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野生動物は、寿命をまっとうできるものですか?
よくテレビ番組で、野生動物の弱肉強食の世界を観ることがありますが…例えば、ガゼルがチーター(ヌーがワニ)に一度も襲われずに、子供を産み育て、病気にも掛からず、老衰で死を迎えることはあるのでしょうか? あったとしても、自然界では稀なことでしょうか?
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獣医師です。以前、カモシカの保護に携わっていたことがあります。 ご質問の件ですが、動物種によって多少違うでしょうが、それなりの確率である、と言えると思います。 ただ、「老衰」や「寿命を全うする」の定義は意外に難しいですよ。 ヒトでも「老衰」という"死因"は本来ありませんから、最終的には心不全等の"病名"は診断名として付けられてしまいます。 現在のヒト(日本人)の寿命は約80年ですが、それは食べ物が良いとか病気や怪我に対する医療措置あっての寿命で、それらがない時代は50年とか30年の時代もあったわけです。 それと同じ意味合いで、ヒトが80年生きるのと同じ意味合いでの「寿命」を野生動物が全うできるか、という質問でしたら、当然言葉の定義として「ない」という回答になるかと思います。野生動物は食物の管理も医療行為を受けることもありませんから。 食物の管理と医療行為ということでしたら、動物園などで飼育されている動物がそれに当たりますし、飼育下の動物は野生状態より寿命が長いことは一般的に知られています(野生状態での寿命を調査することは困難なのでデータがあまり多くありませんが)。 ですが、動物にとって「補食される」というのは、死因としてはあまり大きくないのも多数あるかと思います。例えばご質問のガゼルとチーターでしたら、個体数は圧倒的に前者が多いですから、補食される数なんて実はたかが知れているのです。それより病気や怪我が原因で死ぬ数の方が圧倒的に多いでしょう。 もちろん被補食動物も「繁殖」しなければ、生態系を維持できませんから、「子供を産み育て」る個体が一定の率で必ずいます。それらうちある率の個体は、生涯一度も補食されず(補食される機会なんて生涯一度しかあり得ないのですが)、補食以外の原因で死ぬことになるでしょう。そういう個体は事故か、最終的には何らかの病気で死ぬことになるわけです。 ニホンカモシカの寿命は、飼育下だと最長で30年くらいでしょう。20数産した個体の記録があります。ただ、これも「飼育カモシカ」としても希なケースです。平均寿命だと15-16年か、あるいはもう少し短いくらいではないでしょうか。 一方、野生カモシカですが、弱って人里に降りてきて保護されるような個体を数十頭診ましたが、20歳を越えると推測される個体は決して珍しくなかったです。(カモシカは角の年輪で年齢の推定が可能です) 高年齢で人里に出てきたような個体の多くは、明らかに闘争に負けたと思われる怪我をしていたものが多かったです。つまり若いカモシカに負けて縄張りを奪われ、住む場所を失って人里に出てきた、というパターンです。 ちょうど今頃の季節(春~初夏)に人里で保護されるカモシカは、親とはぐれた当年生まれ(カモシカの出生時期もちょうどこの時期)の幼体か、闘争に負けて怪我をした老体のほぼどちらかでした。 その老体で20歳を越えるものが決して珍しくなかったのですから、補食動物がいなければ、けっこう限界近くまで生きることはできる、ということなのかもしれません。 ということは、ガゼルも「補食される」率はガゼルの全個体数からするとそれほど高い率ではないでしょうから、けっこう頑張って長生きする個体も多いかも知れません。 まあそのあたりは動物のそれぞれの事情によって異なるでしょうけども。
お礼
とても参考になりました。ありがとうございました。