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熱効率の問題は、フランスの技術者サディ・カルノー(Nicolas Leonard Carnot,1796~1832)によって、議論されました。「可逆機関の熱効率が最も良い」ことをカルノーの定理と言います。 可逆機関Aと不可逆機関B、熱源T_1と熱源T_2があるとします。熱源T_1の温度は、熱源T_2の温度より高いとします。機関Aは、熱源T_1から熱量Q_1を受け取り、外部に仕事Wをして、熱量Q_2を熱源T_2に放出するとします。 T_1 → Q_1 → A → Q_2 → T_2, A → W → 外部 (1) ところが、機関Aは可逆機関ですから、この逆の過程も起こり得ます。つまり、機関Aは、熱源T_2から熱量Q_2を受け取り、外部からWの仕事をされて、熱量Q_1を熱源T_1に放出します。 T_2 → Q_2 → A → Q_1 → T_1, 外部 → W → A (2) 一方、機関Bは、熱源T_1から熱量Q_1を受け取り、外部に仕事W'をして、熱量Q_2'を熱源T_2に放出します。 T_1 → Q_1 → B → Q_2' → T_2, B → W' → 外部 (3) いま、機関Bの熱効率が機関Aの熱効率より大きいと仮定します。すると、機関Bは、機関Aに仕事Wをすることができます。 T_1 → Q_1 → B → Q_2' → T_2, B → W → A, B → W'-W → 外部 (4) つまり、過程(2)と過程(4)は同時に起こすことができます。熱源T_1は、機関Aから熱量Q_1を受け取り、機関Bに熱量Q_1を放出しますから、差し引き0です。よって、正味の結果は、熱源T_2から、熱量(Q_2-Q_2')を奪って、仕事(W'-W)を取り出したことになります。 さて、これが実際に可能であるなら、海水の温度を極僅か下げて、家庭のお風呂を沸かすことができます。これを不可能としたのが熱力学第2の法則です。よって、可逆機関の熱効率が、最も良いことになります。
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- siegmund
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Mell-Lily さんのご回答の論理的組み立ては次のようなものです. 可逆機関は逆行運転できる. もし,可逆機関より効率のよい機関があれば, 可逆機関の逆行運転と巧妙に(?)組み合わせることによって, ただ1つの熱源から熱を吸収して仕事に変えることができてしまう. というものです(トムソンの原理に違反). もしこういうことが可能ならば > 海水の温度を極僅か下げて、家庭のお風呂を沸かすことができます。 よりは,海水からエネルギーを頂いて重油も何も使わず航行する船が造れる. の類の方がよいでしょう. まあ,得られた仕事で風呂を沸かせばいいんですけれど. 多少組み合わせ方を変えますと, 「もし,可逆機関より効率のよい機関があれば, 外からエネルギーなど投入せずに熱を低温部から高温部へ流すことができる」 という風にすることも可能です. これはクラウジウスの原理に違反することになります. これができるなら,Mell-Lily さんの > 海水の温度を極僅か下げて、家庭のお風呂を沸かすことができます。 と直接結びつきます. エントロピー概念をご存知なら下の図がわかりやすいでしょう 《可逆機関の図》 S_H Q_H ┃ ┃ 高温部(T_H) ∨ ∨ ┌────────┐ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃━━│━> エネルギー W │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ └────────┘ ┃ ┃ ∨ ∨ 低温部(T_L) S_L Q_L エネルギーの収支を見れば (1) Q_H = Q_L + W エントロピーからは,可逆機関の場合 (2) S_H = S_L ですが, (3) S_H = Q_H/T_H, S_L = Q_L/T_L と組み合わせて,(1)(2)(3)からη=W/Q_H で定義される効率は (4) η=(T_H - T_L)/T_H になります. 一方,不可逆機関では,機関内で余分なエントロピーが生成されます. 《不可逆機関の図》 S_H Q_H ┃ ┃ 高温熱源(T_H) ∨ ∨ ┌────────┐ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃ │ │ ┃ ┃━━│━> エネルギー W │ ┃┃ ┃ │ │ ┃┃ ┃ │ │ ┃┃ ┃ │ │ ┃┃ ┃ │ └────────┘ ┃┃ ┃ ∨∨ ∨ 低温熱源(T_L) S_L Q_L つまり (1) Q_H = Q_L + W (2) S_H < S_L (3) S_H = Q_H/T_H, S_L = Q_L/T_L から (4) η = W/Q_H < (T_H - T_L)/T_H になります.
お礼
前回に引き続き今回も詳しい説明ありがとうございました。
熱力学は専門外なのですが、動作流体の入れ替えに伴う損失のためでは?
お礼
ありがとうございます。 考えるきっかけとなりました。
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お礼
ありがとうございました。 とてもわかりやすかったです。