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回折してない光を見ることが出来るのでしょうか?

noname#67881の回答

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noname#67881
noname#67881
回答No.8

No1です。 当初の質問は「素朴な疑問」と思えたのですが、回答が変な方向に行ってしまったように思えました。 締めのつもりで、追加回答いたします。 〔光について〕 光が波動性を持つのはご存知ですよね。 この波動性のため、光は空間的な広がりを持ちます。色々な条件があるのですが、大雑把に言って、広がりは光の波長程度になります。例えばある光路を伝播する光があると、その縁から光の波長程度の範囲内では、ちょうどボケたように光が広がっています。したがって、縁から光の波長程度の範囲内は、同じ光と見なします。 ある物体を、光学系を用いて結像させます。像を微視的に見ると、縁がぼやけてしまいます。縁がぼやけることなく鮮明に見える限界を「回折限界」と言います。理想的な点を結像させた像を微視的に見ると、広がりを持った円に見えます。この円のことを「エアリーディスク」とか、「錯乱円」と言います。円ができるそもそもの原因は上に述べた理由ですが、その円のサイズは光学系と光の波長によって決まります。光学系の口径が大きいほど、「Work Distance」(=光学系と対象の距離)が小さいほど、波長が短いほど、円の半径は小さくなります。でも、どんなに小さくしても、光の波長程度が限界です。また、例えば、口径を小さく(1cm)、Work Distanceを長く(10cm)とすると、円の半径は数μmぐらいにまでなってしまいます。 「光学系の分解能」とは近接する2点を識別できる最低の距離のことで、上に述べた円が重ならない状態、つまり錯乱円の直径になります。円のどこまでを直径とするかは、決まりがありますが、ここでは説明を省きます。 「量子電磁力学」とは、電磁場と荷電粒子の関係を扱う電磁気学を、微視的な領域でも使えるようにした理論です。どの程度微視的かというと、扱う対象によって異なってきますが、大雑把に言って1nmか、それ以下ぐらいかな?素粒子物理学や物性理論を行うのに必須の理論ですが、μmオーダー以上の現象で登場することはあまりありません。 ファイマン、シュウィンガー、朝永振一郎により完成され、この3名は1965年ノーベル賞を受賞しました。 〔光と物質の相互作用について〕 金属中には多くの「伝導電子」があります。光が金属に当たると、伝導電子の影響を受けます。 金属中の電子は、簡易にするため、「自由電子」として扱われます。自由電子では、金属を構成する各原子の影響を受けず、自由に運動する粒子の集団として扱われます。自由電子でなく、きちんと計算してやると、あるエネルギーの領域(=「伝導帯」)にある電子群が伝導に寄与することになり、各原子の影響を考慮した扱いができます。 伝導電子は、外からのちょっとした刺激がきっかけとなって、集団としてある特定の周期で常に密度分布ができるよう振動しています。これを「表面プラズマ振動」と言います。ここで、なぜ「プラズマ」(=「電離気体」)という名称がでてくるかというと、電子の集団運動を扱うのに電離気体として計算してやる必要があるからです。 光と金属の相互作用は、実は、光と表面プラズマ振動との相互作用なのです。光が金属に当たると、「量子」として伝導電子にエネルギーが渡され、また伝導電子から量子としてエネルギーが放出され光となります。この量子のことを「表面プラズモン」と言います。 表面プラズマ振動は、金属の性質を説明する理論に過ぎなかったのですが、最近、イニシアムという会社が表面プラズマ振動を応用した微量の質量検出のセンサーを開発し、バイオ応用に使われ始めています。 では、光と表面プラズマ振動の相互作用、すなわち伝導電子との相互作用によって、どのような現象が起きるのかというと、 ・表面プラズマ振動の波長より、長い波長の光が入射すると、100%近く反射し金属特有の光沢が現れる ・表面プラズマ振動の波長より、短い波長の光が入射すると、透過する(X線は金属を透過します) ・表面プラズマ振動の波長より、薄い膜厚の金属膜は、一部の光を透過する(金は数原子層の厚さぐらいまで箔にすることができますが、そのような金箔は向こう側が透けて見えます) です。 つまり、光と表面プラズマ振動の相互作用で、金属のさまざまな性質が説明できるのです。 次に、金属の伝導電子が金属表面近傍の空間に与える影響についてです。 