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ブラックホールは存在しない?

noname#212313の回答

noname#212313
noname#212313
回答No.4

 まず、古典的で素朴なブラックホールについて再確認しておきます。  ブラックホールは重力が非常に強く、たとえ外向きに光を発しようとしても、光は真っ直ぐブラックホールに落ち込んでしまうという天体です。光は宇宙では最高速ですから、他の光より必ず遅い物質も、どうやってもブラックホールから出てくることはできません。  地球での重力を考えると、上空に行くほど弱くなります。ブラックホールでも同様に、上空に行くほど重力は弱くなります。ブラックホールの上空、ある距離になると光がぎりぎり外に出られどうかという程度の重力の強さになります。。そこを「事象の地平面」と呼んでいます。全体を見ると球の形でブラックホールを覆っています。  上記の説明での「ブラックホール」はよく「ブラックホールの特異点」と表現されています。体積がゼロだと考えられているからです。そして「事象の地平面」が成す球を「ブラックホール」と呼んでいることがよくあります。  一般相対論の重力方程式を解くと、ブラックホールという天体があるという数学解が出るのですが、上記のような性質を持っているということが示されます。ただ、それでは他の物理学理論と齟齬をきたします。  例えば、熱力学です(現在の熱力学は情報理論とも統合され、エントロピーは情報エントロピーも含んでいる)。ブラックホールの事象の地平面は外界からブラックホール側だけへ行ける一方通行です。熱力学によれば、閉鎖系(外界と接触を絶って孤立させた系)内ではエントロピーは必ず増大します。ところが、ブラックホールは一方通行であるため、熱も情報も吸い込み放題になり、エントロピーを永遠に、かつ無限に減少させてしまうのです。宇宙全体を考えると、宇宙の外というものがないため、宇宙にブラックホールがあれば、熱力学は宇宙について成り立たなくなることになります。  この問題を「熱力学は宇宙全体で考えたら成り立たないんだ」としてしまうことはできます。ある意味、簡単な解決です。ただし、「だから、宇宙のことは分からない」ということになってしまいます。しかし、実際には宇宙のことは既存の物理学でかなり分かりつつありますし、ブラックホールの存在も確認されています。どうも、「熱力学も宇宙全体で成り立っているらしい」と考えたほう分がよさそうです。  そこで、まずブラックホールが本当にあるのか、という問題を考えてみます。外界からブラックホールを見ているとして、ブラックホールに落ちて行く物体を観測すると、事象の地平面到達に無限大の時間がかかることが、一般相対論からの計算で分かっています。  そうなる理由は、事象の地平面に近いほど重力が強くなるんですが、重力が強いほど時間の進み方が遅くなるためです。ブラックホールに近づくと時間の進み方が遅くなり、事象の地平面では時間が止まってしまうからです。時間が遅くなるために落ちて行くのが遅くなり、時間が止まれば落ちるのも止まるという現象です。  だとすると、巨大な恒星が収縮してブラックホールになるときも、無限大の時間がかかるということにもなります。星が収縮していくと表面重力がどんどん強くなり、そのために時間の進み方が遅くなり、収縮していく速さが遅くなるためです。  宇宙は誕生してから長いとはいえ有限の時間でしかありません。そのため、ブラックホールと言われている天体であっても、まだ事象の地平面はできておらず、疑似的なブラックホール、あるいはなりかけのブラックホールとでもいうべきもので留まっています。ただ、なりかけとはいえブラックホールに落ち込んで行くものの大半は落ち込む一方になります。  こうした事実上の一方通行のブラックホールについて、ホーキング博士が理論的に導き出したホーキング輻射(ホーキング放射)と呼ばれるものがあります。量子力学で何も無い空間をミクロに考えてみると、常に光子がペアとなって生まれて(対生成)、すぐにペアが消滅しています(対消滅)。出た途端に消えるので、何も無いところはやはり何も無いように見えるんですが、ブラックホール(事象の地平面がまだない、なりかけのブラックホールでよい)があるとちょっと事情が違っています。  対生成した光子のペアのうち、ブラックホールに近いほうがブラックホールに落ち込み、もう一方が外に向かって出てきます。これが事象の地平面の至る所で常に起こっています。ブラックホールから光が出てくるという現象になるわけです。ただし、はっきり観測できるほどの光になるには、ブラックホールが相当に小さくなければなりません(※ホーキング輻射はブラックホールが小さいほど激しい)。  ブラックホールから光が出てくるということは、エネルギーを発しているわけです。相対論の有名な公式「E=mc^2」は「質量とエネルギーは等価である」と言っていて、エネルギーを出すということは質量を減らすということになります。ホーキング輻射でブラックホールは質量を減らすわけです。ホーキング輻射があるため、ブラックホールは非常に長いながら有限の時間で消滅すると考えられています。  その過程で、熱力学のエントロピーの問題が解決できるのではないかと、ホーキング博士は考えています。ホーキング輻射を考えない古典的で素朴なブラックホールでは一方通行でしたが、ホーキング輻射を持つとしたブラックホールでは、ブラックホールに落ちて行ったものも、ブラックホール自体も、ホーキング輻射という形で宇宙に返されることになるからです。  要は「ブラックホールは落ちたら最後の一方通行じゃなく、結局は全部跳ね返してくる」ということです。  お示しのホーキング博士の小論文はそういうことを言っています。最近突然出てきた考え方ではありません。アイデアは結構前からあり、だんだん精密になってきただけです(新聞記事の執筆者が、その辺りのことをあまり理解できていない感じ)。

s_sachiko
質問者

お礼

Dio_Genes さん、こんにちは。 詳しい解説、ありがとうございました。 >要は「ブラックホールは落ちたら最後の一方通行じゃなく、結局は全部跳ね返してくる」ということです。 ウィキペディアによると、スティーヴン・ホーキングは、 1974年、ブラックホールから物質が逃げ出して最終的にブラックホールが蒸発する可能性を指摘した。 1976年に、ホーキングはブラックホールに吸い込まれた情報はホーキング輻射に反映されず、ブラックホールの蒸発によって完全に失われてしまうという説を発表した。 2004年7月21日に「情報はブラックホールの蒸発に伴って何らかの形でホーキング輻射に反映され、外部に出てくる」と従来の自説を修正したことを発表した。 2013年に、「ブラックホールは情報とエネルギーを消滅させるのではなく、 新しいかたちでまた空間に開放する。」 「事象の地平線に替わる新しい境界として、量子効果で変動する『見かけの地平面』を提案した 」 結局、古典的なブラックホールを大幅に修正すべきと言ってるんですね。 「新しいかたちでまた空間に開放する」というなら、名称も変えたほうが良い気がします。 博士の思考が、ホログラフィック理論とか量子力学に傾倒している感じがします。 お付き合いして頂きありがとうございました。

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