衝撃値の扱い方

このQ&Aのポイント
  • 衝撃値とは材料物性の一つであり、材料の耐衝撃性を評価する指標です。
  • 引張強さは静的な場合や非常にゆっくりとした変動荷重がかかった場合の破壊を評価しますが、衝撃値は早い動的荷重がかかった場合の破壊を評価することができます。
  • 衝撃値は材料構成原子の移動が追従できないような状態で破壊が起こるため、材料の強度や硬さとは異なる観点から評価されます。
回答を見る
  • ベストアンサー

衝撃値の扱い方

材料物性の衝撃値の概念がよく理解できません。 この特性値は設計にどう取り入れれば良いのでしょうか? 今の自分なりのイメージとしては、  ・あくまでも引張強さは静的、又は動的でも非常にゆっくりとした変動荷重が作用する時の破壊を評価できる。  ・衝撃値は材料構成原子の移動が追従できないような早い動的荷重が作用する時の破壊を評価できる。 このようなものなのですが、この解釈は正しいのでしょうか?

noname#230358
noname#230358
  • 金属
  • 回答数5
  • ありがとう数6

質問者が選んだベストアンサー

  • ベストアンサー
noname#230359
noname#230359
回答No.2

 引張り試験の引張り強さは設計に使うことができるでしょうが、衝撃値は設計に使うことは難しいでしょう。というよりも、鉄鋼材料のシャルピー衝撃値などは、品質管理的に使用されているだけで規格ではありません。実際、材料の規格表から設計で必要な強度の材料を選択することはできるでしょうが、衝撃値を選択することはできません。  ある材料の強度が規格を外れていたとすれば論外ですが、衝撃値は様々な要因でバラツキます。実は、特に金属の話ですが、引張り強さは組織依存性が小さく、所定の化学成分を外さなければ、所定の強度は出るものです。鋳造品にしろ鍛造や圧延材にしろ、何らかの原因で内部組織が荒れていても、まあ引張り強さは出ますが、衝撃値は比較的敏感に反応します。  それでは、衝撃値は何を表すかというのは、あまり意味がありません。本当に知りたいのは、何らかの原因で亀裂が存在したときに、その小さな亀裂が構造物を破壊するような大割れに進展するか、ということでしょう。その目安としては、破壊靭性値KICなどが知られています。その材料のKICを測定すれば、何mmの亀裂が存在したときに、何Paの平均応力が加わるとその亀裂が進展するかが分かります。別な言い方をすれば、何Paの平均応力が加わるか分かっていれば、何mmの亀裂まで許されるか、が分かります。例えば、造船や橋梁などの溶接部の欠陥は何mmまで、あるいは何個まで許されるか、など。もっとも、どの破壊力学パラメータを用いて評価すべきかは、どのような破壊モードで破壊が進行するかによりますが。  これらの破壊靭性値を実測するのは非常に大変なので、品質管理的に異常がないかについては、簡易的にシャルピー衝撃試験などが行われています。まあ、おおよそ高いか低いかの目安にはなりますが、測定値の力学的意味は考えても仕方ないでしょう。この試験片を壊すのに何Jのエネルギーを使ったか、というだけです。  それと、静的荷重か、動的荷重かを気にされているようですが、これはあまり考えない方がよいでしょう。構造物が破壊するのは、多少スピードがあるようでも、大概は静的荷重の範囲内だと思ってよいでしょう。衝撃値で評価しようとしているのも、亀裂が存在するときの破壊に対する抵抗力です。  100km/hで走行する車と20km/hで走行する車を壁に衝突させたときの破壊形態が異なるのは、作用する荷重が異なるためであって、スピードの違いのためではありません。例えば、車のスクラップ屋にあるようなプレス機を100倍速にしたところで、車の破壊形態が変わるというわけでもありません。  破壊靭性値KICなどの測定は、静的です。では、なぜシャルピー試験は衝撃試験なのか。まあ、やりやすいからとしか言えないでしょう。ジワッとゆっくり折るより、ハンマーでバキッと折る方が装置が簡単だし。金属にとってシャルピーくらいの速度では、ガラスを割るときような材料構成原子の移動が追従できないような早い動的荷重、とは言えません。でも、シャルピーくらいの速度であれば、引張り強さが増加して伸びが減少するくらいの速度ではあります。そういう意味では、金属の塑性変形において転位の移動速度の影響が出るくらいの早い速度と言えなくもないか。

