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言語学習の臨界期について教えてください。

こんにちは。僕は、高校一年生です。来週の月曜日に国語の授業で「公立小学校での英語教育を義務化するべきか!?」という議題でのディベートをする予定です。ちなみに僕は、これに肯定の立場から議論をしなければなりません。このディベートでは、いかに有力な資料を集めるかということが鍵となっています。そこで、資料を探していたのですが、「言語学習の臨界期」ということについての資料があまりないので誰かいい資料を教えてくれませんか?よろしくお願いします。

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回答No.2

まず、言語の臨界期(critical period)の研究が、おもに母語に関するもので、外国語学習についての研究は少ないことを押さえておきましょう。当然のことながら、母語の臨界期と外国語の臨界期とは別に考えなければなりません。母語と外国語(第2言語)では、獲得環境がまったく異なるので。 言語の研究では、母国語ではなく母語といいます。また、臨界期といっても明確なものではないので、最近は敏感期(sensitive period)ということが多くなりつつあります。なお、以下の話は、基本的に英語にかんするもので、日本人についての研究は(どのような研究なのかにもよりますが)英語の研究よりは少ないはずです。 なお、ロバート・S・シーグラー(Robert S. Siegler)らの発達心理学の教科書によると、言語の臨界期は次のように定義されています。 cricical period: the time during which language develops readily and after which (sometimes between age 5 and puberty) language acquisition ins much more difficult and ultimately less successful(臨界期:言語が容易に発達し、それを過ぎると(5歳から思春期のあいだということもある)言語獲得が難しくなり、ついには成功にいたらなくなる、そのような期間) [1] 音素弁別について 音素というのは、要するに音の単位ですが、それは言語ごとに異なります。たとえば、/r/および/l/は、英語では別々の音素ですが、日本語では区別できません。このような区別にもとづく音の単位を音素と呼ぶわけです。 生まれたばかりの赤ん坊は、驚くべきことに、あらゆる言語の音素を区別できます。つまり、日本人の赤ん坊でも、生まれたばかりなら/r/と/l/との区別が可能です。しかし、10-12ヶ月児になると、成人と同じような区別しかできません。つまり日本人なら、1歳になるころには、もう/r/と/l/との区別ができなくなってしまいます。ただ、/r/と/l/とを使って日本人で実験した例は知りません。私が具体的に知っているのは、英語話者の赤ん坊にたいして、ヒンディー語やントラカプムク語にしかない音素区別を用いて実験したジャネット・ワーカー(Janet F. Werker)たちの研究だけです。 Werker, J. F. (1989). Becoming a native listener: A developmental perspective on human speech perception. American Scientist, 77(1), 54-59. http://infantstudies.psych.ubc.ca/Werker_1989.pdf Werker, J. F. & Lalonde, C. E. (1988). Cross-language speech perception: Initial capabilities and developmental change. Developmental Psychology, 24(4), 672-683. http://infantstudies.psych.ubc.ca/JW1988.pdf Werker, J. F. & Tees, R. C. (1984). Cross-language speech perception: Evidence for perceptual reorganization during the first year of life. Infant Behavior and Development, 7, 49-63. http://infantstudies.psych.ubc.ca/Werker_Tees_1984.pdf 上の表記では、順に「著者名(年)論文の題名 掲載雑誌の題名 巻(号)ページ」を意味しています。日本語ならよかったのですが、うまく見つかりませんでした。情報ソースとして書いただけで読めというわけではありませんが、もし読むなら一番上の論文が割とわかりやすいと思います。 実験結果の解釈にもよりますが、素朴に受けとるなら、純粋に「文法などを系統的に教えるのではなくて音に馴らすために小学校から英語を導入するのだ」というだけの立場は、苦しいのかもしれません。 [2] 第2言語の学習について 第2言語学習のほうの臨界期らしきものについての研究を挙げます。もし幼児期に第2言語の臨界期のようなものがあるとすれば、4-6歳あたりになるのでしょうか。 (a) バイリンガルの文法処理 文法的な処理するのは、右利きで90%が脳の左半球に偏るブローカ野と呼ばれる領域です。処理が片方の半球に偏ることを側性化(lateralization)といいます。これが前提です。 バイリンガルの人を集めてきて、第2言語の獲得時期が4歳未満と4歳以上とでグループを分けます(実際は3グループでしたが、わかりやすく書きます)。