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 本件は、いわゆる北海道学テ事件または永山中学校事件といわれ、昭和36年度全国中学校一せい学力調査に際し発生した刑事事件として、本件と同時に言い渡されたいわゆる岩教組事件とともに教育界の注目を集めた事件である。 被告人らは、北海道旭川市立永山中学校で行われた右学力調査を阻止するための説得活動をする目的で同校校舎に侵入し、また、学力調査を実施中の同校校長に暴行を加えたもので、建造物侵入、公務執行妨害として起訴された。 上告審における最大の争点は、右学力調査の適法性の有無であった。 第一に、本件学力調査の実質上の主体は誰か、という問題がある。 事柄の実質を直視する限り、本件学力調査が文部大臣のイニシアティブにより始まり、実施されたことは疑いがく、本判決は上記論点については、国によって実施されたと認めた。 第二に、教基法10条の解釈の前提として、憲法が、公教育制度をいかなるものと観念しているかの考察が必要となる。 この点につき、現在、二つの極端に対立する見解、すなわち、一は、国家は公教育における教育の内容および方法についても広くこれを定めることができるとする、いわゆる「国家の教育権」説と、他は、子どもの教育の内容および方法については、国は原則として介入権能をもたず、教育は、その実施にあたる教師が、その教育専門家としての立場から、その内容および方法を決定すべきであるとする、いわゆる「国民の教育権」説とが、激しく対立している。 そして、本判決は、親の教育の自由、私学教育の自由、教師の教授の自由につき、それぞれ限られた一定の範囲でこれを認めることができるとしながら、それ以外の領域においては、国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、しうる者として、憲法上は、子ども自身の利益の擁護のため又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するとした。 すなわち、基本的には、国の教育内容決定権能を認め、これを制約するものとして、親の教育の自由、私学教育の自由、教師の教授の自由等が存在するものとしたのである。 憲法26条は、子どもの学習をする権利を認め、教育はこの学習権を充足すべき責務として行われるべきことを定めたとしたことや、憲法23条は、普通教育の場においても一定範囲における教授の自由を保障したと解すべきものとしたこと等は、憲法26条、23条に対する最高裁の初めてといってよい判示である。 続いて、教基法10条の解釈として、本判決は、教育行政機関の法令に基づく行政も「不当な支配」となりうるとし、ただ、教育行政機関の権限は、単に教育の外的事項に限られることなく、教育内容についても許容される目的のために必要かつ合理的と認められるとした。 第3として、学習指導要領の法的拘束力の有無については、、「教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準」にとどめられるべきだとしながら、学校教育法38条、106条により文部大臣に与えられた「教科に関する事項」を定める権限に基づき作成されたものとして法的拘束力を認めた。 以上の解釈を前提として、本件学力調査が教基法10条に違反するかどうかについて、本判決は、本件学力調査は、その目的、方法、その及ぼす影響に関し種々の問題点はあるが、調査目的全体としては文部大臣の所掌事項と合理的な関連性を有し、そのために本件のような方法による調査実施が必要であるとすることに合理性があり、その実施により、調査の必要性をもっても正当化できないほどの教育に対する強い影響力、支配力を生ずるものとは認められないとして、本件学力調査は、教基法10条に違反しないとした。

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