noname#230358
質問者

お礼

有難うございます。 非常に詳しく説明していただき大変勉強になりました。今までの自分の衝撃値の概念が全く間違っていたことが理解できました。他の皆様のご説明とも合わせてみると「衝撃値」は  1. 破壊の抵抗を表すパラメータ  2. 脆性材か延性材かによって塑性変形に要するエネルギーが異なるので衝撃値が変わってくる。この為、低温脆性の閾値を評価するのに使われる。  3. 同一材料でもKやJが大きい欠陥を含むかどうかで衝撃値が変わってくる。実際にどのくらいのKやJかまでは決定できないので材料の余寿命予測には使えないが、簡易試験データとして材料の品質管理等に利用される。 であることが理解できました。 本当に有難うございました。

その他の回答 (4)

noname#230359
noname#230359
回答No.5

 炭素鋼を低温で使用する場合に,衝撃値を問題にすることがあります。炭素鋼は,低温域(-20℃程度)において,低温脆性と称した「もろさ」があります。  そのために,低温で使用する場合,その温度における衝撃値を実測して設計許容応力として利用することがあります。  低温域では,ステンレス鋼を使用すれば低温脆性の問題はありませんが,低コストにするために,炭素鋼を使用します。

noname#230358
質問者

お礼

有難うございます。 低温・高温環境下で使用する機械・部品の設計では、常温では全然考慮しなくてもいいようなことまで検討しなくてはならないのですね。いろいろ勉強になりました。

noname#230359
noname#230359
回答No.4

すでに複数の方が答えられているように、衝撃値は定量的な評価を行う物理パラメータというよりは、扁平試験棟と同様の実用試験的要素が多い試験です。 この試験方法の最も代表的であるシャルピー衝撃試験も、実際に活用されているのは、衝撃値そのものよりは、遷移温度の方が重要である場合が多く、さらに遷移温度も衝撃値よりも延性破面率で求める場合が多いようです。

noname#230358
質問者

お礼

有難うございます。 なるほど。衝撃値は低温脆性の閾値を評価するのに便利なパラメータなのですね。ようやく理解できたような気がします。

noname#230359
noname#230359
回答No.3

実際のシェルピー衝撃試験片を見ると分かりますが、ヘシ曲がって割れが進展している状況が観察されます。ねばい材料は破断部の変形が大きく、脆い材料は変形が小さくなっています。 シャルピー衝撃試験で、破断で吸収されるエネルギーとして表されるのは、割れが進展するまでの応力で破断域の周囲が塑性変形するために使用される部分と割れが進展することに消費される部分の合計と見ることが出来ると思います。割れが進展することで消費される部分は、これは破壊靭性値にも通じる部分ですが、シャルピー衝撃値は、破断域の周囲が塑性変形するために使用される部分を含んだものであるために、設計として取り入れるのが難しくなっています。だからシャルピー衝撃値は、高いほうがねばいという相対的な目安としてのみしか設計では扱えないと思います。

noname#230358
質問者

お礼

有難うございます。 破面とその解釈について説明頂き、衝撃値を感覚的に理解することができました。大変助かりました。

noname#230359
noname#230359
回答No.1

イメージ的にはそのようになるのだと思います。 ○衝撃値とは、破壊に対する抵抗力を数値化したものです。 シャルピーの衝撃試験を調べてみるといいと思います。 衝撃値から靭性値を算出する式がいくつか提案されてます。 靭性値が、破壊靭性値に達すとき裂が進展します。 靭性材料と延性材料の破壊靭性の特徴をあたってみるといいと思います。 ○設計時には、き裂を想定した検討に多く用いられます。むしろ、設計より事故解析の方が多いかもしれません。 静的な場合でも、き裂先端は特異性があるので、K値やJ値などの破壊力学パラメータを用いて評価を行うことになります。

noname#230358
質問者

お礼

有難うございます。 皆様の詳しいご説明で良く理解することができました。

関連するQ&A

  • 引張試験と衝撃荷重試験について

    1.実験でポリアセタールを使った引張試験を行ったのですが、結果(引張応力-ひずみ曲線)をみて金属材料との相違点を調べたいのですがいまいち分かりません。分かる方がいましたら教えてください、お願いします。 2.衝撃加重試験と衝撃試験は同様のものなのですか?もし違うのならば衝撃荷重試験がどのようなものか教えてください、お願いします。

