• ベストアンサー

唯名論

serpent-owlの回答

回答No.4

 aminouchiさん、補足をありがとうございます。たしかに私の回答には誤解を招く部分があったようです。とくに、おしまいの部分(すいません、ここだけオンラインで書き加えたもので…)。  「実在論はプラトン哲学と直接の関係はない」と書きましたが、これは「普遍論争の過程での実在論」に関してのみ、言えることです。普遍論争が始まる以前、エウリゲナらのスコラ哲学者は新プラトン主義の影響を受けた実在論に立っております。普遍論争以前は実在論が当たり前であって、さして問題にもされなかったようです。  しかし、普遍論争そのものはアリストテレスの論理学に関するポルピュリオスの著作『エイサゴゲー』に端を発します。その序文に見える「普遍は実在するのか、単に理解のうちに存在するのか」という問題提起が端緒となっています。ですから、普遍論争の過程での実在論は、プラトン的というよりもアリストテレス的な論理学の枠で捉える方が適当かと思います。  ですから、その…専門家に言葉を返すのはちょっと勇気が要るのですが、ここは「論理学が扱うもの」としての普遍が問題なのであって、「普遍者たる神」の普遍性を持ち込んでしまうと質問者にはわかりにくくなるのではないかと思います。  それから唯名論とイデアとの関係ですが、アベラルドゥス(12世紀唯名論の論客)になりますと、「人」という名辞と「人であること」という事態 statusとを区別して、前者を普遍と考え、創造に先立つ神の概念・イデアに肯定的に言及しています。端的に「モノ」を実在と考えた実在論に対して、「創造=モノに関わり、モノに形を与えるプロセス」に先立つ神の実在を、純粋な精神、純粋なコトバとして認めていたということでしょう。そういう意味では、唯名論は「神はモノではない」と言っているだけで、神の実在そのものを否定しているわけではありません。  むしろ、神を「モノとしての実在」と考える実在論の方が終始唯名論に押されていたように感じられます。ロスケリヌスは「父と子が同一なら、子が受肉したと同時に父も受肉したことになる」と三位一体説の矛盾を導いておりますし(ただし、これは正統教義に反しますから攻撃されました)、シャンポーのギョームはアベラルドゥスに論破されて普遍の同一説を放棄しています(放棄後の「複数・無差異」説が、先の回答で紹介したものです)。  あまり煩瑣な情報は質問者の「噛み砕いて」という要請に反するかもしれませんが、以上、付け加えさせていただきました。

関連するQ&A

  • 唯名論について

    唯名論についてわかり易く教えてください! 何が何だか分かりません! どなたか詳しい方、助けて~ ※ついでですが具体的な例がありましたら、どうか教えてください

  • 唯名論のラテン語が辞書に書いてないので教えて

    ロスケリヌスが初めて作って使ったという「唯名論」という語はフランス語ではnominalismeですが、ラテン語ではなんという語になるのかわからないのですが、典拠とともに教えていただけませんか?

  • 唯名論と実在論について

    哲学はまったくの素人です。 薔薇の名前という小説を調べて普遍論争に興味を持ちました。Wikipediaで見ても専門用語が多くてよく分かりませんでしたが、私なりに以下のようなものではないかと思ったのですが、見当違いかもしれません。哲学を知らない人でも分かる言葉で説明していただけないでしょうか 唯名論:人間というのは田中さんや鈴木さんの集合体に付けられたラベルのようなもので人間という存在が入るわけではないという考え方 実在論:人間の特殊事例として田中さんや鈴木さんが存在しており、どこかに一般的な人間がいる(あるいは、かつてそういう存在があった)という考え方

  • 中世哲学

    哲学初心者です。 中世の唯名論、実在論がその後どの様な流れをたどることになったのか、ざっくりとでも教えていただけるとうれしいですが。

  • ソクラテスという個体を一集合としてもよいの?

    「一集合を個体とみなすことを拒否する主張が唯名論だ」という記述がありましたので、集合であるための条件を考えるためにお尋ねしています。

  • プラトンとアリストテレスの系譜

    実在論=イデア論=現在の観念論(ドイツ観念論的)>演繹法 唯名論=形而上学=現在の「実在論」(イギリス経験論的)>帰納法 OK?

  • 何々論、論者について

    何々論、論者について こないだマルクス唯物論とやらを 読んでみたんですが凄く面白かったです 皆さんの面白いと思う、論者さんや○○論を紹介して下さい 自分は無神論とか無宗教者が好きです なので宗教的じゃないのをお願いします 回答待ってますw

  • 哲学について

    哲学のことで質問なのですが、実在論と唯名論ってよくでてきますよね??これが、哲学の本を読んでも何かよく理解できないのですが、どなたか解り易く説明していただける方いますか??お願いします。またこの二つを考えた人物も教えてください。

  • ○○○論

    OKWebでの回答を見て、思いついたのですが、 正論 虚無論 筋道論 さらに、 ~論といえば、 慎重論 たられば論 水掛け論 建前論 人情論 あと他にあるでしょうか? ※ 自分でもどういう基準で並べたのか分かりませんが。 ※ 創作は不可で、一般的もしくは、ややマイナーなもので知りたいです。

  • 心身論(唯心論、唯物論、二元論、多元論など)について

    心身論(唯心論、唯物論、二元論、多元論など)について たとえば、「次の日、不安なことがあり、その前の夜なかなか寝付けない」というのは、心身論でいう何の例でしょうか? 体(寝るという行為)が心(不安)に支配されているので、心(精神)を根本原理とする唯心論でしょうか?それとも体と心の両方が関係しているので二元論でしょうか? よく分からなくて困っています。 よろしくお願いします。