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kankasouroの回答
- kankasouro
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いちばん注目すべきなのは「草木」が「草」になっている点でしょう。単に芭蕉が目にしたの草っ原であったから、というだけではなしに、「草木」といえば漢語では自然界一般を指します。それを「草」だけにしたというのは、杜甫の「自然と人為」という観念的な対比を、やや実景に引きつける意図があったのでしょう。図式的に訳すと、 杜甫: 町にはまた春がやってきて、草木に代表される自然は今その生命力のさかりを迎えている 芭蕉: 城にはまた春がやってきて、草はその生命力のさかりを迎えている でしょうか。もうひとつ「草木」を「草」にただした芭蕉の意図として考えられるのは、「くにやぶれてサンガあり、しろはるにしてソウモクふかし」は漢語が多すぎて響きがかたく、句への導入にはふさわしくないと考えたことではないでしょうか。それくらいなら「くさあをみたり」の和語の響きのほうがなだらかに句を呼ぶ、と。 草青みたり、は、ネガでもあり、ポジでもある感情です。「ああ、自然はめぐるのだなあ」という希望がある一方で、「それに比べると人為はついにむなしい」という絶望もある。その二つが相俟って芭蕉の心をしめつけるからこの場面は高揚するのです。どちらか一方と決めつけるのは文学鑑賞の態度として間違っています。どちらとも決められないから、その相克が文章をもりあげるという点は、『ハムレット』の「生きるべきか、死ぬべきか」とおなじ。 ちなみにこの重要な場面で芭蕉は勘違いをしています。漢詩の城は「町、都市」の意味ですが、彼はこれを「城砦、城郭」の意味で使っている。日本人にありがちな誤解なのですが、もしかしたらそこも芭蕉の意図だったのかもしれません。
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