  • 対衝撃荷重の強度設計

    前回質問した内容が不十分なので、再開しました。 申し訳ございません マグネシウム合金のはりは両端支持のモデルにおいて、中央部に鉄の塊を落としても、折れないという設計したいです。座屈・変形してもOK 衝撃は一回きり 鉄は6.8㎏、落下高さは0.5mです。Gセンサーを貼り付けて、加速度と時間tから衝撃荷重を算出して、3ms間最大衝撃荷重4000Nの山状グラフでした。 自分の考え:マグネシウム合金は脆性材料なので、引張強度を超えたら、折れるとみなして、両端支持はりに4000N静荷重をかけ、はり外周の引張応力はせん断応力を超えないように肉厚したいと思います。 4000Nの静荷重で妥当ですか、一般は静荷重をして、動荷重知らない場合は式を用いて、動荷重を算出するが、今は動荷重と荷重時間がすでに分かっているので、一瞬の4000Nに対して、静荷重をどう設定すればよいか? 同じ4000Nでちょっとやりすぎた感じがある ぜひ皆さんの知恵を貸してください ほかの考え方もあれば、ぜひぜひ

  • 工具鋼の降伏点、引張強度について

    工具鋼(SKH2、SKH51など)について、強度解析をしたいのですが、降伏点、引張強度が調べても見つかりません。硬度はJISにも記載されているので、これから引張強度に概算すればいいのでしょうか? 脆い材料なので、弾性域(降伏点)という概念がなく、SSカーブはある応力まではほとんど歪まずに、ある応力で一気に破壊するという形になるのでしょうか? 解析をする時にどういう物性値を与えてやると正しいかが分かりません。 どなたかわかる方ご教授ください。

  • 対衝撃荷重の強度設計

    3ms間4000Nの衝撃荷重に対して、 梁の強度設計をどう考えればいいですか 梁がせん断しないと目指しているが、普通に考えれば、4000Nでかける場合に曲がった梁の外周の引張応力を0.2%耐力応力を超えないようだけにすればOKですか。 それは塑性変形させない考え方ですか 塑性変形してもOK、せん断さえしなければっていう設計ありますか

  • 衝撃吸収素材について

    人間に触れるある機器を作っているのですが、 安全性を持たせるために衝突したときの衝撃を 吸収する素材を探しています。 衝突したときの衝撃荷重を小さくできる、そんな素材です。スポーツシューズの靴底材料やαゲル?などが 適当だと思っているのですが、入手方法や素材特性など ご存知の方がおりましたらよろしくお願いします。 それから、このような衝突現象を扱った専門書や資料も なかなか見つからなくて困っています。もしご存知でしたらアドバイスの方よろしくお願いします。

  • 金属材料の衝撃値について

    衝撃値について教えて下さい。 通常部品の強度を計算する時は、引張り強さを使用しており、 衝撃が加わる部品の設計にも、衝撃力(質量×減速度)を出して、 やはり引張り強さで計算しています。 しかし、文献によるとシャルピー衝撃値は硬い金属材料(炭素鋼)ほど 低くなっています。 衝撃値というのは、設計ではあまり使われないようですが、 設計で衝撃を把握するのは難しいのでしょうか?

  • ガラエポの特性について

    初めて質問します。 ガラエポについて、その特性(引張強さ、せん断強さ等 金属材料で良くある物性値)について教えて下さい。 自分で調べてヤング率は分かったのですがそれ以上 分かりませんでした。 よろしくお願い致します。

  • 回転アームの長さと衝撃力の関係

    質問をいたします。 重心位置が回転軸よりLmm距離のアームにおいて、回転軸よりL/5mmの距離にストッパを設置する検討をしております。 回転軸中心でアームが回転し、アームがストッパに当たることにより回転動作が停止します。ストッパの設計上の強度を検討するため、Lmm位置にロードセルを設置し、衝撃力を測定しました。衝撃力を実測し、ストッパへ掛かる衝撃力を計算しようと考えておりますが、静荷重ではないので、どのように計算すればよいかわかりません。 回転軸よりLmm距離で実測された衝撃力をFとした場合、ストッパに作用する動的な衝撃荷重の計算の仕方を教えてください。剛体で考えた場合の計算方法です。 よろしくお願いいたします。

