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抵当権設定の土地を取得時効で取得した場合、抵当債務はどうなるの?

noname#61929の回答

noname#61929
noname#61929
回答No.3

まず前提として、抵当土地を「全部」時効取得した場合は民法397条によって当該土地を目的とする抵当権は消滅します。 抵当土地の「一部」を時効取得した場合も区別する必要がないので取得時効の成立した土地について分筆すれば当該土地を目的とする抵当権は消滅します(内田貴「民法III 債権総論・担保物権」東京大学出版会に同旨の記述があります)。 この場合、残りの土地の抵当権は相変わらず存在しますが、分筆した土地の割合に応じて被担保債権額が縮減するかと言えば、しません。なぜなら抵当権には不可分性という性質があり、割合によって被担保債権額を分割するなどということは性質上認められないからです。抵当権ではありませんが留置権につき、目的物の一部を返還した場合に特段の事情がない限り残りの占有物が被担保債権「全額」を担保することを不可分性を理由に認めた最判平成3年7月16日があります(通常言うところの不可分性、つまり被担保債権額が減少しても担保物権はなお目的物全体に及ぶ、とは発想が逆、つまり目的物が減少しても残りの目的物はなお非担保債権額全体を担保する、という話なので争点になったのでしょう。しかし、この結論は妥当であり、不可分性が通有性であることからも抵当権にも同じことが言えます)。 これは共同抵当の場合も同じです。共同抵当においては、各抵当目的物はそれぞれが被担保債権額「全額」を担保します。全額を担保するからこそ、配当方法が問題になるのでして。そこで共同抵当の目的物の一部について抵当権が消滅したとして、残りの目的物は相変わらず「全額」を担保しています。例えば火災による共同抵当建物の滅失などの場合に、残存する抵当目的物はたとえ後順位抵当権者がいたとしてもなお、被担保債権「全額」を担保しています。共同抵当における一部の目的物に対する抵当権を放棄した場合も、残りの目的物が「全額」を担保することは変わりません。そこで、これが時効取得により目的物の一部が抵当権の目的でなくなった場合に限って区別する理由はありませんから、この場合も「全額」を担保します。 以上を原則として理解しておきます。 その上で、抵当権を放棄した場合については、後順位抵当権者が放棄しなければ代位できたはずの限度で不当利得となります。なお、もし全額を担保しないのならばそもそも「後順位抵当権者が代位できたはずの限度」ではなく「担保しなくなった債権額につき」となるはずです。この場合には、後順位抵当権者の配当を受ける期待権の保護の必要性があるところ、自らの意思で抵当権を放棄した先順位抵当権者が不利益を甘受するのは当然ですから、両者の関係において、本来後順位抵当権者が代位により受けることができたはずの利益を侵害することについて先順位抵当権者には法律上の原因がないと評価することができます。 しかしながらこれが、抵当目的物の価格が下落したために後順位抵当権者が受けるべき配当が受けられなくなった場合はどうでしょう。目的物の価格の下落など先順位抵当権者の知ったことではありません。つまり、先順位抵当権者を害してまで後順位抵当権者を保護する理由はありません。ですからこの場合は、価格の下落が先順位抵当権者のせいであるというような特段の事情がない限り、後順位抵当権者が泣くことになります。 という両例からすれば、抵当目的物の一部が時効取得によって目的物でなくなった場合には、これは別に先順位抵当権者のせいではないのですから、先順位抵当権者は目的物の価値の減少による不利益を甘受するだけの理由がありません。であれば、先順位抵当権者の損失において後順位抵当権者を保護することは原則として認められないと言うべきです。したがって、先順位抵当権者を犠牲にしても後順位抵当権者を保護すべき特段の事情がない限り、抵当目的物の一部時効取得による担保価値の減少による不利益は、担保目的物の価値下落の場合と同様に後順位抵当権者から負担すべきです。 ということで、原則論としては、後順位抵当権者の存在は先順位抵当権の被担保債権の範囲には影響しないと考えるべきことになります。

nayatarou
質問者

補足

当該土地を時効取得していたが時効の援用をせず新所有者が登記をしない状態で、旧所有者と抵当権者の間で抵当権を設定した場合でも、分筆による按分はないのでしょうか

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