1980年代に開発された「走査型プローブ顕微鏡」(原子間力顕微鏡=AFMもその一種です)により、表面近傍の空間にどの程度影響あるかが実測できるようになりました。実測により、金属の伝導電子は金属表面から、大きくても1nmの範囲でなんらかの作用をなすことが得られました。実は、理論的には以前から分かっていたことなのですが。 1nm程度というのは、光の波長の数100分の1です。したがって、金属近傍の空間を通過する光は、金属の伝導電子の影響を受けることはないと考えていいでしょう。 昔からの回折実験は、数μm~(0.3μm)の幅のスリットに光を照射することにより行われてきました。それに対し金属の伝導電子が金属表面近傍に影響を及ぼす範囲は1nm程度です。よって、スリットを通過しようとする光が、金属の伝導電子の影響を受けて通過できないということはありえないということが分かります。 スリットの幅が0.3μmより狭くなると、光の波長より狭くなって、光は通過できなくなります。ところが、そこを光を通過させる方法があります。光は光の波長程度の広がりがあることを思い出してください。 0.1μm(=100nm)の孔を明け、その孔を光の波長よりも短い距離まで物体に近づけます。すると孔から浸み出した光が物体に届いてしまいます。浸み出した光のことを、エバネッセント波、近接場光と呼んでいます。これを応用した操作型プローブ顕微鏡が開発されており、近接場光学顕微鏡(SNOM=Scanning Near field Optical Microscope)と呼ばれています。 「電子雲」というと、金属でなく、「誘電体」(≒絶縁体)を構成する原子の中の電子をイメージしてしまいます。電子雲という言い方は、最近、あまり聞かなくなってしまいましたが。 そのような原子の中の電子とも、光は相互作用します。金属で述べたような詳しい説明は省きますが、その相互作用から出てくる現象は、光の屈折、反射、吸収です。以前は現象を解明するためだけの理論だったのですが、最近10年間の計算機科学の発展で、材料組成から例えば屈折率が精度良く計算できるようになって来ました。 電子雲の中を光が通過する代表例が、大気中や海中を通過する太陽光です。そこでは、屈折、反射、吸収に加え、前々回に回答した散乱が起きています。空や海の色が青いのは、レイリー散乱によるものです。これを解明したのがラマンという人です。 〔回折の応用例〕 仮に疑問があっても、すでに回折の理論からさまざまな機器や部品が設計され、応用・実用化されてしまっています。理論に基づいた設計が所定の機能を発揮するということは、理論の正しさの証明と見なされます。 お使いのプリンターに「エンコーダー」という部品が搭載されていますが、エンコーダーは回折を利用してヘッド位置を検出しています。ビデオカメラのうち比較的低価格のものは、回折板を使って光をRGBに分けています。キヤノンから回折を利用したレンズが売り出されています。ホログラムも回折の一種ですが、クレジットカードや紙幣に貼られています。 〔最後に〕 以上、これまでに出てきた難解な言葉を中心に、解説したつもりです。 「難解」と書きましたが、実は「難解」ではありません。なぜかと言うと、これらの言葉は、人間が自然を理解したいという欲求から生まれてきた言葉だからです。順序立てて理解していけば、納得できるものばかりです。 一方で、基礎的な知識がないと理解できにくいのも事実です。専門外の方、これから学ぼうとする方には、できるだけ分かりやすく伝えなければなりません。残念なことに、相手のことはお構い無しに、「難解」な言葉をやたら出したがる人もいますが。 kamikitaさんは、これから学ぼうとする方でしょうか? 光に興味があるようですね。 メジャーな教科書もいいのですが、「光の鉛筆」(鶴田匡夫著)という本があります。この本は、光にまつわる話を、背景やエピソードを交えながら解説している本で、光技術に関わる人は皆読んでいます。著者の鶴田さんは、ニコンの専務まで勤めた人ですが、経営者というより研究者という雰囲気の方です。もしよろしかったら、手にとって見てください。

kamikita
質問者

お礼

最新の光学についてまで紹介いただきありがとうございます。 非常に分かりやすかったです。 私は今、物理学科の四年生で、光学系について勉強しています。 しかし、就職活動で、ぜんぜん勉強しておらず、どっから勉強しようか悩んでいたところでした。 私は、望遠鏡などで光を観測したとき、理論的にどんな風に光が見えるのかを計算したいと思っています。 その上で、大変参考になる回答でした。 本当にありがとうございます。

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