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小林秀雄、江藤淳

yatiyochanの回答

回答No.6

 小林秀雄について   私は、学生時代に国文研の夏季合宿で、小林秀雄の講演を聴いた一人ですが、最初ユリ・ゲラーの名前が出てきたので、眉にツバ塗った方がいいかな、なんておもいながら聴いてたんですが、結局終いまでよく解りませんでした。  ただ、小林が声を強めて語った部分に、ベルグソンに絡んで、ある婦人が戦場にいる夫の死を夢に見た話を例に、小林がそれが正夢だったかどうかが重要なのではなく「本当に切実な経験というものは、主観的でも客観的でもないのですね。つねられて痛いと感ずる経験とおなじです。痛いというのは主観的なことか客観的なことか。どっちでもないじゃないか。本当に直接には僕の心の中の経験じゃないか」というのがあり、これがどうも心にひっかかって下宿に帰ってからもずっと意味を考えてましたところ、ある日、夕陽が部屋に差し込んでいるときぼんやり考えていたら、ふっと答が解ったような気がして眼の前が開けた開放感に浸ったことをよく覚えています。その答が何であるかを説明するのは私の文章力では到底無理なので、これ以上申し上げませんが、それ以来私は自分の『直観力』を大切にするよう心がけました。また、例えばその後の読書でも接する心構えが変わりました。  小林秀雄の著作が今日まで読み継がれるのは、単なる文芸評論ではなく、それが小林自身の感性の表現であり、読み手がその感性に共感するからであって、彼が評論家として優れているかどうかは全く論外なんですね。感性の表現であるから、そも彼は自分の文章を人に解って貰おうと書いてるはずがないし、その感性に共感できない人がいくら読んでも解らないのは当然でしょう。  質問者様は、 >小林が『あなた方タクシーに乗るっていうことは、運転手に自分の命を預けてるんだよ』みたいなことを言っていたように思います。彼は、タクシーに乗るっていうときにも、そこまで考えてるのかって思いましたが、でもよく考えてみると、タクシーに乗るときに、運転手に命を預けてるっていう感覚で乗る人がどれ程いるでしょうか?  と書かれていますが、たしかに小林はそこまで考えてるし、そんなこと考えない人もいます。それは優劣の差でもありません。精神とか意識の領域であって小林は同じ講演の中で「今日科学の言ってるあの経験というものは合理経験です、だいたい私たちの生活上の殆ど全ての経験は合理的ではないのですね。そのなかには感情もイマジネーションも色んな物が入ってる。科学はそれを合理的経験だけに絞って計量出来る経験だけに絞ったのです。いろいろな可能な方向に伸ばすことが出来る広大な経験の領域を、勘定することのできる、だから今日の科学は数字がなければ成り立ちません」というようなことを語っていました。  ある花を見て美しいと感じる感性は、理屈ではありません。美しいと感じられないのもひとつの感受性であって、質問者の方が小林の文章を難解でぜんぜん分からない、という感性が大切だ、と小林は語っていた、と思うのです。  ただ、ふつうなら二度と小林秀雄を読もうなんて思わないでしょうし、日常生活に小林秀雄は必要ないにもかかわらず、こういう質問をされている、というのは心のどこかに引っ掛かりがあるからではないでしょうか。もし、もう一度読む機会があるのでしたら岩波文庫の小林秀雄『初期文芸論集』あたりを寝転がってのんびり読まれてはいかがでしょうか。青年期の血気に満ちた文章に小林の人間臭さを発見できるかもしれません。  

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