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小林秀雄、江藤淳

kadowakiの回答

  • kadowaki
  • ベストアンサー率41% (854/2034)
回答No.4

私としては、小林秀雄や江藤淳は確かに同時代の他の批評家と比較しても、間違いなくより素晴らしい、立派な批評家だったと思っています。 その理由については、彼等がいずれも最もラディカルで前衛的な批評精神の持ち主であると同時に、筋金入りの伝統主義者や古典主義者だったからと説明するしかないような気がします。 特に、彼等の批評家デビュー時に書いたフランス象徴詩論や漱石論などを読めば、このことがよりはっきりとするはずです。 >気になって時々彼らが書いた本を手にとって見るんですが、私には取り付く島もないほどに、理解不能なんです。 私にも、「理解不能」だと感じる批評家や文学者はたくさんいますが、小林秀雄や江藤淳は比較的すんなりと受け入れられると言うか、概してわが意を得たりという快感を覚えます。 思うに、「理解不能」というのは、単にこちらの「理解」の枠組み、パターンが読む作品(小説、評論等)との間に齟齬、ズレをきたすということにすぎないのではないでしょうか。 少なくても、質問者さんに「何か知的欠陥がある」わけではなく、質問者さんが興味・関心をそそられるジャンルやテーマと小林秀雄や江藤淳らのそれとがあまりにも違いすぎているだけのことだと思います。 たとえば、私は詩が好きで、優れた詩は平均的な小説よりもはるかに写実的だと信じて疑いませんが、多くの小説ファンの場合、詩は写実的どころか、難解な比喩が多く、詩人はもっと分かりやすく書けないものかと不満を感じていると言えなくはないですよね。 あるいは、写真と絵画とでは、映画と演劇では、それぞれどちらが写実的かと問われると、芸術に無関心な人ほど、写真や映画の方が写実的だと素朴に信じて疑わないようです。 小林秀雄も江藤淳も、敢えて言えば、良くも悪くも、こういう常識的な芸術観とは無縁な批評家でして、どう考えても虚構(フィクション)でしかない芸術作品を生み出さずにはいられない芸術家の根底に潜んでいる諸問題の正体、真相をえぐり出さずにはおれなかったのだと思います。 >何しろまったくわけが分らないって言う感覚は拭い去りがたく、こんな難解な文章を書いた彼らに逆に反感を持ってしまいます。 う~ん、もし彼等の文章を心底から分かりたいと思うなら、読む側の方で自分が無意識裡に固執している固定的、類型的な型枠を壊したり、ズラしたりするしかないと思います。 言い換えますと、自分の一定程度以上に開こうとしないドアのちょうつがいを修理して、より広角度に開くようにするしかないということです。 あるいは、自分がこれまで自明視、当然視してきた考え方、発想、価値基準等は本当に正しいのか、だとしたら、その根拠は何か? と自問自答するというのも効果的です。 なお、長谷川泰子は随分前(彼女の晩年)に教育テレビで吉田熈生氏と対談していたのを覚えていますが、やはり彫りの深い、女優然とした女性でした。 若き頃、中原中也や小林秀雄といった怪物的な詩人、批評家を手玉に取っていただけに、やはりなかなかの傑女だったのではないでしょうか。

akarinn365
質問者

お礼

かなり長い文章で、ご回答いただき有難うございました。 私は、学生時代、国民文化研究会の主催する夏期合宿で、小林秀雄の講演を聴いたことがありますが、ほとんど内容に関しては、忘れているんですが、いまだに覚えていることがあります。 それは、小林が『あなた方タクシーに乗るっていうことは、運転手に自分の命を預けてるんだよ』みたいなことを言っていたように思います。 彼は、タクシーに乗るっていうときにも、そこまで考えてるのかって思いましたが、でもよく考えてみると、タクシーに乗るときに、運転手に命を預けてるっていう感覚で乗る人がどれ程いるでしょうか? 言ってることは、聞いたときには、なるほどなって思うんだけど、後で考えてみると、何か変だなっておもちゃいました。まあ文学っていうものは、そういうもんなんでしょうけれど...

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