非線形分極とは?電場の強さと分極の関係について
- 非線形分極とは、物質に入射する光の電場が強い場合に、分極の非線形項が現れる現象です。
- 実際の物質中では、電場の2乗や3乗に比例して原子や電子が対応しています。電子が電場の振動についていけなくなるイメージは分かりますが、電場の2乗や3乗に比例する部分のイメージが分かりません。
- 分極をベキ級数で展開する理由は、電場の強さによる非線形項が現れるためです。なぜEの二乗や三乗に比例する項でなくてはならないのか、他の小数乗ではなぜだめなのかについても教えてください。
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非線形分極
非線形分極について質問が有ります。 物質に入射する光の電場が強い場合、分極の非線形項が無視できなくなり、分極は P=ε0χ(1)E+ε0χ(2)EE+ε0χ(3)EEE+... と表せると言います。これに関する質問です。 1)実際の物質中で、EE、EEEに比例して原子・電子がどのように対応をしているのでしょうか?電子が電場の振動についていけなくなるイメージは分かるのですが、電場の2乗、3乗に比例する部分のイメージが分かりません。 2)分極をベキ級数に展開できることは分かるのですが、なぜEの二乗(EE)、三乗(EEE)に比例する項でなくてはならないのでしょうか?小数乗(例えば1.5乗)ではだめなのでしょうか? 以上2点、もし御存知したら教えて下さい。また、それに関する教科書等有りましたら教えて下さい。 よろしく御願いします。
- sapanaya
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>>非調和振動子の振動運動が、基準振動の整数倍(倍音)になるのは、電子の分布や振動・回転準位が、とびとびの値を取ることと関連しているのでしょうか? ●『振動・回転準位が、とびとびの値を取る』のは、そのシュレーディンガー方程式の解として離散固有値とその波動関数が得られることから来ていますが、同様に非調和項を加えたポテンシャル関数を用いて解の波動関数を求めると、ψ=a_1・ψ(基準振動)+a_2・ψ(2倍音)+a_3・ψ(3倍音)+・・・が得られるということだと思います。(a_2,a_3,,はa_1に比べたら非常に小さな項になる。いわゆる「摂動項」です。)ただし、基準振動についての波動関数はエルミート関数としてよく知ら れていますが、ψ(2倍音)、ψ(3倍音)をうまく表す関数は無く、まともに論じることはできません。 このサイトの全論文が非常に詳細な研究を行っています。 http://comp.chem.tohoku.ac.jp/hirose 非調和項を加味した解については、その中の http://comp.chem.tohoku.ac.jp/hirose/SFG%20%95%aa%8c%f5%93%fc%96%e5.pdf で触れて有ります。優れたサイトで、光の吸収・散乱という事象を量子力学的に正面から取り組んでいるところが特徴だと思います。 直接波動関数を求めることはこのように大変なことなので、通常は『定性的な』議論を行うのみです。 ●『基準振動が非調和成分の影響によりひずんだ振動を行ったとき、そのひずみが高調波(2倍音・3倍音)として表される』ことを理解したのは、ぜんぜん関係の無いと思われるようなトランジスタ回路の『逓倍回路』といわれるところでの説明からです。(アマチュア無線からの知識なのですが。) トランジスタの増幅曲線が直線的な比例関係のとき入力したsin波は振幅のみが増幅されたきれいなsin波しか生じないのですが、増幅がx^2のような直線的な増幅ではない場合には、『いびつにひずんだsin波』が生じます。ところがそのひずんだsin波はもとの周波数の2倍・3倍・・・の周波数のsin波が生じているとして説明できるのです。その波をフィルター回路で取り出すと元の周波数の2倍・3倍・・・の周波数の電波を作り出すことができます。 アマチュア無線では、使える電波が7MHz,14MHz,21MHz,28MHz,50Mhz,144MHz,433MHz,,となっていて、倍音・3倍音の関係に有るように許可されています。それは、1つの水晶振動子から取り出した高周波を変調させて2倍音・3倍音を作り出すという技術的な理由からだというのです。電波法がいろいろな水晶振動子を手に入れることのできなかった発信回路の貴重な時代に作られたからというのですが・・・ 『ひずんだsin波は元のsin波の高調波を加えて表される』ということがポイントなのですが、この高調波成分の大きさを求めるのはフーリエ分解といい、数学的な技法になっています。スペクトル分解の大本になる理論ですね。ノコギリ波や三角波など高周波の扱いでは不可欠な理論でこのような電気関係の分野か、数学の解析関係で近似関数を求めたりする問題がたくさん有ります。 周期関数の性質として、調和振動が非調和成分によってひずみを生じたとすると、そのひずみは基準振動の高調波を加えたもので表されるということなのです。フーリエ級数は微分方程式の解法にも重要なので、ぜひ早めに勉強して下さい。 >>さらに理解を深めるために、分子軌道法の摂動論的な取り扱いに関する適当なテキストが有れば教えて頂けないでしょうか。 実は自分はかなり高齢で、知識がかなり古くなっています。摂動法は基本原理的なものでそう大きな進歩は無いと思いますが、分子軌道法は大きな変化をしたのでは?と思います。自分の読んだものは古くなっていると思いますので・・・ 現役の方からのアドバイスがいただけないものでしょうかね・・・・?