そして、文法的な処理を要する課題をさせ、脳の活動を調べます。すると、4歳未満に比べると、4歳以上では側性化が小さくなり、右脳での処理が大きくなっています。つまり、4歳以上で第2言語を獲得すると、第2言語の文法処理の仕方は、母語の文法処理の仕方と異なってくるということです。 Weber-Fox, C. M. & Neville, H. J. (1996). Maturational constraints on functional specializations for language processing: ERP and behavioral evidence in bilingual speakers. Journal of Cognitive Neuroscience, 8(3), 231-256. (b) 移民の第2言語学習 アメリカ合衆国内の中国系、朝鮮系の移民を集めました。アメリカ合衆国に到着した年齢が3-7歳と8歳以上とでグループを分けます(実際はもっと細かいグループ分けでした)。到着してから実験時までの経過期間はそろえてあります。英文法の知識を問うテストをさせた点数を見ます。3-7歳の群では、ネイティヴと同じくらいの点数だったのにたいし、8歳以上では点数が悪かったという結果になりました。ただ、この場合、その子たちは移住して以後、英語漬けです。もし日本の小学校で英語が導入されたとしても、まず学校でしか英語を聞く機会のない日本の子どもとは単純には比較できません。 Johnson, J. S. & Newport, E. L. (1989). Critical period effects in second language learning: The influence of maturational state on the acquisition of English as a second language. Cognitive Psychology, 21(1), 60-99. http://dx.doi.org/10.1016/0010-0285(89)90003-0(要旨は見られると思います) [3] ニューポートの「小は大なり」説 エリサ・L・ニューポート(Elissa L. Newport)は、子どもが成人に比べて言語の学習に向いていることを説明する「小は大なり(less is more)」説を唱えています。他者の発声を知覚したり記憶したりする能力、言葉を分析する認知能力は、子どもは成人に比べて低い。しかし、それが低いがゆえに単純な分析だけをすることができ、かえって言語の学習に向いていると考える説です。 Newport, E. L. (1991). Constraining concepts of the critical period for language. In S. Carey & R. Gelman (Eds.), The epigenesis of mind: Essays on biology and cognition (pp. 111-130). Hillsdale, NJ: L. Erlbaum Associates. http://www.amazon.com/gp/product/0805804382/ [4] バイリンガリズム研究 両親が別の言語を話していたため幼少期から(小学校よりもはるか前ということですが)英語を聞く機会に恵まれ、バイリンガルになった子どもについての研究があります。バイリンガルである状態をバイリンガリズム、モノリンガル(1言語話者)である状態のことをモノリンガリズムといいます。 (a) バイリンガルは2つの言語を混同するか 音韻や文法規則については混同しません。単語がたまに混同されるくらいです。 DeHouwer, A. (1995). Bilingual language acquisition. In P. Fletcher & B. MacWhinney (Eds.), The. Handbook of Child Language, pp. 219-250. Oxford: Blackwell. http://www.amazon.com/gp/product/0631184058/ (b) バイリンガルの言語の発達 最初はモノリンガルの子どもに比べ、言語についての発達が遅れます。 Oller, D. K. & Pearson, B. Z. Assessing the effects of bilingualism: A background. In D. K. Oller & R. E. Eilers (Eds.) (2002), Language and literacy development in bilingual children (pp. 3-21). Clevedon, UK: Multilingual Matters. http://www.amazon.com/gp/product/1853595713/ Pearson, B. Z. & Fernandez, S. C. (1994). Patterns of interaction in the lexical growth in two languages of bilingual infants and toddlers. Language Learning, 44(4), 617-653. http://dx.doi.org/doi:10.1111/j.1467-1770.1994.tb00633.x しかし、徐々に差はなくなります。 DeHouwer, A. (1995). 上の本。 最終的には認知テストの成績がモノリンガルに比べてよくなります。 