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回答No.1

本件は、千代田生命保険相互会社は、東京都渋谷区広尾一丁目所在の約一万三○○○平方メートルの土地一以下「本件土地」という。)を所有し、従前、低層施設を建築、所有していた。本件土地は、JR恵比寿駅北東約五〇〇メートルに位置し、西側から北側にかけて道路が接し、南方には大通りを挟む商業地域を控えている。本件土地は住居地域内にあるが、周辺は敷地が整備された一戸建ての住宅や中層の共同住宅が多く、北東側は第一種住居専用地域が広がり、宗教施設や外国の在日公館が多く存在し、緑の多い高級感のある低層住宅向きの成熟した住宅地となっている。千代田生命は、本件土地を敷地とし、地上二二階建て、高さ一一〇・二五メートルのタワーを有するオフィスビル、広場等から成る総合建築物一以下「本件建築物」という。一を建築する計画を立て、建築基準法五九条の二に基づくいわゆる総合設計許可を受けた。この許可は、同法五二条一項所定の容積率の制限及び南側隣地に係る同法五六条一項二号イ所定のいわゆる隣地斜線制限を緩和するものである。Xらは、本件建築物から直線距離で一三・五メートルないし一二七・五メートルの範囲に、いずれも建築物を所有している者(居住者のほか、建築物を賃貸している者もいる。一であるが、本件総合設計許可は所定の要件を欠くなどと主張してその取消しを求めて本件訴訟を提起した。というものである。 本件の主要な問題点は、総合設計許可に係る建築物の周辺の建築物の居住者、所有者が総合設計許可の取消しを求める原告適格を有するか否かにある。 行政処分がされた場合に、その処分の名宛人以外の者が当該処分の取消訴訟を提起することができるかどうかは、第三者の原告適格と呼ばれ、現代的、かつ、困難な問題である。この点に関しては、行政事件訴訟法九条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、と解するのが判例の確立した立場である。 本判決も、従来の判例法理と同様の見地に立ち、「建築基準法五九条の二第一項が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むか否かを検討している。同法五九条の二第一項は、建築物の容積率制限(同法五二条)、高さ制限(五五条、五六条一を超える建築物の建築につき、一定規模以上の広さの敷地を有し、かつ、敷地内に一定規模以上の空地を有する場合においては、安全、防火等の観点から支障がないと認められることなどの要件を満たすときに限り、これらの制限を緩和することを認めている。同項が、敷地の規模を拡大して土地の有効利用を推進し、敷地内にオープンスペースを確保して市街地の環境の整備改善に資するようにするという一般的公益を目的としていることは明らかであるが、同項は、それにとどまらず、必要な空間を確保することにより、当該建築物及びその周辺の建築物における日照、通風、採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに、地震、火災等により当該建築物が倒壊、炎上するなど万一の事態が生じた場合に、その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことがないようにすることを目的としている。」とし、同項の定める総合設計許可に基づいて建築される高層ビルにつき、その倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の周辺地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者について、同項に基づく許可の取消訴訟における原告適格を肯定したものである。処分の結果生じ得る災害により生命、身体に対する直接的な被害を受けることが想定される住民について、当該処分の取消しを求める原告適格を肯定することは、前記のとおり先例がある。本判決が、総合設計許可に基づいて建築される建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の周辺地域に存する建築物に居住する者について、同項に基づく許可の取消訴訟における原告適格を肯定したのは、右と同様の見地から判断したものであろう。 本判決は、さらに、建築物の所有者についても原告適格を肯定しているが、これは、都市における建築物の相互関係を踏まえた建築基準法の規制の特質にかんがみた判断であろう。なお、総合設計許可は、建築物の容積率制限、高さ制限を緩和するものであるから、本判決は、同法五九条の二第一項を解釈するに当たって、当然のことながら、建築物の容積率制限、高さ制限に関する規定一同法五二条、五五条、五六条一の趣旨・目的等を検討している。しかし、本判決は、これらの規定が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと端的に判示しているわけではなく、この点の判断は、なお今後の検討にゆだねられているとみるのが相当であろう。

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