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定積分の等式を満たす関数について
boisewebの回答
質問にはふたつの論点が混在しているような気がします. (1) f(t) とは何か? 「関数 f(x) の変数 x を別の変数 t に置き換えたものであって,関数として本質的に同一である」という理解は正しいか? (2) 右辺の定積分の項を x でなく t を使って書いているのはなぜか? 単に「分かりやすくする」ためだけなのか? それなら t を使わず f(x)=2x^2-x+∫[0,2]f(x)dx と書いても(分かりにくいとはいえ)許されるのではないか? (1)についてはすでに#1,#2で回答されています. (2)について,私はあえてこう回答します. ======== 右辺の定積分の項を x でなく t を使って書くのは,単に「分かりやすくするため」程度ではなく,「そうしなければならない(好むと好まざるとにかかわらず)」ものである. f(x)=2x^2-x+∫[0,2]f(x)dx と書くのは「誤り」と言ってよい(少なくとも「著しく不適切な書き方」であることは間違いない). ======== なぜか? 次の2つの式に対して「x に 1 を代入する」という操作を考えてみましょう. (a) f(x)=2x^2-x+∫[0,2]f(t)dt (b) f(x)=2x^2-x+∫[0,2]f(x)dx (a) は f(1)=2*(1^2)-1+∫[0,2]f(t)dt (*は掛け算記号)となり,何の問題もありません. 一方,(b) は f(1)=2*(1^2)-1+∫[0,2]f(1)dx (あるいは f(1)=2*(1^2)-1+∫[0,2]f(1)d1)!? となり,おかしなことになります. 数学で使う変数には,大きく分けてふたつの役割(使われ方)があります. 次のふたつの式を考えてみましょう. (a) 2x^2+x (b) ∫[0,2] t^3 dt (a) の変数 x には,1,2,... などの値を代入できます.そして,x に値を代入するごとに,式全体の値が(x に代入された値に応じて)決まります.たとえば x に 1 を代入すると式は 2*(1^2)+1 となり,式の値は 3 です.2 を代入すると式の値は 10 です. ところで,(b) の変数 t に値を「代入」できますか? 「t に 1 を代入すると式は ∫[0,2] 1^3 dt となる」…この操作は許されますか? ∫[0,2] t^3 dt という式全体の値は,t に値を「代入」してはじめて決まるのですか? 違います.「代入」という操作をするまでもなく,式の値はすでに 4 と決まっています. (a)の使われ方の変数は「自由に値を代入できる」変数です. (b)の使われ方の変数は「(式全体の外側の立場からは)値を代入できない」変数です. 数学では,(a)の役割の変数を「自由変数」,(b)の役割の変数を「束縛変数」といいます. これらは,式の中で果たしている役割が根本的に異なるのです. 積分変数は束縛変数のひとつです.積分変数以外では,たとえば和の記号を使った式 Σ[k=0,N]2^k の k も束縛変数です.命題や条件を「すべての x について…」「…である y が存在する」などと書き表すときの x,y も束縛変数です(全体の外側の立場からは値を代入できない). CやJavaなどのプログラミング言語をご存じの方なら,自由変数,束縛変数はそれぞれ,関数(メソッド)の定義における「仮引数」「ローカル変数」と思えばわかりやすいかもしれません. 一般に,同じ式の中で,同じ文字を自由変数と束縛変数の両方の意味で使うことは許されません.それを許すと「代入」という操作で破綻してしまうからです.同じ式の中では,自由変数に使う文字と束縛変数に使う文字は分けなければなりません.右辺の積分の項で t を使っているのは,「x がすでに式の中で自由変数として使われているので,x を束縛変数として使うことが許されない」からです.
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