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法人格否認の法理の実践方法

noname#1455の回答

noname#1455
noname#1455
回答No.1

 結論的には、「法人格が濫用されていること」、あるいは、「法人格が形骸化していること」という法的評価を基礎づける具体的事実を請求原因事実として記載すべきです。 1 「評価根拠事実」  実体法規は法律要件と法律効果の組み合わせで成り立っていますが、この法律要件に該当する具体的事実のことを、「主要事実」(要件事実)といいます。  例えば、「当事者の一方が自己の財産を無償にて相手方に与ふる意思を表示」することと「相手方が受諾を為す」ことは、いずれも贈与契約(民法549条)の法律要件であり、「AさんがBさんに『パソコンを買ってあげよう』と言うこと」と「BさんがAさんに『ありがとう、嬉しいな』と言うこと」は、いずれも主要事実です。  そして、原告が主張立証すべき請求原因事実は、このような主要事実です。  ところで、民法110条の「正当の理由」や同法709条の「過失」のように、事実ではなく法的評価概念が法律要件とされている(ようにみえる)場合がありますが、この場合に主要事実となるのは、「法的評価そのもの」ではなく、「法的評価を基礎づける具体的事実」であるというのが、実務上支配的な見解であるとされています。  民法110条の「正当の理由」を例にとりますと、原告が越権代理による契約の成立を主張しようとすれば、「原告にはA氏(=無権代理人)に契約締結の権限もあると信ずるべき正当な理由があった」と主張するのみでは足りず、「A氏は被告の実弟であり、被告の実印を携行していた。さらに、原告が本件契約の締結にあたって被告に電話をかけて問い合わせたところ、被告は、『その件は弟に任せている』などと説明した。」というように、原告に「正当な理由」があるという評価を基礎づける具体的事実を主張する必要があるわけです。 2 法人格否認の主張方法 (1) 法人格の濫用の場合  法人格の濫用とは、会社が株主の意のままに支配されており(支配の要件)、かつ、支配株主に違法または不当な目的がある(目的の要件)ことをいいます。  そうすると、法人格の濫用を主張するには、「会社が株主の意のままに支配されているという評価を基礎づける具体的事実」と「支配株主が有している(違法または不当な)目的」を主張する必要があるわけです。 (2) 法人格の形骸化の場合  法人格の形骸化とは、会社が実質的には株主の個人営業であることをいいます。  そして、裁判例の多くは、株主が会社を完全に支配していることに加えて、 ・ 株主総会・取締役会が開催されていないこと ・ 株券が発行されていないこと ・ 株主と会社の業務が混同されていること ・ 株主と会社の財産が混同されていること などの、法人形式が無視されていることを徴表する事実があってはじめて、法人格の形骸化が認められるとしています。  そうすると、法人格の形骸化を主張するには、「被告が会社の全株式を保有していること」を主張するだけでは足りず、上記のような法人形式無視の徴表事実を具体的に主張する必要があるわけです。  以上、ご参考になれば幸いです。      ---------- 参考文献:江頭憲治郎『株式会社・有限会社法』31頁以下

chakuro
質問者

お礼

早速の回答ありがとうございます。ところで、上記の主要事実を相手方が、争ってきた場合、主張責任はどちらにあるものでしょうか?原則は利益を受ける、原告側にありそうなのですが、取締役会を開催していることについては、被告側にちゃんとやっている証拠を提出してもらうという形でないと、「ないことの証明」というのは難しいと思うのですが・・・。また、逆に財産の混同については、原告としては「あることの証明」なので、原告のほうで立証できないと厳しいでしょうか?

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