  • 衝撃荷重を受ける部材の接着強度

    質量2gの基板を接着剤で固定しています。 落下時の衝撃は実測で、 衝撃値:4400G 作用時間:0.6ms との結果です。 この衝撃に耐えうる接着強度としたいのですが、 質量×衝撃G≦接着強度 として考えると 78N(8kgf)の接着強度となります。 0.6msの瞬間での荷重ということを考慮すると、 実際にはもっと低い値で満足するのではないかとも考えており、 衝撃荷重と静圧荷重の関係を御教示いただきたいです。 接着強度は静圧荷重で試験しており、 接着仕様も静圧での指定になります。 どれだけの接着強度が必要になるのでしょうか?

  • 機械設計者の高評価・低評価 力学・計算・材料特性…

    機械設計者の高評価・低評価 力学・計算・材料特性・加工知識など 私は、今転職をして機械設計をしています。以前は金型設計をしていました。 質問ですが、当社の機械設計者しか見ていないので、 何とも言えないのですが、 機械設計者は、加工の知識や材料の知識(材料の特性)などはあまり詳しく知らない方が多いのですか?  また機械設計者自体も、材料の知識や加工の知識を覚えようという意識が 低い・そんなに知らなくてもいい風潮・それらについて詳しくても設計者として評価されない風潮があるのでしょうか? 私は、以前金型設計をしていましたので、加工の知識や材料の知識については重要でした。そして、その知識は、金型業界であろうが、一般産業機械であろうが、設計という仕事に携わるなら、どこの会社に行っても必要な知識と考えていました。  材料の知識がないと、適切な材料が使えない。強度や腐食などいろんなことが考えられます。どこにどんな材料を使えばいいかを知る為には、それぞれの材料の特性を知っておかなければいけません。と、言うのが私の考えです。 加工についても同様です。 加工できないものを図面にすることはできません。加工の知識がないと、 図面が描けません。 私は、機械設計者でも同様に、材料の特性の知識や加工の知識が必要と考えていました。 しかし、冒頭にも言いましたが、当社の設計者はそれらの知識が乏しいのです。そして、覚える気もあまりなさそう?な感じなのです。 全く知らないという訳ではないのですが、んー・・・・と思ってしまうんですよね。それくらい知っていないとマズイ・恥ずかしい・設計者なら知っていて当然じゃない?と思うことがしばしばなんです。 部長は結構詳しいので、私以外の設計者はわからない時は部長に聞いているのですが、その部長も、知識が乏しい設計者に勉強しなさいなどの教育指導がないのです。 それをハタから見ている・聞いている私には、 機械設計者って材料の特性知識や加工知識を持っていても、 評価されないのかな?当社に限らず、世間的に機械設計者は、 材料の特性や加工の知識はあまり持っていないのかな? と、疑問が沸くのです。知識がなくてもそれほど評価が下がるわけではなかったり、知らなくても気にしなくてもいいのかな?と思ってしまうのです。 でも、私には必要と感じます。 社内の人間やお客と交渉の時にも、相手に説明する時には 必要だと思いますし。 でも、実際どうなんでしょうか? そんな知識より、力学的な知識や計算ができる方が評価されるのでしょうか? 逆を言うと、力学的な知識がなく、いろいろな計算が出来ない人は、 凄く評価が低いのでしょうか? いくら材料の特性知識があっても、力学的なものが出来なければ、 評価は低いのでしょうか? 冒頭に言いました、当社の機械設計者は、材料や加工の知識はあまりないですが、今言ったような、力学的な知識や計算は出来ます。 それが理由なのかわかりませんが、結構評価が高いです。 勿論それだけではなく、設計したものがいいからだも思います。 ただ、それだけの計算が出来、設計したものも誰でも出来るという簡単なものではないモノを設計しているのに、材料や加工の知識は乏しいのです。 他社の機械設計者と話した事や身近にそういった人がいないので、 世間の機械設計者がわかりません。 機械設計者はあまり、材料や加工の知識が詳しくなく、それが乏しくても評価は低くならないのでしょうか? そして、それらの知識が乏しくても、計算が出来たり力学がわかると、 高評価になるのでしょうか? 皆さん宜しくお願いします。