運動エネルギーと殺傷能力について - その2
運動エネルギーを(弾丸の)断面積で割る、という方法がどうも矛盾しているように思います。下記はメーカー発表の公称データの一部です。
日本の警察のみ世界でただひとつ、弾丸の断面積で割る方法を採用していますが、日本の警察を除く全世界の銃器・装弾研究者(警察・軍・大学の銃器工学部・ガンスミス・銃器メーカー、ハンター等)は、断面積で運動エネルギーを割っても意味がないとしています。
(口径インチ) (運動エネルギー) (運動エネルギー)
銃弾名 銃器 ft-lbs. 威力の比較 ジュールに換算 断面積当り
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.22LR スタームルガーMKI 100 FP. 1とすると 約136J 571J/cm2
.32ACP FN M1910 130 FP. 約1.3倍 約176J 369J/cm2
.380ACP ワルサーPPK/S 190 FP. 約1.9倍 約257J 405J/cm2
.38SPL S&W M36 260 FP. 約2.6倍 約352J 554J/cm2
.45ACP コルトガバメント 390 FP. 約3.9倍 約528J 515J/cm2
この様に見ると、22口径が一番殺傷能力があることになります。
.22LRは、 40グレイン, 1061 fps.
.32ACPは、71グレイン, 908 fps.
.380ACPは,100グレイン, 923 fps.
.38SPLは、128グレイン, 955 fps.
.45ACPは、185グレイン, 974 fps.
断面積当りの運動エネルギーが高い程殺傷能力がある、という警察のこの矛盾をどうか説明してください。
例えば(公称データより)ボーリングの16ポンドのボール(重さ7.257kg, 直径21.831cm)と長い針(重さ0.21g, 直径0.98mm)を高さ約100mの所から下へ落下させます。地上には横になっている人間がいて、その人体にその落下物が当るとします。その運動エネルギーは下記のようになります。(秒速44.1m)
・ボーリングボール:0.5x7.257x44.1x44.1=7058J
・針:0.5x 0.00021x44.1x44.1≒0.2033J(垂直で落ちると仮定)
ボーリングのボールの運動エネルギーは、45口径のピストルで13発撃たれたのと同じダメージを受ける、ということになりますが、針の方は21gの力で押し当てるのと同じになります。これらを各々断面積で割ってみると、警察のJ/cm2規定により、
・ボーリングボール:約19J/平方cm (殺傷能力なし、となる)
・針:約27J/平方cm (殺傷能力あり、となる)
警察は弾丸の大きさ、形状、材質の指定は一切せず、平方cm当りのジュール計算だけで殺傷能力を決めています。これらを圧縮空気で飛ばしたとしても同じです。この矛盾をどうかご説明ください。
銃刀法第2条により、あらゆる大きさ(直径)の弾丸が対象となっています。要するに、質量と速度を有するものが、その大きさに関係なく 20J/cm2以上であれば殺傷能力のある銃器、砲と見なされます。これは世界で唯一日本の警察のみが採用している定義で、欧米やその他の国々は、弾丸の持つ運動エネルギーで法的に分類しています。
よろしくお願いします。