れているわけです。 しかし、それはあくまでも社会で共有されている「主観」を通した現実であって、純粋な「客体」としての世界ではない、とも言えるわけです。ブルトンにしてみれば、自動記述は世界を「主観的」に見るのでなく、純粋に「客観的」に捉えようとした時の方法論が「自動記述」だったのです。 ですから、よく言われるように、シュルレアリスムとは「個人の主観的な幻想世界を描いたもの」ではなくて、その成り立ちとしては「主観を排してモノそのものを表そう」としたものです。どこかこの「現実」を離れたところに別世界や異世界があるのでなく、我々が思い込んでいる「現実」と地続きにある別の「現実」を客体として純粋に取り出してこよう、としたのがシュルレアリスムの精神です。 彼がこういう自動記述という実験を行い始めたのはそれに先立つ1919年頃のことです。それまでからポール・ヴァレリーやアポリネールといった年上世代の人たちと親交があって、将来も約束されていたし、詩人としてやっていくつもりもあったようですが、第一次世界大戦という未曾有の惨事を経ていろいろな価値観が混乱していたことで、彼は書くということに非常に懐疑的になっていたということがありました。 もちろん、忘れてはならない背景にフロイトの思想があります。19世紀後半に彼が登場して、「無意識」を世に知らしめたことはシュルレアリスムにもものすごい影響を与えています。彼によって、人間は自分の理性の光が届く範囲だけから成り立っているのではなくて、無意識という大きな暗闇を抱えた存在であること、言いかえればもはや人間は「理性によって自分を統御する主人」ではないのだ、ということが知られてしまったことは、シュルレアリスムの大きな原動力になったのです。 アポリネールが「シュルレアリスム」の名付け親であることは知られています。(確か自作品の舞台の美術を評した時の言葉、だったと覚えているのですが…) また、文字による詩作品自体を映像として配列した「カリグラム」でも知られますから、当時の既存の表現に飽き足らないマインドを持った人であったことや、その進取の気性がシュルレアリスム運動に影響を与えたことは想像できますが、残念ながら私には具体的なことはわかりません。 今回のご質問を機に「動物詩集」のうち十作品ほどを読んで見ましたが、当時としてはものすごく斬新だったろうことは想像に難くありません。マリー・ローランサンへの愛情などもストレートに表現されていて、現代詩としても成立しうる新しさを改めて感じました。 ただ私見ですが、変革のエネルギーは共通していても、上に書いたようなブルトンの基本的姿勢と、本質的にどこまでアポリネールの考えが共通していたのかというと、実は意外と多くはないようにも思えます。実際、シュルレアリスムの側からは後に批判を受けていますね。

yukiko00000
質問者

お礼

現在高校生の美術の時間を担当しています。 専門分野について知識がないもののの、広く浅く学習し、将来のある高校生に如何説明したら、あれらの美術作品から、本質的な事を理解してもらえるか? 私自身も美術選択ですので、他分野の詳細は勿論、調べ方、も漠然としてしまって質問させていただきました。 作品の解答は鑑賞者にとって自由であるべきかもしれませんが、1つの作品が今日も多くの人に価値あるものとして受け継がれているのは、多くの作品に魅せられた偉大な研究者達の功績を無視する訳にはいきません。 neil_2112さんは今回、私の質問で、動物詩集の10作品も読んで解答して頂き、本当にありがとうございました。 私も、現在DADAとシュールレアリズムに関する本をいくつか紐といています。 サルバドール・ダリが美術監督を少々手がけているので、アルフレッド・ヒッチコックの『白い恐怖』を鑑賞したのですが、こちらにもフロイトの名前が登場していました。 当時のこういった思想が如何やって流布したのかも気になりますが。.. 『手術台の上のミシンと雨傘の偶然の出会いのように美しい。』 自我を形成する途中で自分の殻に閉じこもりがちな生徒もいますが、同じ絵をみた仲間として、出会いから何かを開ける人になって欲しいです。 ええと、今読んでいる本の中から。。。偶然開いて引用します。 『シュルレアリストは。人やモノとの出会いを、人間の生の束縛から解き放つ貴重なカギの1つとみなした。』 『ダダ・シュールレアリズムを学ぶ人のために』濱田明・田淵晋也・川上勉/世界思想社出版 ありがとうございます。

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