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波動関数の動径関数について
現在、分子軌道法について勉強しているのですが、波動関数の動径波動関数について調べても理解できない点があったので、どなたかご存知でしたら、ご教授頂ければと思います。 質問1) 動径関数は、クーロン場に由来する関数であるため、原子核からの距離rの関数として表されますが、なぜ1sは動径関数の値は正のみをとり、2sからは負の値も取り得ることが可能なのでしょうか? 動径関数は、空間的な電子の広がりを支配しているため、負の値の意味がよくわかりません。 よろしくお願いします。 質問2) 波動関数は動径関数と球面調和関数の積で表されますが、球面調和関数の位相因子はどのような意味をもつのでしょうか? 動径波動関数で、空間的な電子の広がりを表現するために、正負の値を取り得るのなら、なぜ球面調和関数が必要なのでしょうか? よろしくお願いします。 以上ですが、自分の勉強不足という点もあり、なかなか理解できず、困惑しております。ご教授よろしくお願い致します。
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■動径波動関数が負の値を取り得る理由 ある位置(r,θ,φ)で電子を見出す確率は、波動関数 Ψ(r,θ,φ) に比例するのではなく、波動関数の絶対値の二乗 |Ψ(r,θ,φ)|^2 に比例します。水素原子では、動径波動関数を R(r), 球面調和関数を Y(θ,φ) とすれば Ψ(r,θ,φ)=R(r)Y(θ,φ)と表されますから、ある位置(r,θ,φ)で電子を見出す確率は |Ψ(r,θ,φ)|^2=|R(r)|^2×|Y(θ,φ)|^2 となって、動径波動関数の絶対値の二乗 |R(r)|^2 に比例します。動径波動関数がある位置で負の値を取っても、その位置で電子を見出す確率は正の値になるので、動径波動関数が正負の値を取っても問題ないです。 ■なぜ球面調和関数が必要なのか? 動径波動関数 R は r だけの関数です。もし波動関数 Ψ が、θとφに依らないのだったら、球面調和関数はいらないです。しかし、s軌道以外の波動関数はθとφに依存するので、球面調和関数が必要になります。 例えば2pz軌道(または2p0軌道)は、θ=π/2 となる位置、つまりxy平面上では値がゼロになります。また原子核を中心とする球面上の点を考えると、θ=0とθ=πの位置で波動関数の絶対値が最大になります。 「動径関数が空間的な電子の広がりを支配している」というような説明は、私もみたことがありますけど、「動径波動関数だけでなく球面調和関数もまた空間的な電子の広がりを表現している」と考えたほうがいいと私は思います。 原子軌道の大きさ:どのくらい広がっているのかを動径波動関数が表現している。 原子軌道のかたち:どのように広がっているのかを球面調和関数が表現している。 ■原子軌道の位相と節面 「球面調和関数の位相因子」というのが何を指しているのかよく分からないのですけど、教科書の原子軌道の節面に関する説明をよく読めば、おそらく疑問が解けるのではないかと思います。原子軌道の節面とは、Ψ(r,θ,φ)=0を満たす平面、球面、円錐面です。Ψ(r,θ,φ)=R(r)Y(θ,φ)ですから、節面には、R(r)=0を満たす球面と、Y(θ,φ)=0を満たす平面または円錐面があります。波動関数が正の値をとる空間領域と負の値をとる空間領域は、節面によって分けられていますから、原子軌道の位相は、節面と深い関係があります。 分子軌道法で大事なのは、球面調和関数に由来する節面の方です。動径波動関数に由来する球形の節面は、原子間の化学結合の形成には、あまり関係しません。軌道の一番外側の位相だけが大事だからです。例えば2s軌道では、原子核に十分近い領域は十分離れた領域の逆位相になりますけど、ふつう2s軌道を図で表すときには、外側の位相だけを書きます。このことは、球面調和関数に由来する節面を持つ2p軌道を図で表すときに、正と負の両方の位相を必ず書くのとは対照的です。
お礼
ご回答ありがとうございます。 動径波動関数と球面調和関数の関係についてわかりました。 特にR(r)の節面の前後で化学結合の形成に役立つか否かということがわかりました。 原子軌道の節面について詳しく勉強してみたいと思います。