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放射性物質が検出された母乳は大丈夫?
「国や市民団体の調査で東京電力福島第1原発周辺に住む母親の母乳から微量の放射性物質が検出されたそうですが、原発のある福島県以外の母親からも検出されているのでしょうか。また、調査結果の範囲ならば母乳を与えても赤ちゃんに健康被害はないのでしょうか」=川崎市の女性会社員(36)
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■市民団体が調査 授乳中の母親の母乳から放射性物質の検出が明らかになったのは、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が4月に公表した調査結果がきっかけだった。福島第1原発事故を受け、ネットワークでは3月23日~30日、福島、茨城など4県に住む女性9人の母乳を民間放射線測定会社で独自に分析。その結果、茨城と千葉の4人から1キロ当たり6・4~36・3ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。 ヨウ素は甲状腺に蓄積され、甲状腺がんを誘発する可能性がある。成長期の細胞は被曝(ひばく)で傷を負いやすく細胞ががん化しやすいため、多くの授乳中の母親らは衝撃を受けた。 政府も母親らの不安に応え、厚生労働省に緊急調査を指示。4月下旬、福島、茨城、千葉、埼玉、東京の23人を対象に調べたところ、7人からヨウ素が2・2ベクレル~8・0ベクレル、うち1人から放射性セシウムも2・4ベクレル検出された。 当初、母乳には国の基準値がなかったが、厚労省は急遽(きゅうきょ)、ヨウ素は飲料水や牛乳の乳幼児用の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を、セシウムは大人を含めた基準値(同200ベクレ ル)を安全性の目安とした。 厚労省はさらなる安全性の確認のため、5月18日~6月3日に専門家で構成する研究班による調査も実施。宮城や福島など8県の授乳中の女性108人を対象に調査した。 その結果、福島県相馬市、福島市、いわき市、二本松市の7人から1・9~13・1ベクレルのセシウムが検出されたが、安全性の目安を大きく下回ることから、研究班は授乳を続けても乳児の健康に影響はないと結論づけた。 ■「心配ないレベル」 研究班の代表を務めた国立保健医療科学院の欅田(くぬぎた)尚樹生活環境研究部長は「放射性物質は大気中や食品、水道水から母体内に取り込まれたと考えられる」と説明。母親が経口で摂取したヨウ素とセシウムは平均それぞれ3~4割程度が母乳に移行するとされるが、「母体、乳児ともに過去にさかのぼった長期的な影響も心配がないレベル」と語る。 研究班の調査では、市民団体の調査で検出されたヨウ素は出なかった。これについて欅田部長は、「環境中への放射性物質の放出が減少していることに加え、ヨウ素の放射能の量が半分になる半減期が、セシウムに比べて短いため」と説明する。 ヨウ素とセシウムの物質そのものの半減期はそれぞれ、8日間と30年間。しかし、人体に摂取され、体内での代謝や排泄(はいせつ)による減少を加味すると、ヨウ素は7日間、セシウムは80日程度で体内から半減するという。 原発事故の影響で大気中の放射線量がピークに達した3月15~16日以降、大きな放射性物質の放出はなく、食品などからヨウ素の検出が減る一方、半減期の長いセシウムが検出されるケースが増えている。 ただ、研究班は母乳から検出されたセシウムは「微量」としており、日本産科婦人科学会や日本医学放射線学会など関係6学会も6月8日、「わずかな放射線量よりも、母乳に含まれる子供の成長に役立つ成分の方がはるかに重要。授乳を続けても、子供の健康に影響することはない」とする見解を公表した。 一方、事故直後から希望者の母乳検査を実施している母乳調査・母子支援ネットワークは現在も調査を継続。これまでに約200人が検査を受けた。結果が公表されている100人のうち5人から5・5ベクレル~36・3ベクレルのヨウ素が、14人から4・2ベクレル~10・5ベクレルのセシウムが検出されている。 ネットワークの村上喜久子代表は「世界的に母乳と放射性物質に関する調査は少なく、微量だから安全という根拠はない。内部被曝の実態把握のためにも、原発周辺の自治体は母乳の調査をするべきだ」と訴えている。(長島雅子) ◇ 「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。