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- ichiro-hot
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○先に2)から答えてみます。 最初に分子が電子分布の偏りを持ち,電界E0のなかで分子内の電気的な偏り=永久双極子モーメントμを持つとします。次に外部電界Eが加わり、電子の偏りが生じたときの双極子モーメントをμ’とします。 このとき外部からの電界Eによって生じる偏りが誘電分極であり次式のΔμ(=P)に相当する量です。 『Eが小さい時』にはΔμはEに比例すると考えて、その比例定数αを分極率といいました。Eはそれぞれベクトル量なので、αはベクトル間の変換を表すテンソル=『分極率テンソル』です。 Δμ=α・E つまり P=α・E (ただしE≦E0です。) です。この近似は古典力学の弾性体のひずみ(応力テンソル等)で用いられているものと全く同じです。そのもっとも簡単な場合がばねで、fookeの法則F=kxです。 これには次の計算が根底に有ります。 P=Δμ=μ’-μ=μ(E0+E)-μ(E0) 平均変化率についての近似式とを比較すると、意味がより明確になります。 {f(x+Δx)-f(x)}/Δx≒f’(x) (ただし|Δx/x|<<1) これから、」 f(x+Δx)-f(x)≒f’(x)・Δx または、 f(x+Δx)≒f(x)+f’(x)・Δx これは数学で関数の級数展開公式=tayler級数であり、|Δx/x|<<1の条件化で、talerΔx^2以上の項を微小項として無視したものです。 tayler級数を高次項まで書き下すと f(x+Δx)=f(x)+f’(x)・Δx+{1/(2!)}f’’(x)・(Δx)^2+{1/(3!)}f’’’(x)・(Δx)^3・・・ =f(x)+Σ{1/(n!)}・f^(n)(x)・(Δx)^n ;f^(n)(x)はf(x)のn回微分 このように近似にtayler展開を用いていますから、 P=Δμ=μ(E0+E)-μ(E0) =μ’(E0)・E+{1/(2!)}μ’’(E0)・(E)^2+{1/(3!)}μ’’’(E0)・(E)^3・・・ と,E,E^2,E^3,・・・の級数に展開されます。 これ以外に数学的に正しい近似の方法が有り、それを用いてエネルギー等を表すことができて、しかも微分方程式に用いた時に簡単に解が求められるようなことが有ればいいのですが、なかなか・・・ということですね。 (本来はテンソルなので,各成分について考えていることを前提にして下さい。) 以上、2)については、数学の近似計算の方法としてTayler級数を用いているために、そのようになるというのが答えです。 ○ 1)について 『実際の物質中で、EE、EEEに比例して原子・電子がどのように対応をしているのでしょうか?』 ●1;ミクロレベルで=力、伸び、ばね定数? ばねで考えると(Δx)^2,(Δx)^3,・・・は何を表しているでしょうか? 伸びが大きくなりすぎたときの直線的な伸びからのずれですね。いろいろな現象が考えられると思いますので・・・そのようなずれが、伸びと縮みに対して対称に起こるような誤差なら(Δx)^2,(Δx)^4・・・にかかわるでしょうし、伸びたときと縮んだときに反対称の効果が有れば,(Δx)^3,(Δx)^5,・・・にかかわるというように考えてみてはどうでしょうか。分子内の電子の分布も同じで、電場が大きくなりすぎて電子の変移がそれ以上変化できくなったりする(対称),大きな振動が起こると原子核が相互に近づくときは起こりにくく遠ざかるほうが起こりやすい=原子間隔が伸びるそのようなことが分極率に及ぼす影響(反対称)とか、それがどのように影響するかを考えてみるしかないでしょう。これを考えていくと、分子軌道法の摂動論的な取り扱いになるでしょう。 ●2;マクロな解=振動運動の周期運動レベルで・・・・ もう1つ、考え方が有って、光の吸収や散乱にどのような影響を及ぼすかというような場合が有ります。『光の入射⇒電子の分布や振動・回転状態の変化に伴う分子によるエネルギーの吸収』を最も簡単な<調和振動子近似の解>を求めておき、それが<調和振動子とのずれ>でどのような結果が得られるか・・・と考える場合です。 この場合にも摂動法が有効で、元の調和振動子に摂動(小さな変化)を与えたときにどのようなずれを生じるかと考えて非調和振動子の解を求めていきます。 この「答え」を考えるときにも『Fourier級数(=任意の周期関数はsin(nθ)とcos(nθ)の級数和で表される)』という数学の方法が必要なのです。 数学の言葉は一般論なので、それを物理や化学の言葉に置き換えるのは大変ですが、これを言い換えると、『調和振動子の基準振動がわかっていれば、非調和振動子の振動運動は基準振動の倍音(2倍音・3倍音・・・)を用いて表される』ということになります。 ある意味1)、2)は「微分方程式」と積分を行った「解」との関係みたいなものです。ばねを力、伸び、ばね定数で現象を考えることも可能でしょうし、それから運動方程式を立てて解いた結果:周期運動の二つのレベルが有ります。 分極率や双極子モーメントの非調和成分は2)の「解のレベル」で見ると光の吸収や散乱での「倍音の吸収・散乱が生じる」という結果になります。 物理・化学のイメージを大切にしながらですが、数学の級数展開等の解析関数について勉強することが必要でしょう。
お礼
丁寧に御回答頂き有難うございました。 以下の説明で大分イメージが明確になりました。 "分子内の電子の分布も同じで、電場が大きくなりすぎて電子の変移がそれ以上変化できくなったりする(対称),大きな振動が起こると原子核が相互に近づくときは起こりにくく遠ざかるほうが起こりやすい=原子間隔が伸びるそのようなことが分極率に及ぼす影響(反対称)とか、それがどのように影響するかを考えてみるしかないでしょう。" 非調和振動子の振動運動が、基準振動の整数倍(倍音)になるのは、電子の分布や振動・回転準位が、とびとびの値を取ることと関連しているのでしょうか? さらに理解を深めるために、分子軌道法の摂動論的な取り扱いに関する適当なテキストが有れば教えて頂けないでしょうか。 以上、よろしく御願いします。
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