Bialystok, E., Shenfield, T., & Codd, J. (2000). Languages, scripts, and the environment: Factors in developing concepts of print. Developmental Psychology, 36(1), 66-76. http://content.apa.org/journals/dev/36/1/66 Hakuta, K., Ferdman, B. M., & Diaz, R. M. (1987). Bilingualism and cognitive development: Three perspectives. In S. Rosenberg (Ed.), Advances in applied psycholinguistics: Vol. 2. Reading, writing, and language learning (pp. 284-319). Cambridge, England: Cambridge University Press. http://www.amazon.com/gp/product/0521300274/ Peal, E. & Lambert, W. E. (1962). The relation of bilingualism to intelligence. Psychological Monographs, 76, 246-281. [5] 学校での第2言語の学習 小学校以降で英語が不得意な子どもに英語をどう教えたらよいかについて、アメリカ合衆国内での研究があります。教え方の代表的なものは、次の2つです。 (a) 全身浸礼(total immersion)。要するに英語漬けです。 (b) はじめは母語で基本事項を教え、徐々に英語を増やす。 (b)の方法を支持する証拠があります。(a)だと基本事項でつまずきやすく、(b)の方法のほうが学習が容易で退屈がやわらぐとのことです。 August, D. & Hakuta, K. (Eds.). (1998). Educating Language Minority Children. Washington, DC: National Academy Press. http://www.amazon.com/gp/product/0309064147/ Crawford, J. (1997). Best evidence: Research foundations of the bilingual education act. Washington, DC: National Clearinghouse for Bilingual Education. http://www.ncela.gwu.edu/pubs/reports/bestevidence/ Hakuta, K. (1999). The debate on bilingual education. Journal of Developmental and Behavioral Pediatrics, 20(1), 36-37. (b)の方法は、セミリンガリズム(どちらの言語も中途半端になること)を防ぐ効果もあるそうです。 ------------------------------------------------------------------------ 以上で終わりです。さまざまな要因が絡みあっている以上、上の結果だけから1つの結論を導くのは難しいとは思いますが。 全体として次の本を参考にしています。私が参考にしたのは初版ですが、今は第2版が出ているので、そちらの書誌情報を書きます。 Siegler, R. S., DeLoache, J. S., & Eisenberg, N. (2006). How children develop (2nd ed.). New York: Worth Publishers. http://www.amazon.com/gp/product/0716795272/ (順に「著者(年)著作標題(版)出版地名 出版社名」です) この質問は心理学のカテゴリのほうがよいと思いました。次から質問をするときは、専門のカテゴリで質問なさるのがよいのではないでしょうか。私が紹介した研究が役に立つとは思えないので恐縮ですが、ディベート、がんばってください。結果が気になるところです。

  • NAKO-P
  • ベストアンサー率73% (14/19)
回答No.1

 「言語学習の臨界期」に関して、既にネットでリサーチをされているかと思いますが English Education http://www.kochi-wu.ac.jp/~aoki/english-j.html だまらん[教育問題] [2005/10/26] 日本の小学校で、今、(正規の授業として)英語教育を導入すべきか? http://pocus.jp/10-2005/102605-english-at-school.html の双方で「日本における英語学習のような外国語学習に関する確固たる理論やデータは存在しない」となっております。  私もデータがあれば教えて欲しいくらいですが、恐らく見つからないのではないかと予想します。 -----  実は、他校で行われているディベートの授業のサポートするリンク集があります。そちらでも「小学校での英語教育の義務化」が論題として取り上げられていて、幾つか関連サイトが紹介されています。準備の参考に、どうぞ御覧ください。

参考URL:
http://www.edu.shadow.ne.jp/jugyo/miyagino/link3.cgi?catno=2
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質問者

お礼

回答どうもありがとうございました。とてもディベートに役に立ちました。 本当にデータ見つからなくて困っています;

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